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運任せの採用活動を時代遅れにしたい

はじめまして。
株式会社チームフォワードの竹田と申します。

この10月に会社を立ち上げ、
企業に対する
・中途採用支援(求人広告/ダイレクトリクルーティング/転職フェアなど)
・人材育成支援(社員研修など)
を行っています。

この1ヶ月間で34社の企業の方とお話させて頂き、
強く感じたのがこの記事のタイトル。
(中途採用に関する記事です)

ますます採用が難しくなり、手法も多様化する中で
改めて「誰に何を伝えるのか」という基本に立ち返ることが必要なんじゃないかと思っています。
この1ヵ月で感じた課題意識や私がお役に立てそうなことをまとめてみました。

採用基準がすべてのはじまり

採用ターゲット

採用すべき人材は、基本的にこの2つの円が重なるところになるはずです。
図にするとシンプルですが、実際にはそうなっていないことが多々あります。
「採用したい人」に寄り過ぎる場合は、中途採用市場に関する知識不足であるケースが多いですが、難しいのは社内で採用基準が異なるパターンです。採用担当者は普段から採用活動をしている為、自社のポジションに理解があるものの、実際に面接官となる方は直接採用活動に携わっている訳ではないので、感覚の乖離が発生します。求人広告の掲載を始めた後でこのズレが起きると、成果を出すのはなかなか難しいです。
「応募可能性がある人」に寄り過ぎる、求人広告を使用しての採用活動の場合は、こちらのケースが多いです。理由は、我々人材業界の側にもあり、
営業としては費用を掛けて頂いた手前、応募が無いのは怖いのです。だから、やみくもに未経験歓迎の募集が増え、何人か応募はあったけど、会いたい人は一人もいなかった、という事態が頻発しているのだと思います。営業としては「応募はあったんですけど惜しかったですね」という着地になりますが、会いたい人が来ていないのでは、惜しくも何ともないのです。
もう少し踏み込むと「経験者なんて採れないから未経験者を採用しましょう!」という提案もよくありますが、よく考えればこれもなかなか乱暴です。
採用活動を行うからには、採用によって解決したい課題があるはずです。未経験者でそれは解決出来るのでしょうか。出来ないなら、誰がどうやって育成するのでしょうか。
こういったことを考えていくと、採用基準の設定は採用活動の一丁目一番地であり、丁寧なすり合わせをしないとここから先の全てが運任せになってしまいます。

成功する採用は3階建て

これまで1000件以上の採用活動に携わってきた中で、
採用成功率が高い会社の条件は3階建てだと感じています。
【1階】:衛生要因(待遇・条件)
【2階】:動機づけ要因
【3階】:採用獲得力
1階、2階部分については、ハーズバーグの2要因理論そのままです。

【1階】:衛生要因(待遇・条件)

待遇といってもいろいろありますが、おおまかには休日・年収・残業時間の3つです。
個々人の転職理由にもよりますが、いずれも極端に良い必要はなく、
「悪くない」ことが大切です。衛生要因については、良くなることへのモチベーションより悪くなることへの心理的抵抗のほうが大きい。これは、転職エージェントをしていて、目の前で求人票を一緒に見ながら会話をした経験からよく分かります。転職希望者は、待遇だけで転職先を決める訳ではなく、どちらかというとスクリーニング的な要素が強いので、世の中の平均や採用競合となり得る業界・企業と比較したポジションを把握することが大切です。この結果によっては、採用基準の見直しが必要な可能性もあり、実際の打ち合わせでもここは行ったり来たりするところです。
また、待遇は制度に関わることが多く、そう簡単に変えられるものではありません。それでも、私は厳しいものは厳しいとお伝えしています。頻繁に変えられないものだからこそ、自社の採用市場におけるポジションを知らなければ、いつの間にか時代から取り残されてしまう可能性があり、まずは知って頂くことがファーストステップだと考えるからです。それに、何よりも私はお客様とは中長期でお付き合いをさせて頂きたいという前提で打合せをしているので、分かっていて伝えないのは無責任だと思っています。
毎回ドキドキしますが、今のところお叱りを受けることなく真剣に聞いて頂ける方が多いので、ホッとしています。

【2階】:動機づけ要因

転職希望者は、1階部分のスクリーニングを経て、検討の土俵に乗りそうな求人を真剣に見ていくのですが、多くの人はこの時点で数社に絞られていることが多いと思います。1階部分に加え、勤務地や転勤の有無などいろいろな要素を検討すると、個々人の希望に合致する求人はそう多くはありません。
求人広告では、当然ながら採用ターゲットに動機づけをする為の訴求をしていくのですが、
実際に世の中に出ている記事を見ると
・訴求内容が具体性に欠ける
・安心、安定の要素が強すぎる
こんな感覚を持つことが多いです。転職理由は個別具体的であるはずで、
「未経験スタートで活躍している先輩が多数!」と言われても、その会社に入ることで何が得られるのかは恐らく分かりません。採用基準が不明瞭なまま広告を作ると、万遍なく誰にでも当てはまる内容にならざるを得ないので、こういうことになりやすいです。
また、ここ数年の傾向として、”現職”と”転職”を並行して比較する人が多くなったように感じています。以前から、「良い企業があれば転職したい」という人は多かったですが、それでも心の中では転職への覚悟を決めているという前提がありました。今は、もう少しフラットに比較をしている人が多い印象です。とすると、本当に安心・安定は転職に求めていることなのでしょうか?
これも転職エージェントをしている中で感じたことですが、もはや終身雇用ではなく、自分のキャリアは自分で創っていく必要がある認識が広がる中で、優秀な人ほど「この会社に入ることで何が得られるのか」を基準にしています。分かりやすいところでは、入社時の年収が高いことより、活躍した際に年収が上がるかどうかを気にするのです。そして、そのような人達が何を得たいかは千差万別であり、具体的な情報が無ければ判断が出来ません。
転職希望者からは、その企業に興味が無いのではなく、興味を持てる企業なのか、自分を求めている企業なのか判断出来ない、という声も聞きます。この辺りにも「会いたい人と会えない」理由が潜んでいそうです。

【3階】採用獲得力

採用が強い企業は、応募から先、採りたい人を逃がさない力が強いと感じます。ここは感覚的に営業と近く、営業経験のある方が採用担当をしていると、やはり上手いなと感心することが多いです。
また、短期的なテクニックだけでなく、採用が強い企業は優秀な人を長く口説き続けています。「よくそんなスーパーマンみたいな方が入社してくれましたね!」という採用は、実は数年掛かりで口説いていたりします。
採用する側からすれば、中途採用は定期的にあることですが、転職希望者にとっては人生の一大イベント。面接に行った時のオフィスや人の印象から含めて敏感に反応します。面接での本気度は当然感じ取ります。
今時、圧迫面接のようなことはほとんどありませんが、
作業的な面接をしていたり、
採用することを前提にした面接をしていたり、
ということは応募者を不安にし、その割にフィードバックの機会が無いので、企業側はその事実に気づきにくかったりします。
応募はあくまでスタートライン。だからこそ、採用プロセスの設計や改善のお手伝いもさせて頂きます。

なぜ完全なマッチングは生まれないのか

「採用が出来なくて悩む企業」と「転職出来なくて悩む転職希望者」がなぜマッチングしないのか。私にとって、長年、分かるようで分からない問題でした。理屈だけで言えば、採用ニーズが無くなる、もしくは、転職ニーズが無くなるまでマッチングは生まれ続けるはずですが、現実はそうではありません。今なら理由が分かります。
採用するからには必ず目的があり、その目的を達成できる見込みが無い人は採用出来ません。
また、
転職することにも必ず転職理由があり、転職理由を解決できない企業に転職する必要はありません。
この間に深い溝があるのです。
求人広告は、~30代くらいまでの若手、中堅層の採用に利用されることが多く、業種・職種未経験者でも受け入れをしているケースが多いです。それでも採用が上手くいかないのはなぜなのか。私はカッツモデルに当てはめると分かりやすいと思っています。

(出展:エンカレッジ)

未経験者の受け入れをしている以上、テクニカルスキルは教える前提であり、職種にもよりますが、その年齢層であればコンセプチュアルも強くは求めないと思います。ただ、この図にもあるとおり、若手・未経験であってもヒューマンスキルが低い人はなかなか採用できません。時折、「普通の人でいいんだけどなぁ」というぼやきを聞くことがありますが、ここで言う普通の人はヒューマンスキルが一定以上の人なので、未経験者採用マーケットでは、普通の人ではなく市場価値の高い人ということになります。ヒューマンスキルを必要としない仕事がどんどん自動化・機械化されていく中では、やはりどの企業も譲れないところだと思います。
他方、転職希望者も仕事が無くて困っている訳ではありません。1階部分である待遇や条件を極端に下げてまで転職する理由は無いのです。また、待遇面が採用のネックになる場合、それがそのまま他社に流出していく理由にもなります。時間が掛かっても、制度や待遇についてお伝えしているのはこんなところにも理由があります。

ツール選択は最後

34社の企業と打ち合わせをさせて頂く中で、「人材紹介は高い割に良い人が来なかった」「求人広告は全然応募が無かった」…だからもう使わない。
こんな言葉を聞くことが何度かありました。しかし、採用手法は冒頭に書いた「誰に何を届けるか」の手段でしかないと思うのです。
これは自戒を込めてですが、提案する側にも問題があるんじゃないかと思っています。●●業界に強い、とか、会員数が多い、とか、機能を売るから、お客様は機能に期待をし、結果論で採用手法の良し悪しが判断されてしまうのではないでしょうか。採用成功についても同じで、ツールありきで考えると、たまたま上手くいったことがツールのおかげになり、いつか失敗するとツールを変える、という再現性の低い採用活動を継続することになってしまいます。
ここまでにお伝えしたことを丁寧にすり合わせし、ターゲットに伝えたい情報を伝える為にはどんな機能が必要なのか、ここで初めて手法の話が出てきます。ツール選定をする前の土台作りをしっかりする必要があり、仮説→検証を繰り返す中で採用の再現性を高めていくことが私たち提案者の仕事なんじゃないかと考えています。

長文お読み頂き、ありがとうございました。
この1ヵ月間で、まだまだ採用が運任せになっていることが多いと感じ、
採用課題の発見と成功までのプロセス設計を一緒にさせて頂くことが私のミッションであると感じています。
スタートしたばかりの小さな会社ですが、
どうぞよろしくお願い致します。