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英文法解説 テーマ9 関係詞 第6回 “which”と“,which”って何が違うの?

 こんにちは。関係詞の解説シリーズも今回で最終回になりました。ラストは、いわゆる「非制限用法」と言われる、“, which”という関係詞節のはたらきや訳し方について解説していきたいと思います。よく「コンマありの関係詞節は訳し下げればよい」という誤解をしている人がいますが、そういった訳し方の順番だけではない点に注目していけるとかなり勉強になるかなと思います。では、早速、解説に入りましょう。

制限用法のはたらき

 まず、ここまで扱ってきた「コンマなしの関係詞節」が、そもそもどんなはたらきをしているのかを確認していきましょう。例えば、何か欲しい参考書がある時にgoogleなどの検索エンジンで「参考書」という語を検索してしまう状況を想像してください。当然、何千万件もヒットしてしまい、目当ての本は見つからないでしょう。そこで、「英語」「わかりやすい」「大学受験」と言った検索ワードも一緒に検索すると、「わかりやすい大学受験用の英語の参考書」がヒットすると思います。

 実は、このように不特定多数の「参考書」の中から「わかりやすい大学受験用の英語の」という条件をかけて範囲を絞り込むような修飾の仕方が、「コンマなしの関係詞節」のはたらきなのです。条件で絞り込むということは、不特定多数から範囲を制限しているので、「制限用法」または「限定用法」と呼ばれています

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 世の中には数多くの「本」が存在します。そういった不特定多数の「本」を英語で表す場合は、冠詞なしの複数形で“books”と表すのが一般的です。しかし、「君にとって面白い」という条件に合う「本」であれば絞られます(=制限されます)。これが、制限用法の関係節で、コンマなしで先行詞を修飾します。この場合であれば、限定されるので“the books which are ~”となっています。

非制限用法のはたらき

 一方で、非制限用法の関係詞節というは「制限をしていない」という意味なので、前提としての「不特定多数の集合」もなにもありません。すでに特定された名詞に対して付加説明をしているだけなのです。この「特定された名詞」というのは、単数でも複数でも構いません。また、固有名詞である場合も多いです。

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 「ロンドン」という都市は一つしかありません。つまり、いくら「~なロンドン」と言っても、たくさんあるロンドンから一つを制限して抜き出しているわけではありません。このような場合は、非制限用法の関係詞を使って付加説明をします。

 このように固有名詞に関係詞節をかけたい場合は、原則的に非制限用法にします。もし、London which I want to visit somedayとしてしまうと、他にも「私が行きたくないロンドン」や「彼女の生きたいロンドン」のような様々なロンドンがあるような感じになってしまいます。

 よく、非制限用法の関係詞節は「先行詞、そしてそれは~だ」などと訳し下げるように指導されることがありますが、必ずしも訳し下げる必要はありません。「いつか私が訪れたいロンドン」のように、「関係詞節+先行詞」の順番で訳しても支障はありません

 制限用法と非制限用法の関係詞節の違いを確認できたら、よく教科書に載っている有名な2つの例文を見比べて見てください。

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 例文1は制限用法なので、不特定多数の集合(この場合「息子」)から「医者の」という条件で絞ると「医者の息子が2人」ということです。つまり、他にも息子がいる可能性があるということです。一方で、例文2は非制限用法なので、「2人の息子」と特定したうえで、彼らの情報(「医者である」という情報)を追加したのです。つまり、彼には他に息子はいません。訳し方の違いではなく修飾の仕方がそもそも違うという点に注目してください。

前文内容に対する非制限用法の関係詞節

 上記の例にもあるように、非制限用法の関係詞節がかかる先行詞というのは、「特定される」必要があります。ということは、「ロンドン」のような固有名詞や「私の実母」のように、1つ・1人に特定される名詞の場合が多いのですが、前文内容が先行詞になるという非制限用法特有のケースもあります。そのような場合、訳す際には「そして・しかし・なぜならば~だ」というように接続表現を入れるとスムーズにつながります

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 SV~によって表される内容というのは、不特定多数になることはありません。例えば、「彼女は英語を流暢に話せる」といった状況が不特定多数の集合というケースは考えられません(パラレルワールドなど多次元世界を想定するしかないでしょう)。なので、このような文内容が先行詞の場合は、非制限用法の関係詞節が用いられるのです。例文で確認しましょう。

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 例文3の先行詞は、She can speak English fluentlyです。例文4の先行詞は、he had studied abroadです。He saidの部分は先行詞の範囲ではありません。いずれも、whichをand this[that]と置き換えて、this[that]の指示対象を先行詞と考えると良いでしょう。

 ちなみに、非制限用法で関係代名詞thatを用いることはないので、“, that”にはしません。thatはそもそも限定性の強い関係代名詞なので、非制限用法とは相性が悪いということでしょう。

 というわけで、非制限用法の関係詞節の解説はここまでになります。

 ここまで、6回に渡って関係詞について解説してきましたがいかがだったでしょうか?他にも解説したい内容はいくつかあります(連鎖関係詞、擬似関係詞、二重限定など)が、また別の機会で説明したいと思います。かなり長いシリーズになっていますが、次回のテーマもよろしくお願いします。テーマ10は「比較」です。ご期待ください。

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