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熱と芸と能と

地元での演劇のイベントが終わると次に、町に熱波が来た。

店の中の温度計は余裕で40度を超えている。

年々、さまざまな対策を増やして、冷房を入れなくても過ごせる様にしている。

暑くなる局面は、アドレナリンが出るのかも知れないが、少し気温が下がると一気に疲れが出る。

今日は雨でわりと涼しく、揚げた天ぷらが湿気を吸わないように店内、珍しく弱冷房をかけて湿度を下げた。

普段真夏でも冷房を入れないのは、店が外に対して大きく開いているから。

電気代の話だけではない。

エアコンと、天ぷら鍋の上にある大きな換気扇の間の通り道だけ冷えるので、そこに立っている私は背中だけ冷えて、他は熱を一層持って、かえって体調を崩す。

接客するエリアなどは、エアコンを効かすために窓を閉めていて、冷気も十分に来ず、余計に暑くなる。

今日、湿度を下げるために弱冷房を入れる時、ふと、いままでにやっていない方法を試してみた。

店の中に業務用の冷蔵庫があり、その上の部分は夏には相当な放熱をする箇所がある。

エアコンから出てくる冷えた空気を、その放熱部分に直接当てると、これが除湿効果を増して、冷えすぎず湿度が大きく下がった空気が、体に直接当たらずに店に広がって、身体への負担がなく心地よく仕事ができた。

私の仕事は、温度より湿度の高さがこたえるので、良い方法を知って良かった。

今日は久しぶりに先日の熱波の疲れを取ることができて、「あぁ、自分は人間だったんだ」と我に返ることができた。

雨だったので、昼の休憩時間を多くとって、100分de名著の「太平記」を観た。

先日、チェーホフの「カモメ」の音読イベントに参加して、声の強弱や高低、質だけじゃなくて、間の取り方でもすごく印象が変わるんだなと思った。

そんな事を考えていて、ふと100分de名著で何を見返そうか考えた時に、能楽師の人が解説をする回を思い出し、「平家物語」「太平記」と見た。

能楽師の人が、能で語るように、当時の言葉で語るシーンが何度となくあり、日本語はこんなに迫力のある言葉だったんだ、とびっくりした。

いままでまったく興味のなかった能をみてみたくなった。

せっかく日本人として生まれ、今でも生き続けている日本の芸能を死ぬまでに観て、感じてみたいものだ。

100分de名著の平家物語と太平記の解説をされた安田登さんいわく、「芸能とは、死者を語ることであり、鎮魂の意味を持っている」と。

先日の地元での演劇イベントでは、私の街で昭和の前半に盛んだった、尾久三業地における当時の芸能やエンターテインメントの人達の魂が喜んでいるような錯覚にとらわれて、そのことについてnoteで書いたが、まさに、それにつながるような話がされていて、何か奥深い縁を感じた。

と言うことで、暑さで私が死者にならないように気をつけながら、夏を乗り越えたいと思います。

おやすみなさい。