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深作ヘスス×うすき秀剛 「福島第一原発視察報告会」の報告note (後編)

本noteでは2022年9月28日19時から開催されたオンライン報告会の内容の文字起こしをまとめて記事化しています(前編はこちら)。
本記事では要点のみをまとめていますので、当日の様子は別途配信しているYouTubeも是非ご覧ください。

9月8日 福島第一原発視察

ヘスス:まずはこちらの写真をご覧ください。
実際に事故の起きた福島第一原発の敷地に入り、水素爆発した建屋から約80メートルの場所で現場を望みながら、東電の方にご説明いただきました。

奥に見える3号機建屋はドームで覆われている。
写真はセキュリティの観点から作業員等は写すことができない
右下にヘスス・うすき

うすき:2号機は水素爆発を免れているのですが、1号機と3号機は水素爆発をしているので、内部の放射性物質が飛散させないためだけではなく、雨を防ぐためにも鉄のドームで覆われているんです。
水素爆発によって建屋が損壊し、そこから雨水が入ることでその雨水が汚染水となり、自然と汚染水が増え続けてしまいます。
3号機はご覧のようにドームで覆われているので、雨水の侵入は防げていますが、1号機はまだ覆われていないので、汚染水が増え続けています。

1号機建屋はガレキ撤去などが進められているが、いまだに鉄骨が剥き出しとなっている。
(写真提供:東京電力)

うすき:廃炉作業の進捗は東京電力のHPでも、定期的に更新されてるので是非そちらもご確認いただきたいと思います。

ヘスス:私たちは80メートルほど離れたところから視察しましたが、建屋付近で作業している方は全員防護服で作業をされていて、目に見えない放射能の存在を感じました。
溶融した炉心は様々なもの(デブリ)を巻き込んで溶けているので、現状どれだけの量があってどのような形になっているのか、これを特定することにも時間がかかっています。
現状では耳かき程度の棒で炉心デブリにアプローチして実験・検証を重ねていますが、このペースで進めると廃炉に何百年もかかってしまうので、技術や人材を投入して進める必要があります。
この廃炉をどのように日本が進めるのか、世界からも注目されていると思います。

うすき:写真の私たちの格好を見ていただきたいんですが、支給された胸に線量計の入ったベストと、白い手袋をつけているだけ。マスクもコロナ対策としてつけているだけなんです。
東電の敷地の入り口からバスで近づいていくと数値がどんどんと上がっていくので、私たちもびっくりしたんですが、最終的な被曝量は歯のレントゲン2回分程度で、大したことはありませんでした。

東電の方から現状についてブリーフィングを受ける。
防護服などはなく、線量計をポケットに入れたベストと白手袋が支給された。

ヘスス: 視察者の安全対策も厳重で、支給された線量計は1日に被ばくしても大丈夫な量の5分の1に達したらアラームが鳴る仕組みになっていて、視察の最終盤になって、バスの中で全員の線量計が鳴りました。
50分程度の視察だったのですが、50分でも5分の1かと思ったことを強く覚えています。

うすき:廃炉も進められてはいますが、現在の大きな課題は汚染水(ALPS処理水)の処分をどうしていくかということです。現在は増えていく処理水をタンクに貯めているのですが、大きいタンクがどんどん増えていて、施設の中に置ききれなくなっています。今後はALPS処理水は、安全な状態で放出をしていかなきゃいけないというような局面にあるんですよね。

ヘスス:このALPS処理水に関しては科学的な見地から復興庁がYouTubeでも発信をしてますので、是非ご覧ください。(復興庁YouTube)
このALPS処理水ですが、今後政治的な課題として、今まで以上にさまざまな声が上がってくると思います。国内だけではなく国内外を含めてで様々な議論となり、特に周辺諸国からもいろいろな声が上がってくる可能性があります。

ALPS処理水を入れたボトルに線量計を当てても何も反応しないという実験の実演

うすき:安全性の確認のため、東電では希釈したALPS処理水を使ってヒラメの飼育を始めたといっていましたね。
私たち自身は、事前の勉強や今回の視察を通して、処理水の海洋放出などに一定の理解を持っていますが、みなさんに「だから大丈夫ですよ」ということを言うつもりはなくて、是非ご自身で調べ、この問題について能動的に考えるきっかけとしていただきたいと思っています。

ヘスス:ちょっと話は脱線するんですが、福島で食べたご飯めっちゃ美味しかったですよね?

うすき:刺身もしらす丼もとても美味しかったです。ヘススくん桃のジュースも飲んでいたよね。

ヘスス:実は桃については後日談があって、「道の駅なみえ」によった際、自宅宛に桃とブドウを送ったんですよ。で、完全にそれを忘れてて、妻がある日、ブドウと桃を出してくれて「これ美味いねどこのやつ?誰かからもらったの?」って聞いたら「福島から送ってくれたやつだよ」と言われて、福島の桃のおいしさを思いがけず再認識しました。

うすき:実は私も桃を買って帰ったんですけど、商品開発、品種改良もどんどん進められていて、味もいいし、鮮度もいいし、是非みなさんにも福島の桃を味わってほしいなって思いました。

質疑応答


ヘスス:それではここでご質問を受けたいと思います。

質問1: 現地の方々は原発についてどのような考えや印象を持っているのですか?

うすき:センシティブな質問でもあるので、私たちも相手を選んだうえで、国民民主党が再稼働推進という立場を示した上で何人かの方に聞きました。
そもそも現地の方からしたら、原発は産業や地域の過疎化が進む中で一つの産業として、雇用の創出という観点もあって自らが誘致したものであるという認識を持っている方もいらっしゃいました。
当然反対した人もいるけれども、一定の合意を得て誘致したものだから、絶対に駄目ということではなく、実際に原発の恩恵を受けた部分もあるし、それで生活してきた方もいるという視点で考えている方もいらっしゃいました。再稼働に関しても、原発そのものが悪いのではなく、その運営や管理をしていた人間側に問題があり、福島では難しいものの、その他の地域での再稼働は妨げられるものではないという考えの方がいたのが印象的でした。

ヘスス:私もびっくりしたのは、「日本には原発なかったらどうやって電力維持するの?」とおっしゃる方がいたことでした。当初想定していた姿からかけ離れていたので、驚きました。

うすき:現地の方は様々なご苦労がありながらも、現実をより冷静に見ている印象でしたね。
もちろん、これだけでなく様々な意見があることだとは思いますが、このような受け止め方をされている方が複数いたことは驚きでした。

質問2: 今後廃炉に向けて、ロボティクスの活用が増えることと思います。また再稼働となれば運転に携わる人材の育成も課題になると思いますが、その点について考えを聞かせてください。

ヘスス:実は視察前に原発のメーカーを直接訪問してヒアリングをしたのですが、メーカー側からも原発が稼働していないので、現場での教育の機会が減ってきているという声がありました。机上の勉強だけではなく、現場での経験を増やすには、再稼働を進めながら人材育成をしないといけないですし、そのためには政治的な決断も必要になります。

うすき:玉木代表もよく言っていますが、まさに「人づくりこそ国づくり」で、現在原子力工学を学んでいく方が少なくなってきていますし、廃炉に向けたいろんな周辺の技術も人の育成そのものにもなるんです。
北海道でも原発が9年間止まった状況ですが、9年前に入社した人たちは実際のオペレーションを経験しないまま9年が経っています。この状況が続けば、運転のオペレーションはもちろんのこと、原発に関わる新しい技術なども生まれなくなってしまいます。

ヘスス:直接的にロボティクスというわけではないのですが、破損した建屋の瓦礫撤去には3D技術が使われ、あらゆる角度から撮った写真をコンピューターで再現し、その材質から重さを計算し、どの部分を持てばバランスを保ったまま搬出できるかなど緻密に計算して、専用の治具を作り撤去されたと聞きました。残念ながらこういった事故がきっかけではありますが、様々な日本の産業力や技術力が発揮されているということも感じました。



うすき:今回に限らず今後も様々な形で情報発信や対話の場を持ちたいと思っています。
選挙中にずっと言ってきたんですけど、自分自身の経験って、いろんな経験をしてても、やっぱりただ1人の人間でしかないので、ぜひみなさんから色々な意見を聴きながら物事を考えていきたいと思ってますので、引き続きよろしくお願いします。
本当に今日は長時間ご視聴いただきありがとうございました。

ヘスス:私たちもこうやって発信をしていくことぐらいしか今はできないんですけど、できることをね続けていきたいと思っています。
今日ご参加いただいたことを、SNSだけじゃなく「昨日こんな話があってさ」と会社や学校などで話していただくことで次に繋げていただけると大変嬉しく思ってます。
本日はありがとうございました。

報告会の文字起こしは以上です。

第一原発内部の写真集

敷地内はカメラの持ち込みが禁止されているため、本文中に使われていた写真も含め、敷地内の写真は全て東電または経産省から提供いただいたものです。

1号機の爆発の衝撃で排気窓が開いたことで水素爆発を免れた2号機
建屋はそのまま残っているが、溶融した炉心とデブリの撤去が困難を極めている
すでに鉄のドームで覆われた3号機。これにより雨水の侵入量が減少
ALPS処理水が保管されているタンク群
作業員・従業員の使う大型休憩所
構内は一つの街のように多くの人々が廃炉に向けた作業にあたっていた
事故の起きなかった5号機・6号機
廃炉が決まっているが、内部は他の建屋と作りが似ているので、デブリ取り出しの実験や検証などに使われている。
協力企業のロゴが壁面に掲示されている