カクテル作成技法から見る、日本茶の特徴

カクテルに日本茶を用いるシーンが、俄かに脚光を浴びつつあります。
ただ、現状に限って言えば、カクテルに使用される日本茶は抹茶がほとんどです。
少し玄人な領域になりますと煎茶や玉露なども用いられますが、一つの店舗に1~2メニューという程度で、それ以上の広がりはまだあまりありません。

ここからはカクテルへの利用という視点から、日本茶を包括的に見ていきたいと思います。
カクテルのベースは多種多様です。であれば、日本茶の多種多様さがそこに活かされれば、お互いの世界はより広がりを見せるはずです。


1.“シェーク”に特に合う日本茶
まずはカクテルの作成技法別に、特に合うであろう日本茶を提案してみたいと思います。

“シェーク”は“ショート”カクテル、つまり氷が入っておらず短時間で飲み切れる、一杯の量が少ないカクテルを作る際の技法です。

混ぜにくい材料でもしっかりと混ぜられ、かつ気泡も混ぜ合わせることができる技法です。
気泡が混ざったカクテルは、まろやかな味わいと、淡い色合いが特徴とされています。

この“シェーク”に特に合う日本茶は『抹茶』、『粉茶』でしょう。

まず『抹茶』は、何よりも元々、カクテルに非ずとも茶筌を用い“シェーク”して飲むお茶です。
濃厚な旨味の少量を気泡と混ぜることで飲む『抹茶』は、カクテルにした際も、その「らしさ」を損なうことなく飲み手を楽しませてくれることでしょう。

『粉茶』は、細かい茶葉を集めたものです。ですので、煎茶の粉茶や玉露の粉茶が存在します。
『粉茶』の場合、元が煎茶であればより苦味が、玉露であればより旨味が強調されます。
しかしながら浸出した際に、一般的な茶漉しであればすり抜ける程度の、細かな茶葉の微粒子も懸濁します。それと合わさると、元の茶葉の特徴が強調された濃厚な味わいながら、微粒子によってまろやかでもある、という浸出液が作成できます。
『抹茶』と『玉露』、あるいは『煎茶』などとの中間のような味わいを引き出せるでしょう。


2.“ビルド”に特に合う日本茶
“ビルド”は“ロング”カクテル、氷が入っており、時間をかけて量を楽しめるカクテルの作成技法です。
ホットカクテルも、このロングカクテルに含まれます。
タンブラーグラス内で材料をかき混ぜるのですが、中には材料を入れるだけでかき混ぜないカクテルも、“ビルド”には含まれます。

この“ビルド”に特に合う日本茶は『煎茶』、『かぶせ茶』、『玉緑茶』、『ほうじ茶』、『玄米茶』、『茎茶』でしょう。

『煎茶』であればキレの良い苦味を、『かぶせ茶』や玉緑茶の中でも『蒸し製玉緑茶』であれば苦味にプラス旨味も伴った味わいを、カクテルに付与してくれます。
玉緑茶のもう一つの種類『釜炒り製玉緑茶』であれば、苦味と共にきな粉のような“釜香”をカクテルに加えることができます。

また『ほうじ茶』、『玄米茶』、『茎茶』であれば、この三種は香りに特徴がありますので、それぞれ暖かみのある心落ち着く香りであったり、炒った玄米の香ばしい香り、茎の持つ青く爽快な香りを、カクテルに与えてくれます。


3.“ステア”に特に合う日本茶
“ステア”はショートカクテルの作成技法ですが、“シェーク”と違いミキシンググラスの中で軽くかき混ぜることによって行われます。
“シェーク”ほど混ぜないので気泡が含まれず、味わいはドライかつシャープ、色合いもクリアになると言われます。

“ステア”に特に合う日本茶は『玉露』、『ほうじ茶』、『玄米茶』であると思われます。

『玉露』は濃厚な味わいを少量、楽しむためのお茶です。
『抹茶』と違い浸出液ですので、浸出したい味のみを選んで引き出すことができます。
シャープな旨味のみを楽しませたい場合は、『玉露』がオススメです。
色合いも海を思わせる、青みのあるグリーンが引き出せます。

また『ほうじ茶』、『玄米茶』も面白いはずです。
この二つは味よりも香りによって、カクテルに寄与します。少量でかつ冷えていても、『ほうじ茶』の特徴的な暖かみのある香り、または『玄米茶』の玄米の香ばしい香りは、カクテルの中で強い主張を行ってくれるでしょう。
『ほうじ茶』の場合、上質なものほど、ほんの少しルビー色を含んだブラウンを呈します。その色味も、カクテルの美しさへと寄与してくれます。

先に“ビルド”の項で挙げた『釜炒り製玉緑茶』、『茎茶』も香りに特徴がありますが、“ステア”のショートカクテルの場合は、その香りの主張は『ほうじ茶』、『玄米茶』と比べると強くないかもしれません。
しかしながら抽出方法や材料次第では、これらも活かせることと思われます。


4.“ブレンド”に特に合う日本茶
“ブレンド”はフローズンカクテルを作る時に行われます。
ブレンダー(ミキサー)の中に、氷と材料を入れかき混ぜることで、シャーベットのようなカクテルを作成します。

“ブレンド”に特に合う日本茶は『抹茶』、『煎茶』、『釜炒り製玉緑茶』、『玄米茶』であると思われます。

『抹茶』は元々粉末で、ブレンダーで粉砕可能な粒度よりも、さらに細かい粒子です。
ですのでフローズンカクテルの中で、共に粉砕されて混ざり合った材料の中でも軽やかに、その風味を漂わせるはずです。

『煎茶』を用いれば、苦味をアクセントとしてカクテルに加えることができます。また『釜炒り製玉緑茶』であればそこにプラス、きな粉のような“釜香”も付与できます。
『玄米茶』であれば『煎茶』、『釜炒り製玉緑茶』より苦味は控えめ、玄米の香ばしい香りをカクテルに加えることができます。

『ほうじ茶』、『茎茶』も香りに特徴があるのですが、他の茶葉よりも繊維質が多いことがあるため、ブレンダーを用いても繊維が気になる舌触りになるかもしれません。
茶葉を選んだりブレンダーを調整するなどして、それさえクリアできれば、これらもまた面白い味わいをカクテルに付与してくれるでしょう。


ここで挙げた組み合わせは、それぞれの日本茶の特徴が最も活きるであろう組み合わせです。
ただ、『日本茶が最も活きる=カクテルとして美味しい』ということが常に成り立つわけではありません。
あくまでここで挙げた組み合わせは参考程度として、無限の組み合わせを楽しんでいただければと思います。

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