見出し画像

老舗 小田急百貨店も注目した文具女子博

・この楽しさはバレンタインデーに通じる

 そこには見ているだけで想像力をかき立てられる文具が並んでいます。そういう感性は曖昧だから「売れる」「売れない」という基準の前に見過ごされていました。でも、そこに気づかせてくれたのは『文具女子博』。遂に小田急百貨店のような大御所までが関心を示したことに僕は時代の潮流を感じました。

 この催しは『文具女子博』のスピンオフ企画として「文具女子博 #インクとデコ沼 」と銘打たれて、2021年9月23日から4日間、小田急百貨店新宿店の本館11階催物場をフルに使い切っていて、物産展並みの規模感です。

 文具は書く為のものなのだけど「こういう風にして描いたら楽しいよね」という具合に、描くことそのものを想像し、買う事を楽しめるように演出しているわけです。そこに小田急百貨店の販売促進部催事担当 マネージャー近藤温子さんがビビッときました。 

「私はチョコレートも担当しているのですけど、この楽しさはバレンタインデーの催事に通じる」と。「確かに」と直感で聞いて思いました。

 それでは中身についてみていく事にしましょう。テーマはインクです。

・紙が透ける?趣向を凝らして描きたく

 文具と言ってまず欠かせないのが紙です。何気ないノートや日記帳も言うなれば、自分の気持ちなどを反映する“キャンバス”のようなもので、紙にも趣向が凝らされています。

 「kamiterior」というブランドを展開しているペーパリーは色々な製紙会社とのネットワークを活かして、オリジナルの提案をしています。僕が惹かれたのは「SHEER stationer」というもので、絵柄が透かせるメモブロックです。写真を見ていただきましょう。

 その紙を光に向かって照らすと文房具の模様が浮かび上がっていることに気づくでしょうか。「紙を透かして楽しめるだけではなく、ちゃんとこの上にペンで描いても全く水を弾くことなく、紙としての本来の機能も果たしています」とスタッフの方。

 メーカーの人達は商品に込められたこだわりを伝えるプレゼンテーターであって、興味関心を抱く来場者との間には、そうやってコミュニケーションが生まれ、新しい魅力に気づいて購入していきます。ここが文具女子博の単なる文具売り場と違うところで、体験を重んじています。

・ガラスペンで「アレ」を再現「ラムネペン」

 道具の楽しさとして語る上ではガラスペンの存在も欠かせません。その名の通り、ガラス製のペンでペン先にインクをつけるもので、そのデザインも秀逸です。このイベントで初日、瞬く間に販売予定数を完売して話題を集めたのがparaglassの手がける「ラムネペン」(下の写真)。1万円以上する代物。でもその値段たり得る惹きつける要素があります。

 持ち手の空洞部分には、小さなガラス玉が閉じ込められていて、あの飲み物の「ラムネ」を連想させます。中身のガラス玉はコロコロと転がり涼しげな音を奏でるのです。ペン軸には炭酸をイメージした水色の泡入りガラスを使用しているこだわりようで職人技です。

・インクを硝子のすずりで作り出す?

 ペンがあればインク選びも重要。「この発想があったか」と思わせたのは、FUMISOMEというブランドが提案するガラスのすずりです。その名も「色々が映える硝子硯」。

 その「すずり」の表面がガラスゆえに明るくクリアであり、そこで「色々に染める墨」を刷るわけです。ポイントは複数の墨を刷って、色を掛け合わせる事にあります。

 すると世界で一つの色が表現され、その様子はまるで絵の具のパレットのよう。出来上がった色はますますノートなどに描きたい気持ちを触発します。こうやって描くまでの時間すら楽しめるのがこの「文具女子博」の魅力。

 冒頭、想像力をかき立てられる“魅せる”文具と説明した意味を理解していただけたでしょうか。その柔軟な発想としなやかな使い道は女性ならでは。その笑顔の裏側にメーカーの職人魂が活かされていることも喜ばしいし、それを通してメーカーとお客様とが会話を交わして、文化が出来上がっています。

 こういう感性が今のインスタグラムの浸透と呼応する形でマーケットと認知され、それをビジネスとして、また共感を生むイベントへと変えた『 文具女子博 』の手腕も見事。

 そこに気づいた小田急百貨店にも拍手ですよね。想像力の幅を広げましょう。僕らは見据えるその視点はもっと可能性があって、際限なく楽しい要素で溢れているのです。

今日はこの辺で。

出典:145MAGAZINE 2021.09.27

ペンは剣より強しと言います。だから本気でここで書く一言、一言で必ず世の中は変わると思っています。そのあたたかなサポートが僕への自信となり、それが世の中を変えていくはずです。