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『佐渡へ』

佐渡へ、佐渡へと、いなーきーはなびくよ~♬


二〇二二年七月二日~七月四日。
始まります。父娘旅です。
娘・麻咲三十路と父・いなーきーの六十路の、合わせて九十路のふたり旅。
今回は、コロナ禍が少し治まっていた時期でした。私いなーきーが中学の頃からの憧れの地である新潟県の佐渡ヶ島です。
これまでの旅では沖縄島北部のヤンバルクイナや対馬列島のツシマヤマネコなどを訪ねてきましたが、今回の旅の目的は幻の鳥トキを観ることでした。

【トキの森公園】
岡崎市から陸路四百キロを夜通し走破し、新潟港からフェリー・ときわ丸で海路、佐渡の両津港に到着したのは午前八時半。予定通りに佐渡ヶ島に上陸した。
第一目的地の「トキの森公園」は八時半から開園。いよいよNIPPONIA NIPPON(トキの学名)に会える。日本では絶滅させてしまったトキ(写真は日本生まれの最後のトキのキン)だが、一九九九年に中国から迎えた二羽を繁殖させ環境整備や放鳥事業により今や自然繁殖を含めて四五十羽まで増えているそうだ。トキの森公園ではケージ内だが、トキのカップルが間近に観ることができるのだ。
「お腹すいた。」
先を急ごうとする私の足を掬う麻咲さんの声。
いつものように助手席でスマホを繰っている。その姿を見ると何故かイラッとする。
「いざメイン・イベントって時に朝ごはんをのんびり食べるつもりかねぇ。お腹がすいてる方が頭も冴えるのにねえ。」
私の声にはこってりと嫌味が混じっていた。
「トキの森公園のちょい先にパン屋さんが開いてるよ。」
ま、旅の初っぱなから麻咲さんの機嫌を損ねるのも何だし、トキを観ているときに「お腹減った」と水を注されるのもなんな「ので、トキの森公園はこちら」の標識を通り過ごして、そのパン屋さんに入店。トレイとトングを持って焼き立ての薫りの立ち籠める店内で「おっ!」。トキがいるではないか。白のパン生地に赤いお顔、そして黒いくちばしの先の赤いポイント。見事なトキデザイン。「トキたん」パンというらしい。
「親父こういうの好きやろ?」
「うん。可愛い。」
迷わずにトキたんパンで朝食。トキの顔にかぶりつくのは少し気が引けたが、結局かぶりついたのでした。

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