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国産紅茶(和紅茶)の品種別特徴をざっくり書いてみた ~レア品種入りロングvar.~

まずは長い前置き-国産紅茶(和紅茶)を選ぶとっかかりがほしい!-

最近、国産紅茶がじわじわと(主にマニアの間で)人気になってきて嬉しい限りです☕

しかし!しかしですよ、情報として「これが足りない!」と思っていたのが国産紅茶を選ぶときに大きな手がかりとなる、「国産紅茶の品種別の特徴」です。

台湾だと「阿薩姆はモルティで重め」とか「紅玉はメンソール」とか主に品種ベースで、インドやスリランカでは「春摘みダージリンは軽やか・華やかで渋みがきっちりある」「ウヴァはメンソール」とか、産地あるいはもっと細かく農園×摘んだ時期ベースで「こういう傾向」っていうのが示されています。

国産紅茶にはそういった「ざっくりしたくくり」というのがまだあまり整理されていないように思いました。なのでとりあえずやってみようじゃないか!というのが本稿の趣旨でございます。

※案外長そう…もっとサクッとしたのないの?というかたはこちらのライト版へどうぞ👇️

https://note.com/tea_boolog/n/nf9e24768a59c

なんで品種別?

さて、日本の紅茶に関していうと、インドやスリランカのような生産地による特徴づけというのは大変難しいです。

なぜなら、ラーメンに例えるとわかりやすい(?)のですが、国産紅茶の場合は

🍜ラーメン二郎の支店のように同じ名人の直接指導を受けた生産者さんが全国に散らばっているパターン

🍜「横浜のお店ではないし、総本山と言われるところで修業したわけではないけれど横浜家系やってます」のように、例えばスリランカ風を目指そう!というようなパターン(例ですよ例)

🍜完全に独自路線

などなどが入り乱れている…という状態だから。製造工程の中の細かいやり方も機械も生産者さんごとにだいぶ異なります。

※一方、煎茶や玉露などの場合はまだ「旭川ラーメン=醤油」「博多ラーメン=平打ち極細麺に豚骨」みたいな感じに近いです。ただ、旭川の山頭火のように、その土地「らしい」メニューもありつつ、シグネチャーメニューは完全独自…みたいな緑茶の生産者さんもいらっしゃいますよ!

なので、日本の紅茶をざっくりカテゴリ分けするならまずは品種別がよかろう…というのが個人的な見解です。

あと、品種から解説することでよく「日本の紅茶は中国種だから軽い、渋くない」というイメージを払拭したいですね。

「べにふうき」などの紅茶用品種はかなりの率でアッサム種入ってますし、中国種でも海外の中国種(中国在来やダージリン在来)が入っていると結構しっかり系になります。緑茶用でも「いずみ」や「みなみさやか」、「藤かおり」などはアッサム種の血を引きます。

ところで、紅茶わかってるの?

あ、ちなみにわたくし紅茶系の資格とかはないのですが…20代のころ紅茶をはじめほぼありとあらゆる茶種を扱うお茶の専門店(察して!)に勤めており、シーズンがくると産地別・農園別にダージリンやニルギリ、アッサム…と海外の紅茶をガバガバ飲んでPOPを書いたりティーサロンでお茶を淹れたりしておりました。最初は紅茶のバイヤーになりたかったんや…。

そういうバックグラウンドがあるとともに、ここ6年仕事で国産紅茶をいろいろ飲んでみて、自分の中にデータが蓄積されてきたかな~というところです。いまだ中国・台湾紅茶には明るくないものの、比較的バランスよく海外・国産の紅茶を飲んできたほうかなと。

で、せっかくなので海外のこの系統の紅茶が好きな方にはこれウケるんじゃないか?と思ったものは、その旨記載してみました。最近は国産ばかり飲んでるので、ちょっと私が思ってる海外の農園モノの傾向が今は変わっているかもしれませんが、ご参考までに。

また、クオリティが上がってきた、増えてきたとはいってもまだまだ玉石混淆で生産量が少ないのが日本の紅茶。色々なところで盛んに作られている品種と、本当に作ってらっしゃる方がいない激レア品種との差も大きいです。なるべくたくさんの品種を載せましたが、試したロットが少ないものもかなりあります(というかそれがほとんどなのでは…)。その旨は各項に記載しましたので、ご承知おきください。

紅茶用品種①  べにほまれ(紅誉)

”国産紅茶界のレジェンド”。圧倒的な厚みと重く華やかな香り。

実は茶農林1号でレジェンドなのでトップに持ってきました!その名も「紅茶として大変優れた、誉れ高い品種」で紅誉。

この品種を創り上げげてテイスティングしたとき、研究員さんたちは快哉を叫んだのではなかろうか…そんな想像が拡がるほど、この品種の香気は独特、かつ蠱惑的です。バラやゼラニウムの精油(ゼラニウムの精油って葉からとるらしいですね)みたいな香り。

これ、実はそんなにたくさんのロットを飲んだわけではないのですが、それでも品種香だとすぐ認識できたくらい特徴的です。ポットの蓋を開けた瞬間にむわっと重厚な花の香りがあたりを包むので、この品種を淹れるときはいつもポットの前で香気を吸う準備をしてしまいます…☕フンスカフンスカ

香りと共にボディも重厚なので、ミルクティーにもオススメ。ミルクを入れてもその香りは健在で、フレーバードティーにミルクを加えたかのよう。

ダージリンのナムリンアッパー茶園のような、ひときわ華やかで濃密な花の香りが好きな方、でもボディと渋みはルフナ産の紅茶くらい濃くしっかりしててもイケるぞという方にハマりそうです。

紅茶用品種② べにふうき(紅富貴)

変幻自在の「紅茶らしい紅茶」。仄かなスパイシーさと黒糖のような味わいが魅力

べにふうきは…「紅茶界のやぶきた」と呼びたいほど、スタンダードで、バランスよく、変幻自在です。香りの幅も比較的広い。

出やすいように感じる香りは黒糖、砂糖漬けの桃やアプリコット、スパイス、ナッツの類い。たまーにごく軽い柑橘のニュアンス。しいて言えば、あまりメンソールの要素はないように思います(ゼロではないですが)。

桃やアプリコットは後述の「いずみ」や「みなみさやか」と共通じゃないかと思われるかもしれませんが、べにふうきには圧倒的なボディとタンニンの強さがあり、口当たりが全く異なるのと、スパイシーさはその2品種だとそんなにみられないのであまり似た印象は受けないです。

あと、甘さのタイプも違いますね。同じフルーツでもいずみとみなみさやかは生のフルーツ、べにふうきだと黒糖や蜜に漬けたり、火を通した感じ。

そう考えると、個性が際立っていないようでいて「黒糖系の重い甘さ」と「スパイシーさ」がべにふうきの個性なのかもしれません。やっと言語化できたー😭

適度なボディとふくよかさと渋み、なにより安心の紅茶らしさがほしい!という方向け。ディンブラやキャンディが好きな方にはまずおすすめしてみようかな…となる品種です。

そうそう、べにふうきの緑茶は花粉症向けのイメージが強いですが、上手に作られたものは花や果物を幾重にも重ねたような香りにキリッとした渋味がリフレッシュ向けです🍵

追記1:ちょいちょいほのかにメンソール香を感じるべにふうきに当たることが増えてきました。スパイス香と連続性がありそうな感じ(2021.1.27)。

追記2:作り方によってはとても軽やかなべにふうきもあります。ただ、ぷるるん感はあまりないです(2021.1.27)

追記3:ブランデーとか酒精強化ワインっぽいのも最近飲みました!こちらは黒糖&砂糖漬けフルーツ香の延長線上にあるのかなと思います(2021.5.29)

紅茶用品種③ べにひかり(紅光)

唯一無二の国産メンソール!ときどき柑橘、黄色の果物、あとバター。

個人的にとても好きな品種です。すごくわかりやすいメンソール香。つまり、台湾の品種「紅玉」や、スリランカのウヴァ産の紅茶に似ています。

シャープで明快。口当たりは柔らかいですがキリリとした爽快な渋味があります。生産者さんによっては、メンソールにちょっと重いバターのような香りが加わったものもあったので、クリーム系の要素もあるのかもしれません。ネクタリンぽいのもありました。

あとは天然のレモンティーかな?と思うくらい、柑橘っぽいニュアンスのロットに出会ったことが一度だけあります。その時はメンソールは影を潜めていました🍋そういうロットならニルギリ好きさんに勧めたいですね。ただ、やっぱりメンソール香がメインな気はします。

品種としては案外古く、1969年枕崎生まれ。残念ながらちょうどそのころ政府の紅茶生産への後押しも打ち切られ、素晴らしいポテンシャルを持ちながらなかなか脚光を浴びることなく長い長い眠りについていた、いわば「眠り姫」です💤

今のところウヴァのBOPのようにごくごく細かくなったタイプのべにひかりには出会っていないので、あれくらいの大きさになったらどうなるのか気になるところ。ただあれは専用の機械でねじ切って作るものだから難しいかもしれないですね…。

メンソールがしっかり出たものは初めて飲む方にも分かりやすいですし、「しっかり紅茶らしくて個性がわかりやすいものがいい!」という方はぜひどうぞ。湿布にも例えられるメンソール香がハマるかは別として…🤭

紅茶用品種④ からべに(唐紅)

中国紅茶の面影をたたえた、カシスの香り漂う品種

カシス、古いものは革。それがからべにの印象です。

あまりにもレアすぎて同じ生産者さんの年度別・ロット別比較という形で飲んだ限りでは、重いカシスの香りがこの紅茶の品種香なのだろうな…ということ。

あと、比較的古いロットでは使い込んだ革のような独特の匂いがします。それが不快ではないのが面白い。どこがどう、と言われると難しいのですが、日本の品種の中ではもっとも中国紅茶っぽいです。

しっかり熟成したミモレットと合わせてもおいしいですし、ミルクティーにするとなんともエキゾチックな香り。

湖北省から持ち込まれた種の二代目から選抜されたので「唐から来た紅茶用品種」でからべに。湖北省の宜興工夫などと比べたりしたら共通項を見つけられるだろうか…うーむ。中国の紅茶と片っ端から飲み比べたい!

これも緑茶が渋くておいしい。

追記1:もちろん英国式ゴールデンルールで淹れてもよいのですが、茶壺や蓋碗で茶葉5g・熱湯100ml・1分で何回か抽出、とやるのもより中国紅茶っぽくて楽しいです。一煎めとニ煎めの表情が違ったりします(2022.10.31)。

紅茶用品種⑤ べにふじ(紅富士)

赤ワインとフォンドボー、バルサミコ?研究してみたいけど激レアすぎて…

研究中です。というか研究できるほど作ってる方はいないのでは…。

1ロットだけ飲んだ限りでは、友人のお店のフォアグラのソテーにかかっている、赤ワインとフォンドボーを煮詰めたソースにそっくりの香りでした。渋味は至極穏やかですが、そこそこの濃さがあります。肉。肉持ってきてー!🍖

追記:その後別の生産者さんのを飲んだらバルサミコっぽかったのでからべにに似てるけど少しズレた、赤ブドウの香りなのかなと思い始めました。

紅茶用品種⑥ ただにしき(多田錦)

ごめんなさい、ちゃんと品種香取れたロットがなく…

研究中です。「きゃー!ただにしきってどんなの!?」って目次からいきなりここに飛んだ方、ほんとすみません!

わかってきたら追記します!

紅茶用品種⑦ はつもみじ(初紅葉)

ありそうでないりんごの香り(かもしれない)

これも研究中です。ただ、発酵不良によるものではない、りんごのような香りがこの品種の品種香なのではないかと疑っています。

紅茶用品種⑧いんど(印度)
名前はインドなのに「中国風の清香!?」

緑茶用品種① いずみ(和泉)

国産紅茶界のアイドル。ぽよん、ぷるるん、あるいはふっくらとした口当たり。甘ーい桃系の香り。

透明感のあるみずみずしい口当たりが特徴的で、桃のような愛らしい香りがフワッと香ります。強いて言えば、ダージリンのフルーティー系から渋みを抜き切った感じ、しかし香りの系統が異なるのでぜひ試していただきたい!春摘み軽発酵だと、それに百合のような花香が加わることも。かわいい。とにかくかわいい!

福岡生まれ、戦後のモロッコ向け輸出回復のために「べにほまれ」の実生(種)から選抜された釜炒り茶用品種。つまりミント入りモロッカンティーにされるはずが、結局輸出が振るわなくなったために置き去りになってしまったという…。実際、釜炒り茶にしたものをモロッカンティーにしても美味です!ミントは本式にフレッシュミントで、ぜひお砂糖もいれてくださいね。

その後、茨城県猿島の生産者の方により見出され、紅茶界に華麗なるデビューをしてあれよあれよという間に大人気に。後述の「みなみさやか」と共に、緑茶用品種を使った国産紅茶の「なにか紅茶としてあまりピンとこない」という評価を一変させてしまいました。恐るべし…(もちろん生産者さんのご研鑽と技術の賜物であるのは言うまでもありませんが)。

いずみについてはこちら

https://note.com/tea_boolog/n/nff3ee3fe0e25

しごく軽やかですが、ごくごくごく少量のミルクを落とすとかわいい香りのミルクティーになります🍑

「いずみ」は当時の九州農業試験場の所在地。今も九州沖縄農業センター筑後・久留米研究拠点の住所や、斜め前の交差点に「和泉」の名前を見ることができます。

追記:その後いずみの紅茶が増えてきまして、強めの揉み&発酵で仕上げたどっしりタイプも出てきました!(ストロングいずみと勝手に呼んでいます)そちらは口当たりがふっくら、渋みがじわっ。桃がもわっと香ります🍑

緑茶・烏龍用品種② みなみさやか(南爽)

やっぱりぷるるんアイドル系、でもちょっぴりエキゾチック

いずみと国産紅茶界アイドルの双璧をなし、センターを争っております。奇しくも同じ緑茶用品種で九州出身、やはりみずみずしいフルーティー系、しかも桃やアプリコットっぽく渋みが少ない…と書くといずみと完全にキャラが被りそうですが、なんと「ヨーグルトっぽい香り」が桃と共にほのかに香るため、印象は異なります。

そもそもクワシロカイガラムシ耐性を期待されていた緑茶・烏龍茶用品種。そう、品種改良というのは必ずしも味だけではなく、虫や病気、寒さ/暑さに対する強さ、収穫量…等、いろいろな目的でなされるのです。

面白いのは、緑茶(煎茶や釜炒り茶)にしたときと紅茶にしたときの香りの差があまりないこと。印象がガラッと変わることも多いのですが、安定の桃&アプリコット&ヨーグルト感を発揮してくれます。緑茶だとサラッとしたスパイスのきいた料理に合いそうです。

系統はちょっと複雑かつ変わっていて、アッサム種とコーカサス種、たかちほ(宮崎在来種実生)のハイブリッド。彫りの深いタイプの美女or美男って感じがします。名前はシンプル明快に、「南生まれの爽やかなお茶」。

ダージリンのジュンパナ農園の果実味、セリンボン農園のみずみずしさが好きな方にはオススメ。

緑茶用品種③ やぶきた(藪北)

ぽやーーーーんとウッディ。上手に作られたものは、レモンピールやライチ、イチゴジャムの香り。渋味がとにかく苦手な人向け!?

煎茶のキングにしてクイーン、それがやぶきた。やぶきた最高!やぶきた様々!…とヤブキタニストの私は思います🍵しかし紅茶にするには結構工夫が必要な品種…のような…気が…する。数はあるはずなのだけど、紅茶として本当に旨い!というのはなかなか見つけるのが難しいです😓

紅茶にすると概してクリアでウッディでぽやーーーーんとしており、渋味が紅茶としてはあまりにも穏やか過ぎて物足りないものが散見されます。辛口ですみません…。

最近やっと出会った「これはうまい!」というやぶきたの紅茶は、ダージリンの青々しいものを思わせるほどに発酵がひかえめで、最初は青みある素敵な香気が、青みが落ち着いてからはかすかにライチのような「爽やかなフルーティーさ」を漂わせていました。そういうポテンシャルを秘めてたんだね…。

いかんせん私が製造に明るくないのと、紅茶好きとして「これはうまい!」と言えたものが初めてなので的外れかもしれませんが、青め(発酵軽め)だとやぶきたの香気がプラスに働くのでは?と思っています。未だにたくさん植わってますし、今後に期待!

緑茶用品種④ ごこう(伍光)

ほんのり漂う無花果の香りは、紅茶に仕立ててなお健在!

玉露の雄!煎茶ですら珍しいのに、まず紅茶にしようという発想がすごい。

いちじくのような「酸味があるわけではないけど、ほのかな酸を思わせるフルーツの香り」。その独特のフルーティーな感じが品種の特性と言っていいと思います。煎茶や抹茶でもその傾向があるので、みなみさやかのように比較的茶種によるギャップがない品種と言えるかもしれません。

口当たりはやぶきたに似ています。ぽわーん、ぽやーん。1種類しか飲んだことがないので、もしかしたら産地が違ったりすると口当たりも違うのかもしれない…。

玉露以外に使われることはあまりないと思いますが(煎茶や抹茶はたまにある)、紅茶がたくさん出てレベルアップしたら面白いかもしれない品種。

緑茶用品種⑤ 香駿

アーモンドクッキーのような芳香、レッドカラントのニュアンス

煎茶にするとハーブっぽい香りの香駿。花香溢れる紅茶になるかと思いきや…アーモンドクッキーっぽかったりします。この香りは他の国の紅茶含めて、あまり出逢ったことはありません。焙煎香でもない。

その次に来るのが、レッドカラントのような味わい。たまにムース系のお菓子やケーキに飾り的に乗っている、ベリーほど重くない、酸味のある赤い果実ですね。あとちょっとだけスパイス。

これもそんなにたくさんのバリエーションは飲んでいないのですが、前に飲んだものはもう少し軽やかでアーモンドクリームっぽさは少なめだったので、育て方作り方によっては、レッドカラントっぽさが前に出るのかもしれません。

緑茶用品種⑥ さやまかおり(狭山香)

キャラメルとラム。お菓子と合わせたくなる紅茶

これも2~3ロット程度ですね…自信なくなってきた。

キャラメル&ラム。特にキャラメル。ミルクを入れるととにかく美味しい!砂糖か甘めのべにふうきをブレンドしてもいい!

なんとなくですが、スリランカのキャンディ産の紅茶が好きな方には勧めてみたいです。

追記:花や柑橘系が出ることもあるようなので、要研究。

緑茶用品種⑦ 藤かおり

どんな紅茶もそうと言えばそうなのですが、作り方・年度のギャップに一番驚いたのはこの品種かもしれません。

発酵が強めで細かいものは、ちょっとルフナっぽいというか、ミルクにも余裕で耐える強さまろやかさがありました。ただ、藤かおりの花香はほぼ感じられませんでした。

しかし葉が大きくやや緑がかったロットになると一転して藤かおりの強い花香、お香を思わせるような香りが…。

ちょっといろんなパターンで作ってみてもらえたらなかなか化けるのでは?という品種です。

もちろん最後は冗長なあとがき①:お茶って全部違うじゃない?

さて、品種別にご紹介してきましたが。

お茶は全部違うのに…って?

もちろん世界中どこにおいても、一つとして同じお茶は存在しません。同じ年度でもシーズンでも品種でも産地でも生産者さんでも果ては農園内のエリアが一緒でも、ロットによって全部違うのは当たり前です。それがお茶の面白さのひとつでもあります。

でも、それを言ってしまうと究極的・理想的にはワインのように一個一個のロットについてのレビューを探さなければならなくなってしまうわけでして…。みんな、もっとざっくり「自分の好みのものを次に探すための手がかり」というのを欲しているんじゃないでしょうか。そういうわけで、産地別や品種別のなんとなーーーーくの傾向というのは、買う側からしたら有用な情報なのです。国産紅茶には、まだまだそれが足りていないと感じます。

さらに続く冗長なあとがき②:国産紅茶に対する個人的スタンス

また、個人的な基本スタンスとしては、国産紅茶が紅茶として「きちんと(難しいですが、製造上の失敗・欠陥なく)」作られた上で、「世界の紅茶」の中で質を問われ、その個性を認められ「和紅茶」「日本紅茶」として知られるようになればいいな、と常に考えています。

中国紅茶だって、激烈に個性的だけど「世界の紅茶のいちジャンル」として名前が挙げられますよね。インドやスリランカやケニアの紅茶も、それぞれ「製造上のボーダーをクリアした」上で、「これは華やかな香りで適度なボディと穏やかな渋みがあり、余韻が素晴らしい」とか「香りはまぁまぁだけど拡がりと重層感に欠ける」「ちょっと焙煎香が強すぎる」などと質の優劣に関する評価を受けます。日本の紅茶にもそうあってほしい。

もちろん品種だけが味を決めるわけではありません。でも、「この品種にはこの傾向があるのかもしれない」と意識して探りながら紅茶を飲んでデータを蓄積していくことは、「製造上の失敗で出た香り」と「品種香や生産者の個性」を切り分けて評価するための一つの手がかりになるのではないでしょうか。「何が日本の紅茶の個性なのか」―簡単なことではありませんし、我ながら生意気だと思いますが、それを常に問うていくことは必要なことだと思います。

長くて飽きた!?~そんなこともあろうかと最後に選び方をまとめたのでとにかく飲んでみてください(雑)~

やっと本格的な締めに入ります!お疲れ様でした。

飽きてしまった方のために、一覧にしましたのでご査収くださいませ📝

🍂派手で濃い香りに包まれたい→べにほまれ

🍂スタンダードって安心するよね→べにふうき

🍂何をおいてもメンソール→べにひかり

🍂重くて甘くて濃いのない?→からべに

🍂花っぽい香りは好きだけど甘くなくていい→藤かおり

🍂夏のダージリンのフルーティーさっていいよね→いずみ、みなみさやか

🍂お菓子のフレーバーっぽいの大好き→香駿、さやまかおり

最後にごちゃごちゃと書きつらねましたが、せっかくびっくりするほど美味しくなってきた国産紅茶、何のフックもなくスルーされてしまったら/してしまったらもったいない。ちょっとでも興味を持っていただければ幸いです☕

参考文献

静岡県茶業会議所 編『新版 茶の品種』静岡県茶業会議所,2019年3月

主に来歴や品種名の由来等を調べるのに使わせていただきました📕マニア必携の一冊!

http://shizuoka-cha.com/index.php/books


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やっとん@日本茶迷人
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