【1話完結小説】自慢の息子
「うっせぇクソババア!」
反抗期を迎えた息子が叫ぶ。私は一瞬固まり、そして目の前が真っ暗になった。
幼少期から性格も穏やかで優しく、自慢の息子だった。運動神経も良かった。当然頭も良かった。芸術的センスも持ち合わせ、親バカながら将来が楽しみだった。
だから彼が吐いた陳腐な言い回しに心底ガッカリしたのだ。
「もっと自分の言葉で!魂の底の底から湧き出す想いを貴方なりに掬い取るの!そのドロドロ沸るマグマの様な気持ちに貴方が名前をつけるの!そうして生まれた言葉の塊をママにぶつけなさい!今のじゃこれっぽっちも響かない!さぁ!さぁ!」
気づけば私は息子の肩を掴み、激しく揺さぶっていた。息子はただ無表情で私を、いや、私の後ろに広がる暗い空間を見つめていた。
____結局息子はこの出来事の後、言葉を発さなくなり引きこもった。私は今でも彼の魂の言葉をずっとずっと待っている。
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