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はじめに。幻想と現実、情景と境界-K.RYUITI-黒いモノ

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自己紹介的作品。 ぼやけた状態の中で、 大体どんな雰囲気やテーマの作品を書くかを簡単に、 作品の中で表してみました。
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2017年11月の記事一覧

K-

悲しくて、悲しくて。

どうしようもなく悲しくて、わたしはその悲しさを抱いたまま、

白く冷たいモノが辺りを覆いつくす中、ゆっくりと歩を進めて、

ひとつの場所を目指している。

【ザクザク】【ザクザク】ひとつ、また一つと。

歩を進める度にそんな音が身体に響いてくる。

ああ、悲しい。

ああ、悲しい。

眼の前が何故だか歪んで、

辺りの白さと同じように白くなっていく気がした。

悲しい――。

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R

らしくないと思いながら。

寒空の下、僕は黙々と歩き続けている。

張り詰めていた気持ちを、何気ないように呟いて、吐き出して。

その後、結局――彼女の表情をみることをしないまま、

家に帰ることも無く適当な電車を適当に乗り継いで。

当てもなく進んでいたはずの僕は。

気が付いた。

眼の前に広がる森林と積もり始めた雪を見て、

その先からゆっくりと水の音が聴こえて。

僕はただ、しずみたくなっ

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Y

やりきれない苦悩を観た。

現実的ではない病。

幻想的というにはとても残酷なその病。

愛するモノ達の気持ちが深くなるほどに、

互いの、もしくは片方の命を蝕んでいく病。

その病がどのようにして発現するのか、

血液を調べたところで、

身体を観たところで、

なんの成果も得られなかった。

ある時、少し前からの記憶が曖昧だという女性が来た。

その女性は二十代半ばで身体的にもなんら異常はなく

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U

俯いていた顔をあげて。

うっとおしいくらい紅葉の雨を、

腕で振り払い続けてため息を吐いた。

暖かくもないしむしろ寒さが増してくる夕暮れ。

紅葉が揺れ流れる、本当なら綺麗だと感じられるだろうこの路を、

独りで歩いている事にまた、ため息が出て。

待ち合わせからもう四時間も過ぎているという事を理解しながら、

黒の腕時計を重い気持ちでチラリと見返す。

「はあ」

ため息が出た。

結局、来

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