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【1話完結小説】ブルーレット奇譚

「お姉さん泥棒なの?お金ないの?…可哀想…じゃあ宝石あげるね。」
空き巣に入った私は、1人で留守番していた幼女に鉢合わせた。

幼女は私の手を引きトイレに向かう。
そこには透明でピンク色に光るブルーレットがあった。
「綺麗でしょう?」
自慢げに私を見上げる幼女の純粋な瞳。

(おめでたいオツムね)
空き巣に成り下がらざるを得なかった幼い自分を思うと、目の前ののほほんとした幼女が途端に憎らしく感じ、私は半ば衝動的にブルーレットを床に叩きつけた。

壁にぶつかり跳ねて転がるブルーレットを見つめながら、私の胸にはある違和感が広がっていた。

幼女を1人残して両親は何処へ行ったのだろう?
何故私がここに来た時、室内は既に空き巣が入ったかのように荒れていたのだろう?
そして今掴んだブルーレット、中が空っぽで怖いくらいに軽かった…。

*******

気づけば私は1人きりで空き地に佇んでいた。
足元には泥で薄汚れた空っぽのブルーレットが、夕陽を微かに透過させて転がってる。
もしかしたらあの荒れ果てた家で、ピンクのキラキラだけが幼女の心の支えだったのかもしれない。

「…詰め替え、買ってあげるね。」
私はドラッグストアに向かって歩き出した。


___以来、我が家のトイレにはキラッキラのブルーレットとニッコニコの幼女の霊がいる。


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