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すみません から始まる関係|エッセイ

とある通勤時
駐輪場の入口に佇む一人の女性の方がいた
仕事場に行くのに私はいくつかの会社の前を通り過ぎる必要がある。
その駐輪場はそのうちの一社が所有している従業員専用駐輪場であった。

女性はいつも最後で、駐輪場の鍵を締めている姿を私はよく見かけていた
女性は半開きにした柵に手をかけたまま、先程私が通ってきた大きめの交差点から何かを探すように上半身を動かしていた。

ちらっと目を合わせ、私は通り過ぎる。

目を離した瞬間、私は女性の捜し物に気がついた。
すでに数メートル歩いている。
と同時に先程の困った目が私を駆り立て数メートルを引き返した。

「おはようございます。もしかしていつもの女性ですか?」
「あっ、そうです!」
「さっきちょうど同じ信号で一緒に渡りました。見間違いじゃなければ今日は歩きで来られてるかもしれないです」
「本当ですか!いつもこの時間なのに、なかなか来ないから迷ってたんです!ありがとうございます!」
「いえいえ、ひょっとしたらと思ったんで。でも間違ってたらすいません」

私は会社へと歩き出した。


「おはようございます〜」
今ではその人とは挨拶する程度になっている。

翌日女性から、昨日はどうも助かりました!とお礼を言われ私は声をかけて良かったと感じた。

この道で別の会社の人と挨拶するなんて私ぐらいだろう。
この些細なつながりに私の人生が少し広がった気がして気持ちが良かった。




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