見出し画像

英文法解説 テーマ3「受動態」 第1回 そもそも「態」って何?

 こんにちは。英文法解説シリーズは今回から新たなテーマ「受動態」に入ります。第1回目は「態」とは何かについて解説していきたいと思います。

態とは?その1

 「能動態」「受動態」という用語はよく耳にすると思いますが、そもそも「態」とは何でしょうか?日本語だと「態度」の「態」なので、多くの人はattitude「態度」というイメージを持ちやすいでしょう。でも実は、文法用語としての「態」というのは、英語ではVoiceなんです。「Voice、え、『声』?」と思われそうですが、とりあえず次の関係図を見てみてください。

画像1

 動作を行う側のことを「主体」と言い、その「主体」によって行為を受ける側を「客体」と言います。簡単に言うと「誰が」が主体、「誰を」「誰に」が客体です。そして、それぞれの立場でその行為について発言すると「(主体は)する」「(客体は)される」となりますよね。その際、「する」側の行為を表す方法のことを「Active Voice(能動態)」と言い、「される」側の行為を表す方法のことを「Passive Voice(受動態)」と言うのです。

 英文法の解説をする際、個人的にはあまり専門用語を振りかざすのは好きではないのですが、「態」という用語の理解がないと、能動態と受動態を書き換えるという作業中心の文法項目だと勘違いする人が続出するので、私は、受動態の話をするときは「態」という用語から説明するようにしています。

態とは?その2

  ただ、もう少し分かりやすいように、「態」という用語を別の表現で言い換えて説明すると、「動作の方向性」と考えてもいいと思います。例えば、能動態John likes Mary.と受動態Mary is liked by John.について次のように考えてみましょう。

画像2

 日本語では動詞の活用形で「する」「される」というように「能動」「受動」を表しますが、英語では動詞の語形を変えるだけでなく、be動詞も利用する(つまりbe動詞+過去分詞形(Vp.p.)にする)ことで、「受動態」を作ります。なので、V(述語)の動詞の形を見れば、「能動」と「受動」が一目瞭然です。頭の中では、V(述語)の動詞の形を見て、能動なら「→」というイメージを、受動なら「←」というイメージを持てると良いと思います。

能動態⇔受動態の利用法

 さて、「受動態」というと、「能動態」の文から「受動態」の文への書き換え練習をしたことがある人も多いと思います。しかし、当然のことかもしれませんが、「能動態」の文ありきで、「受動態」の文が出来上がっているわけではありません。このことは、日本語でも同じですよね。例えば、「私は彼に呼ばれた」という文をアウトプットするときにわざわざ、「え~と、まず能動態だと『彼は私を呼んだ』だから、それを受動態に変えて『私は彼に呼ばれた』だ!」と頭の中で考えてから離したり書いたりはしませんよね。

 主語である「私は」を決めたうえで、自分の方向に「呼ぶ」という動作が向くように「呼ばれる」と無意識に変換していると思います。

 もちろん英語でもそうです。英文を書くときや話すときに、わざわざ能動態を想定してから受動態の英文を作ることはありません。しかし、実は、英語で書かれた受動態の文が文法的に正しいかどうかを確認したいときには、その文を能動態にしたときに成立しているかどうかをチェックすることが有効なのです。自分で英文を書いた後に正しいかどうかを判断するには非常に効果的ですよ。というわけで、「能動態」を「受動態」に書き換える練習よりも、本当は「受動態」を「能動態」に書き換える練習の方がずっと有意義なのです!

画像3

 具体的に、次の例で確認してみましょう。

画像4

 (1)は、生徒に英作文を書かせるとよく見かける誤答例ですね。say thatはOKでも、say+人+thatはNGなんです。だから、人+be said that SVは間違いです。形式主語構文にしてIt is said that SVだったら正しいです。tellであれば「人+that節」を取ることができるので、それを受動態にして人+be told that SVとすると良いでしょう。

 (2)は、定番の話なのですが、能動態で書くときにはlaugh at+人と書けるのに、受動態になると途端にatが抜け落ちる誤文例です。おそらく、be laughed at by ~と書いてあると、前置詞atと前置詞byが連続するので不自然に思えてしまいがちなのでしょう。繰り返しますが、laugh atの受動態は、be laughed atです。

 (3)は、(2)と同様のパターンなのですが、referは、refer to A as Bで「AをBだと言う」という意味になります。この語法において、Aを受動態の主語にしたのが、A is referred to as B「AはBだと言われる」です。ここでも、前置詞toと前置詞asが連続するので注意が必要です。

 いかがでしょうか。「態」とは何か、そして「能動態」と「受動態」の関係について解説していきました。「能動態⇔受動態」の書き換え練習は無駄ではないのですが、それだけでは実際の英文を読んだり書いたりするのには物足りません。「態(≒動作の方向性)」という考えをベースに「能動態・受動態」に取り組んでいくと良いでしょう。次回は、様々な語形に潜んでいる「受動態」にどうやって気づくか、という解説をしていきたいと思います。ご期待ください!


よろしければサポートして頂けるとありがたいです!これからの励みにもなります!