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学校の魅力は地域をはじめとする社会との関係性の中からしか生まれない

昨年の10月に、岩手県教育委員会から「いわて高校魅力化グランドデザイン」が公表されました。文部科学省の高校改革の流れを受けて、高校の設置者である都道府県が高校の役割を再定義するもので、スクール・ミッションとも呼ばれています。

このスクールミッションを見てみると、各都道府県の特色が出ています。高校全体の大きな方向性を示しているところもあれば、一つ一つの高校の役割を明示しているところもあります。

岩手県の場合、前者のパターンで、高校の役割として大きな方向性を示しています。ただ、他と違うのは一つルールを決めていることです。
そのルールとは「高校がそれぞれの特色・魅力を考えて実現していくために、地域や企業、大学等の関係機関と連携・協働すること」です。

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なぜ、高校の特色化・魅力化を進めていく上で、関係機関との連携・協働を必須としたのか。その根底には「学校の魅力は地域をはじめとする社会との関係性の中からしか生まれない」との考え方があります。

人事異動で6年〜9年をサイクルに教職員はその学校から去ります。教職員だけで学校の特色や魅力を考えて取り組んだとしても、持続可能ではありません
そもそも、県全体で採用されて全県で人事異動のある教職員と、全国一律の学習指導要領に基づく授業だけで、その高校にしかない魅力を探して磨いていくことに限界があります。

だからこそ、高校の魅力化には、10年・20年経っても変わらずその高校に関わり続ける人の存在が不可欠です。また、この高校にしかない、教科書以外の教材は何なのかを考えていくことが必要になります。
高校の魅力化に取り組む全国の先進地域で、地域や地元企業との連携・協働が前提となっているのも、偶然ではなく必然と言えます。

話は少し変わりますが、哲学者・倫理学者である和辻哲郎氏の著書に『人間とは「世の中」であるとともに、その世の中における「人」である』との一節があります。
和辻氏は「孤立的な人でないからこそ人間なのである」と論ずる一方で「人間が人である限りそれは個別人としてあくまでも社会と異なる」と指摘しています。

私は、この言葉に触れたとき「人間」だけでなく「学校」にも当てはまると感じました。「人間」を「学校」に、「世の中」を「地域」に置き換えて『学校とは「地域」であるとともに、その地域における「学校」である』としても違和感がありません。
学校は、地域社会の中で孤立的でないからこその学校であると同時に、学校は地域社会とは異なる存在でもあります。

そう考えると、高校の魅力化は自分探しと少し似ているのかもしれません。
地域で孤立するのではなく、地域の中で埋没するのでもなく、他者(地域や企業、大学等)との関わりの中で自分の個性(特色や魅力)に気づき、他者との関わりの中で切磋琢磨しながら個性を磨いていくことが、高校の魅力化なのだと思います。


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