見出し画像

フラッシュダンスの感想(最終回)

場面は公園。
初めてのデートの日、ニックがふざけた岩の上に座るアレックスの背中。

そこにルイーズに車いすを押されてハンナが通りかかる。
心なしか髪の乱れているように見えるハンナ。あまり容態はよくないのかもしれない。

アヒルに餌をあげるのはあたし達年寄りの仕事よ!と冗談を言う声は元気に聞こえるけれど、これから病院に行くという。

それでも、アレックスのオーディションを心配し励ます。
ハンナはひょっとしたら、自分が叶えきれなかった夢の続きをアレックスに託したかったのかな。
その本心まではわからないけれど、心からアレックスを想って、成功を願う気持ちがいつだって溢れていて、ああもう思い出しても泣いちゃう。

バイバイ、アレキサンドラ。またすぐに。
バイバイ。

これが、ハンナとの最後のバイバイだと、アレックスは知る由もない。
悲しい。さみしい。大切な人との別れなんて、実は、こんなにも呆気ないものなんだって、知ってるんだ、大人になったわたし達は。
だから、今を大切に生きなきゃいけないんだよね。明日も会えるなんて、わからないんだから。

暗転から、ハリーズへ!
今宵はサタデーナイト!

キキとキッカーズの男狩りナンバー!
(Manhunt)

ごりごりロックナンバーでダンスも激しくてかっこいい。
男に跨り踏み付けて蹴り倒すキキ様!女も惚れるキキ様!!
ラストの高音も、女豹のような視線も!ふう~~~!!大盛り上がり!!
個人的にはCCよりもキキ様にひれ伏したいです。すみません性癖ダダ漏れました。

楽屋では着ぐるみを纏ってフラストレーションを爆発させるテス姉さんと、宥め賺すハリーおじさん。
なんだかんだでお似合いのカップル。

黒人の女の子にメイド服を着せるなんて!とキキも加わって針の筵なハリー。はりだけに。たたみます。

今日がハロウィンだったなんて知らなかったわ!!と戻ってくるアレックス。

はやくステージに誰か上げないとジミーがまた何かを思いついてお客が家路についてしまう~!
からのほんの一瞬がなだぎさんのアドリブ真骨頂でしたね。毎回噴き出してしまった。さすが本物のコメディアン!

ハロウィン的なくだりは、たしか映画にもこんなシーンがありましたっけね。
リッチー(ジミーのポジション)が街に帰ってきてすぐくらいの時間軸で、変な被り物で店に来ていて、アレックスにただいまってするんだったっけな。
余談ですが、映画のアレックスとリッチーの友情がとてつもなく好きだったので、ちゃぴアレックスとジミーにも友情要素がふとした時に垣間見えると、あーーーそのエピソード(要素)残してくださってありがとうございます岸谷さーーーん!!ってなってました。

話を戻して、ハリーの干渉は、女の子達に悪い方向に行って欲しくないんだ、と、口を滑らすテス姉さん。
グロリアがカメレオンから出てきたと聞いて乗り込むと飛び出していくアレックス。キキとテス姉さんの制止を振り切って駆け出す。
それ見て、グロリアどうしたんだよ!と真ん中で大きな声を出すジミー。

お待たせしました。
一幕で「どうしてあなたは一度もあたしを助けてくれないの!?」とグロにさんざん詰られたジミー、名誉挽回のお時間です。

カメレオンの楽屋では、やはりストリップ嬢としてステージに立つことを受け入れきれずに、苛まれて泣いているグロリア。
ひらひらと蝶のように周りに漂うカメレオンガールズはもう正常な思考ではないんだろうな。この場ではグロリアだけが異質。

いつも見失う。心が迷子になる。(Gloria)
夢は夢だと気づき始めている。
だからステージに上がりたくない。脱ぎたくない。

なぜまだステージに上がっていないんだグロリア!

ドラッグを吸ってでも脱げ!ステージに上がれ!とCCに迫らるままに白い粉を吸い込む。
薬がキまった瞬間の歌い出しと、本当の言葉は忘れていない!と我に返る瞬間、ガラリと変わるのが素晴らしい。

だれか助けて!泣きながら縋りつくグロリア。
その周りで、いまさら何を言っているの?とでも言いたげに蔑む目をしたカメレオンガールズ。
彼女たちは彼女たちの理由で、そこにいることを決めたのだ。それもまたひとつの選択。

そして、駆け込んでくるアレックス。

グロ!一緒にここを出るよ!

逆上したCCはアレックスやグロリアに手をあげる。
他のガールズたちにも混乱は広がって騒然とするカメレオン店内。

そこに助けに来るジミー!!

このクソ野郎!!

とCCに高い回し蹴りを決め、グロリアとアレックスを助ける。
こんなきれいで打点の高い回し蹴りを見たのは初めてです。尊い。感嘆。

CCは好きなだけ逃げろ!いつかお前達はみんな俺に平伏すんだ!とまだまだ強気に振る舞うCC。
この後のシーンで、ニックが彼の店を取り締まるように警察に手を回したと言うのだけれど、彼はこの後どうなるんだろうか。
ただの咬ませ犬にしておくにはもったいないくらいのキャラ立ちだったから、もっと彼についても知りたかった。

逃げおおせた3人。
グロリアはジミーのジャケットを着せてもらっている。
その下にも前開きのシャツを着ているジミー、結構な確率で、カメレオンから逃げ出て行くときには一つ二つボタンを止めてたけど、ジャケットを脱ぎやすく(グロに着せやすく)するためだったのかな。
福ちゃんばっかり凝視していてすみません。

助けに来てなんて頼んでない!とグロリア。
太腿に挟まれたチップを、なんなんだよこれ!!と怒ったジミーが奪い取る。
それあたしのよ!と取っ組み合いになり、勢いで紙幣を巻き散らかしてしまう。

それを、地面にはいつくばってあたしの!あたしのよ!と拾い集める自分の惨めさに泣き崩れるグロリア。
そんな彼女にアレックスとジミーが近づく。

そこにあるのは、友情と愛情。
アレックスのグロリアへの友情。
ジミーのグロリアへの愛情。
そして、アレックスのジミーへの友情。

グロリアを抱きしめる役をジミーに譲るアレックス。

大丈夫だよ、ハニー。

怒りややるせなさや、自分の不甲斐なさを悔やむ気持ちなんかもすべて押し殺した、やさしいやさしい声。
本当に大好きなんだね、グロのことが。大切なんだね。もう手放しちゃだめだよジミー。

どうしてあんなクソ店に!?そう問われ、素敵な夢だったのよ!わかるでしょ!とグロリア。
ああ、わかるよ、僕にも素敵な夢があったから…と、優しく受け入れるジミー。
一緒に帰ろう?その一言も、とてもとても、優しい。

友情は永遠!リフレイン。アレックスは去る。

うまくいかない、と吐き捨てるグロに、焦るなよ!と微笑みかけるジミー。
まだ、これからだよ、と。
このとき、しっかりちゃっかりハットにお金を拾い詰め込んで被り直すジミーがリアルだよね。お金は大事だよー。

君といると、自分を止められないんだ、と、下手19番の目の前で喉を詰まらせながら言われた日にはもう何も考えられなくなりました。(グロに言ってんのよ)

遠回りしてやっと気づいた、もう離れない、君を笑顔にしたいと愛を歌うジミー。
それに対して、夢は遠くてもあたしはあなたのマドンナだから、と応えるグロリア。
(本当の居場所・再)

2人でこの街で生きて行こう、と歌い、キスをする。
その横顔もまたほんとうにかっこいいんだよ~泣けるよ~。
そのあと、顔を寄せたままの「帰ろう」が、とんでもなく、りあこ。

ねえ!どうしてあたしが最高の恋人か訊いて!
どうして?
ん~!重い槍だなぁ~!はい!
えい!

ようやく、思いやりがハートにしっかりと刺さる2人。やったー!!
よかった、ほんと、幸せになってくれグロジミ。世界一尊いよグロジミ。尊くて泣けるってなかなかないよ。
幸せにはなってほしいけど、でも、グロリアはジミーと結婚しないんだろうなと思っていたりもする。しれっと捨てられてしばらく引きずって飲んだくれるジミーが想像できてしまう。でも、それはしばらく後のことでいい。今、は、考えなくていい。

ハリーズの楽屋では荷造りをするアレックス。

今日はグロリアのために良いことをしたんだってな?

ハリーおじさんは続けて嘆く。
どうしてみんな簡単に道を踏み外してしまうんだろうな?と。

それならあなたはどうやって前に進むの?いつになく真剣に問うアレックスに、ハリーは微笑む。
物事が悪くなればなるほど、失うものは少なくなるんだよ。おやすみ、おちびさん、と。

ニックがCCの店を警察に取り締まらせたと言いながら楽屋に入ってくる。
アレックスはまだ怒っている。
ニックが名前を捨てて戦うと決めた、と聞いても、それを受け止めて許す事はできない。
まだ違う世界のひとなんだ、と訴える…。

あなたは幸せをお金で買えるのね、もう戻れない、とアレックス。
それに対して、2人ならもう争わない、これ以上逃げないで、やり直そう、この手を離さないでとニック。
(Hang On)

愛を訴えるニック、それでもアレックスは頑なに終わりにしよう、さよなら、と去ってしまう。

そして、オーディションを受けずに故郷に帰る決意で、最後にハンナに挨拶をしに家を訪れる。

片付けをしているルイーズ。
ハンナは、昨夜遅くに亡くなったという。

事実を受け入れられないアレックスは呆然と立ち尽くす。
今まで渡していたお金はシップレイの学費にするように言っていたという。
そして、あのバレエシューズもアレックスに渡してほしいと言っていた、とも。

それを受け取り、握りしめ、座り込むアレックス。
ハンナがどれだけ自分を想ってくれていたか、痛いほどに感じる。

いかないで、信じない、と。
絞り出すように歌い出す。涙の跡が残るちゃぴちゃんのお顔が忘れられません。(Try)

あなたがいてくれたから、ここまでこれたのだと。希望をくれたのだと。
ハンナを思いながら歌い、その想いは、ニックへの想いとも重なる。

傷つき落ちていく、恐れて失い、このまま逃げたら?死にかけている夢は?
夢を音楽で消すの!自分の居場所に帰る!自由になる!
ハンナの虚像が現れ、バレエシューズでそっとアレックスを導き、背中を押す。
アレックスは再び前を向く。今度こそ、逃げないと心に決めて。

挑戦するのよ、彼女の言葉を胸に抱く!
羽ばたき飛ぶのよ!私ならできる!飛ぶわ!

場面はシップレイのオーディション会場へ移る。
5人の審査員。中心のミスワイルドが「お疲れ様でした」という中、遅れてオーディション会場に現れるアレックス。
映画と同じ、黒のレオタード。

もうオーディションは終わったと言うミスワイルドに、真っすぐ、アレックスは告げる。

あなたは私を見なくてはいけない。
私の中の情熱を見つけなくてはいけない。
今、この瞬間が、私の運命を変える時だから、と。

その気迫に根負けして審査を認める審査員。

レコードに針を落とし、中央に伏せた姿勢から踊り出すアレックス。
でも、冒頭で転んでしまう。

立ち上がりなさい、と、でも言うように、ハンナの虚像が横切り、導かれるようにアレックスは立ち上がる。

レコードをかけ直す時、キキ、テス、グロも、そこにいる。
ひとりひとりと頷き合って、再び針を落とし、今度こそ、なめらかに踊りだすアレックス。(What A Feeling)

キキのボーカルから始まり、テス、グロリアと歌い継がれるガールズの歌に励まされるように、自由に音楽に溶け込み情熱のままにアレックスは踊る。
伸びやかに、はつらつと、とにかく美しい筋肉をこれでもかと駆使して踊る。

ひとりじゃない。
ひとは、いつでも、どこかで少しだけ、誰かに助けられて生きている。
それは友情や愛情や慈しみ。
そしてその助けを、情を受けることは、決して甘えではない。
支え合うということは、愛おしいこと。

いつしか審査員もそのダンスに引き込まれて、楽しそうにしている。
審査員ひとりひとりを指さして引き込んでいくシーンも完全に再現されていて、ぎゅうぎゅうに胸が締め付けられる。
これこれ!これが見たかった!これが聞きたかった!

全て出し切って座り込むアレックスは、秋のレッスン開始日を告げられ、自分が合格したことを知る。
間違いなく、自分の実力で、勝ち取った未来。
ミスワイルドを抱き上げて喜ぶ!

その勢いのまま飛び出すと、そこには薔薇の花束を抱えたニックがいた。
やった!合格したわ!と飛びつく。
アレックスを抱き上げたままくるくると回るニック。

共に合格を喜ぶ。君と共に生きたい、と。
再び結ばれる二人の心。
その印に、渡された花束から一輪のバラをニックに渡すアレックス。
感動のラストシーン。おめかししたわんこはいないけどね。

キキ、テス、グロジミも集まってきて、それぞれに喜びを分かち合う。
ニックとジミーの仲良し感もいい!
ジミーがアレックスにやったな!って小突く感じも最高!
ハリーおじさんはテス姉さんとお幸せに!

キャスト全員が集まり、クラップしながらWhat A Feelingを歌い上げ、会場にも手拍子が移り、そのままクライマックスへ。

みんな楽しそう。幸せそう。
悲しみや挫折、不安があるからこそ、ひとは笑い、幸せを求める。
未来に向かって情熱を燃やすことができる。
失敗することも、迷うことも、悪いことなんかじゃない。
たくさんの想いを抱きしめて、今を生きる。

その大切さを、尊さを、改めて気付かせてくれる作品でした。

いま、こんな時代に、こんな大変なご時世に、出逢えてよかった。
生で観られて本当に良かった。肌で感じられて本当に本当によかった。
観れば観るほど好きになっていく舞台でした。

それから、最後にもう一度書いておきますが、お世辞なんかじゃなくて、
福ちゃん!あなたの歌はとても上手で、心の奥底にぐいぐい届いて熱くさせられて、とても感動するものです。
どうか謙遜しないで。もっと自信を持って。もっとたくさんの歌声を聴かせてください。

福ちゃん目的で観劇を決めたのに、いまではもう、この「ミュージカル・フラッシュダンス」というひとつの作品の大ファンです。ずっと観ていたい。一年通しで公演していてほしいくらいです。
出逢わせてくれて、ありがとうね、福ちゃん。

思い出しながらでもこんなに泣けるなんて思わなかったなぁ。とんでもない。
ミュージカル・フラッシュダンス!最高でした!だいすきです!

どうか地方公演も、大千穐楽まで、関わる全ての皆様がご無事に駆け抜けられますように!

#イベントレポ
#演劇
#感想文
#フラッシュダンス
#ミュージカル

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?