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マンホール イン ザ マン
これは小学3年生くらいのころ、埼玉に住んでいた時の話だ。
学校からの帰り道、珍しく僕は1人だった。
豪雨の日だった。
小学生時代のクッソ雨が降ってる日なんかには全身がびしょ濡れになりながら、遠回りに遠回りを繰り返して、身につけている服の色が全部雨に濡れて変わったら道で意図的にオシッコを漏らしたりしていた。
最高に気持ち良かった。なお理解者はいなかった。男女問わずすげー力説したが爆笑かドン引きかの2択の反応しか返ってこなかった。
なおこれから書く話はオシッコを意図的に漏らしていた時の話ではない。オシッコを意図的に漏らしていた話を期待してこのページを開いた人は申し訳ないがブラウザバックして欲しい。
………ごめん嘘だ。興味なくてもこのページをせっかく開いた縁ということで読んでくれると嬉しい。強がってしまった。申し訳ない。
気を取り直して。
傘などは特に意味がないくらい強い雨の日だった。
その日の僕はランドセルの中の国語の教科書だけは濡らしたくなくて靴や服はもうビシャビシャでどうでも良かったけど、ランドセルに傘を押しつけるようにして歩いていた。
すると自分の足元から声が聞こえる。
「ぉおぉ〜〜〜〜い………」
割とマジでホラー映画でよく聞くような、薄くかけたボイスチェンジャーのような、でも何か人間のリアルさを感じさせるような、そんな声だった。
少年時代の僕は明確にビビりにビビったのを覚えている。なんたってその声は自分の足元のマンホールから聞こえるのだから。
「ぉおぉ〜〜〜〜い………」
僕がビビりにビビっていても声は容赦なくマンホールから聞こえてくる。
こんな時に限って周りには人っ子一人見つかりやしない!そりゃそうだ!豪雨だもの!!
「ぉおぉ〜〜〜〜い………」
未だ声は止まない。焦るしビビる僕。
この時点で若干何かドッキリ企画に巻き込まれているんじゃないかと謎の心配をしだす僕。もし本当に中に人がいたらヤバすぎる!と心配しだす僕。
「ぉおぉ〜〜〜〜い………」
なんなんだよもう!考える時間をくれよ!!
怖すぎるわこんなん!!ふざけんな!!
ってかマジでなんで人が全く通らないんだよ!!いや豪雨だからだけども!!
……ってか声気持ち近くなってない!!??
なんなのマジで!!人間なの!?お化けなの!?マンホール人間なの!?(コミックス版学校の怪談で見たヤツ)(5巻完結で短編集で全部不気味で怖いからオススメ)
マンホール人間だったら完全に引きずりこまれるパターンじゃん!絶対嫌だわ!死因が溺死だけは本当に嫌だわ!とりあえずマンホールが開かないように上に乗って少しでも抵抗するわ!!ってか怖すぎるからムリ!!
それともあれか!?年老いたミュータントタートルズか!?
頼む!!そうであってくれ!!ピザ代くらいならオカンに貰ってきてやるから!!頼むからまだ話がわかるヤツであってくれ!!
ミュータントタートルズだったらまだ全然マシだわ!!ヌンチャク習いたいわ!!ヌンチャク習ってマンホール人間をオレが打ちのめしてやりたいわ!!
様々な思考が駆け巡りに巡る少年時代の僕。
そこで小学校時代の僕の脳みそに限界が訪れ、そしてそれは肉体にダイレクトに影響を及ぼした。そうして僕は
マンホールの上でジャバジャバとオシッコを漏らしたのだ。
僕はオシッコをジャバジャバと漏らしている間は完全な「無」だった。仏教的観点で言うなら完全な宇宙との同化が行われていたはずだ。それくらい「無」だった。
すると不思議なことにマンホールからほぼ絶え間無く聞こえていた「ぉおぉ〜〜〜〜い………」という不気味な声もピタリと止んだのだ。
僕は放心状態で歩きながら家に帰った。当然オカンには怒られた。しかし僕は家に着いて怒られている最中も完全にうわの空だった。
嘘をついていると思われたくなくてマンホールの声の事を言わなかった事だけはしっかりと覚えている。
これが僕のオシッコを漏らしてしまった話だ。意図的にオシッコを漏らした話ではない。ニアミスってヤツだ。
いったいあの時の声はなんだったんだろう。
ただ大人になってから聞いた話によると「怪異」なんて風に言われるものは人間の汚いものに弱いらしい。
アレは現代の怪異だったのだろうか。
もしそうだとしたら、現代の怪異を未然に封じる事ができた自分のビビりに、自分の脳みそのオーバーヒートに、そして
自分のオシッコに乾杯。
#エッセイ #コラム #思い出話 #マンホール #怖い話 #cakesコンテスト
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