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暗闇の中に#3

「ただいま」

恐る恐る声を出す。

「ご飯まだできてないよ」

帰ってきた声の抑揚に安堵する。

「あのね…今日は友達と遊んでいたんだけど、自転車のチェーンが壊れて置いて帰ってきた。」

返事はない。ドキドキしながら、答えを待つが台所の油が跳ねる音だけ響く。

「もう一度戻ってとってくるよ。」

もどっても、図書館が開いているかわからなかったが子猫のことが心配でそういった。大きな背中が振り返えらずにいう。

「また、明日学校が終わったら取りに行けばいいよ。」

みすずは心の中で今日はいい夜になるかもしれない期待と、期待していた答えではない事に戸惑った。でも、これ以上の深入りは良くないことが起きると思った。

「はい。ごめんなさい。」

怒られてもないのに謝った。

「テーブル出して、できてるご飯持っていって」

指示された内容に素直に従う。固まった思考の中で、ふと子猫の顔が浮かぶ。

ごめんね

心の中で呟く。今日のご飯は唐揚げだ。綺麗に盛り付けられた唐揚げと、味噌汁にご飯とサラダ。写真に出てきそうな盛り付けを崩さないように運ぶ。ご飯を並べながら、震える声で聞く。

「友達に頼まれたんだけどね。うちってさ、猫飼っちゃダメかな?」

顔色を伺いながら答えを待つ。

「だめに決まってるでしょ。猫ってちょっとご飯あげただけで毎日くる様になるんだから迷惑なんだよな。」

思っていた通りの答えに準備した答えを返す。

「そうだよね。」

今日は、やけに機嫌がいいなと思いながら俯き自分の仕事に戻る。

「おい!その服なんなんだよ!どうしたらそんなに汚れるんだよ!飯食う前に風呂入れ!」

怒鳴られて、扉を開けた時から小さくなっていた心はますます小さくなっていく。

「はい!ごめんなさい!」

あぁ、またこのパターンか機嫌がいいと思っていたら見てなかっただけか。

服を脱ぎお風呂場に行く。

子猫大丈夫かな…

そう思うと、アパートのチャイムが鳴る。

続きはまた次回。次回最終章のつもりです。


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