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4.1.2. ケーススタディ(2) 「アバンギャルド茶会」

「アバンギャルド茶会」とは,ある個別の茶会を指すものではなく,その代表者が企画・発案した茶会を行う母体を指す。
この「茶道団体」の活動は,点前そのものは大きく変化させない代わりに,茶会ごとのコンセプトが「アバンギャルド」なのである。


前項の「給湯流茶道」のように全ての茶会に「諸行無常」というコンセプトが通底する「茶道団体」もある。
しかしそれ以外の「茶道団体」では,基本的に茶会ごとに趣が異なる。

例えばこの「アバンギャルド茶会」による「宇宙茶会」の場合,各惑星をイメージした茶碗で供される,亭主が宇宙服を着ている,実際の宇宙食が茶菓子として出てくる,といった趣向になる。

コンセプト/アイデア先行の茶会

写真 公園内にキャンプ用のテントを設置し,畳を敷いての茶会。(2017年11月3日筆者撮影。初稿提出後に追加)

これは多くの「茶道団体」に共通する点であるが,こうしたコンセプトやアイデア先行の茶会は,開催場所を問わない
デパート,マンションの一室,公園の一角,自宅前の駐車場など,屋内外問わず茶会活動は見受けられる


茶室空間は移動する

駐車場(もしくは路傍)での茶会を可能にしたのは,車内に着脱可能な畳空間を挿入した,通称「移動茶室」である。
庵号(茶室の名前)として「丿庵(へちあん)」と名付けられているのは,秀吉時代の北野大茶湯でのエピソードで有名な茶人である丿貫(へちかん)に由来する。

写真 「移動茶室」の後方部。中には盆点前用の最低限の茶道具や魔法瓶が用意されている。茶室内は意外と,狭さや暗さを感じない空間になっていた。(2016年7月2日筆者撮影)

移動茶室のための茶碗

この茶室を考案した「アバンギャルド茶会」の代表者は,茶室内(車内)に差し込む光が少ないことを考慮した上で,「移動茶室」に映えるような,金色と銀色の茶碗をセットで誂えたと語る。
光量が少ないからこそ存在感があり,それぞれ主茶碗 [注20] と替茶碗として,2個で1セットである。

写真 手前の金色の茶碗と銀色の茶碗(奥)が「移動茶室」用の特注品である。(2016年7月2日筆者撮影)


(以下は2018年4月18日追記。ご本人による上記の茶碗の解説がありました)

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[注20] 「主茶碗」とは,ある茶会で使用される茶碗の中で最も高価で貴重なものであると説明できよう。「正客」と呼ばれる最も位の高い席に座る客は,茶会の参加者の中でも特別な扱いを受ける。その正客に差し出されるのが,主茶碗だ。正客の隣,つまり2番目に位の高い席に座る客は「次客」と呼ばれ,通常,次客に差し出されるのが「替茶碗」と呼ばれる茶碗である。

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