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英文法解説 テーマ3「受動態」 第3回 日本語では「する」「している」なのに英語では受動態!?

 こんにちは。受動態を解説するのも今回で3回目です。前回は、時制の形式「○○形」と受動態が組み合わさったパターンについて確認していきました。今回は、語形というよりもむしろ「訳し方」について解説したいと思います。「え?受動態の訳し方って「される」でOKでしょ?」とほとんどの人が思いがちなテーマなのですが、実はそうとも限らないので、しっかり基本から解説していきたいと思います。

 まずは、次の例文から考えていきましょう。

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 (1)のbe marriedはここでは現在完了形で用いられ、for ten yearsという語句もあるので「結婚して10年だ」と訳していますが、be marriedそのもの自体では「結婚している」という意味です。(2)のbe excitedは、受動態にもかかわらず「興奮している」と訳します。なぜ、受動態なのにどちらも「する」「している」と訳すのでしょうか?

受動態なのに「される」と訳さない理由①

 理由は二つあります。一つ目は、married やexcitedは、たとえ「-ed」という語形をしていても実は形容詞としてはたらいている、ということです。例えば、(1)では、marriedという語が用いられているのですが、これは「他動詞marryの過去分詞形」というより、「形容詞married(結婚している)」なのです。形容詞だから、be動詞の後ろに置かれることで、第2文型(V(述語)+C(補語))となり、受動態ではないのです。また、marriedは形容詞だからこそ、例えば、a married couple「夫婦」だとか、married life「結婚生活」のように、名詞を修飾することもできます。このように、一見、過去分詞形に見えるけど、実は形容詞という語としては、次のようなものが有名です。

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 このリストの形容詞、けっこう過去分詞形だと勘違いしている人多いんです。例えば、determinedは、「他動詞determine:決意する」と「be動詞+形容詞determined:決意している」を「能動」「受動」の関係だと勘違いしてしまい混同してしまいがちですが、後者は受動態ではありません。また、be supposed to V「~だと考えられている」という表現も、そもそも「suppose O to V」という語法自体が存在しないので、受動態ではありません。

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受動態なのに「される」と訳さない理由②

 さて、もう一つの理由は、もともと「する」ではなく「させる」という意味を持つ動詞が、受動態になることで「させられる」→「する・している」と訳せる、ということです。例えば、(2)で用いられている、exciteですが、これは「興奮する」ではなく「興奮させる」なのです。これは、カタカナ英語として中途半端に日常化しているのが悪いですよね。スポーツ中継でも「観客がみなエキサイトしています!」と言ってますし。

 本当は、exciteは「興奮させる」です。だから、受動態になってbe excitedだと「興奮させられる」。でも、それだと分かりにくいので、「興奮」という作用の方向が主語の方に向かっていると考えて、「興奮している」と訳しているのです。

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 このように、本来「させる」という意味を持つ動詞には次のようなものがあります。この動詞のリストはかなり重要なのでしっかり覚えておく必要があります。

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 全体的には、「心的作用」系の動詞が多いようです。例えば、「驚き」「満足」「脅威」「失望」「退屈」という気持ちが主語側に投げかけられているので、主語の立場からすると、どれも「する・している」という意味になります

これ以外で面白いものだと、「injure:傷つける」→「injured:傷ついた・ケガをした」というパターンもあります。これは、気持ちの上で「傷つけられた=傷ついた」ということから、さらに派生して「(実際に)ケガをした」という意味にもなります。まあ、これも「傷・ケガ」の方向が主語側に向いている、と考えれば納得できると思います。
 
 また、この話は、「分詞」の使い分けの回でもまた説明したいと思いますので、覚えておいてください。

 最後になりますが、ここまでの話とは反対に、日本語では「される」なのに、英語では能動態で表す例を紹介したいと思います。まずは、次の例文を見ていきましょう。

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 (1)は、普通なら、this book「この本」は「売られる」側なので、sellは受動態にしてbe soldとしたいところですが、能動態sellになっています。(2)も、the translation「その翻訳」は「読まれる」側なので、readは受動態にしてis readにしたいのですが、能動態readsになっています。

 このように、英語では「能動態」だけど、日本語では「受動態」として解釈するものを「中間構文」と言います。そのままのネーミングですね。「能動」と「受動」の「中間」だから「中間構文」です。英文だけ見れば、特に意識しなくてもなんとなく読めてしまいそうな構文ですが、「態」という意識があれば、なにか変だな?と思うかもしれません。しかし、この「違和感のようなもの」をクリアにしていくことこそ英文法を学ぶメリットなのです。

 英文法を学ぶ意義というのは、このように「なんとなく」読めていたものに「理屈」を与えることで、たとえ英文のレベルが上がったとしても、その「理屈」を通じて対処できるようになることだと思います。英文法を学ぶことは決して無駄な努力ではなく、どんな英文でも解釈できるようになる「道具」を手に入れることなので、英文法を学べば学ぶほど英文構造を透視できるようになると信じていってほしいと思っています。

 というわけで、今回は「能動・受動」と「する・される」の深い関係について解説をしてきましたが、英文法上の理屈を通じて理解していただけたでしょうか?次回、疑問文が絡む受動態について解説します。ご期待ください!


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