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好きを仕事にする道にはやりがい搾取という闇がつきまとう、という話

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回は好きを仕事にするとやりがい搾取という闇が付きまとう、という事について語ります。職業訓練・スクールでデザインを学んでいる人、就活中の人、フリーランスを目指している人に読んでいただければ幸いです。


クリエイターの大半は労働内容、労働時間に見合った対価を受け取れない

世の中のビジネスマンの大半は効率の良い仕事をして、高い効果を得ることを是としていると思います。

経営者視点で見てみると、クリエイターの仕事は「多大な時間と労力を費やして、効果があるのかどうかわかりにくい事をしている」ようにしか見えていないようです。そのため、クリエイターに対して、かかった労力に見合った対価、報酬が支払われないという事になりがちです。

そのような待遇に対して「好きな事を仕事にしているから」という、自虐的な感情で納得しようとするクリエイターは多いと思います。結果として、いつまでも環境・待遇の改善ができず、経営者・クライアントの増長、やりがい搾取につながってしまっています。

現代の日本では、実用性の高い技術、モノつくりは評価されやすく、芸術性の高いモノつくりは評価も理解もされにくいという実情があります。海外と比較してもクリエイターの待遇は良いとは言えず、納得のいく報酬を得られる人は少ない状況です。

最近のデザインの現場では、デザインシステムの構築と作業の平準化、生成AIの積極活用、デザインの言語化&効果の見える化等、作業の効率化やデザインがビジネスに及ぼす効果の可視化を図って、業務内容、待遇、環境を改善する試みが行われていて、実際に改善につながっているところもあるとは思いますが、業界全体でみるとそのような恵まれた環境はごく一部、上澄みでしかないように見受けられます。

特にフリーランスで活動しているデザイナー、クリエイター、クラウドソーシング界隈を主な活動場所にしている人の大半は、そのような恩恵からは程遠い所にいるのではないでしょうか。

クラウドソーシングの仕事はやりがい搾取があふれてる

クラウドソーシングはその仕組みをよくよく見てみると、業界全体の相場と比べてかなり低い案件単価なうえ、コンペ形式で定額なのに依頼者は無制限に修正依頼を出せる、システム利用料は仕事を依頼する側は無料、仕事をする側は有料という、弱者・貧者からお金を取るビジネスモデルになっていたりと、仕事を依頼する側が絶対有利、仕事をする側が不利になる仕組みになっていることがわかると思います。

運営企業が望んだ結果なのかどうかはわかりませんが、クラウドソーシングの実態は、「好きを仕事にした結果、食い詰めている人達」を搾取する構造になってしまっているのが現状です。

サービスイン当初の黎明期であれば、まずは仕事の依頼を集めなければならないので、仕事を依頼する側が多少有利になる構造でも仕方がないとは思いますが、サービス開始から10年以上たった今も、根本的な構造の問題は変わらないままとなっています。(改善しようという運営側の意思はそれとなく感じられますが。)

クリエイティブ業界全体の傾向としては、実務未経験・中途採用のハードルは相変わらず高いままではありますが、常時人材不足状態であることに加え、若者の人口減少の影響を受けたことで売り手市場に傾いてきています。

一方で、クラウドソーシング界隈はフリーランスになりたての人、人脈も伝手もなくフリーランスになってしまって、仕事に困っている人が常にあふれています。

クリエイター有利の売り手市場であれば弱者・貧者を搾取するビジネスモデルは成功しない、長続きしないはずですが、わざわざ呼び込まなくてもクリエイターの新規参入が止まることがなく、供給過剰状態が続くようでは、クラウドソーシング界隈の買い手有利の構造が揺らぐことはないでしょう。

やっている事は「ビジネス」なんだからドライに徹するべき

「好きを仕事にする」と言っている人ほど、「仕事」として「好きな事」に向き合う事がうまく出来ている人は少ないように見えます。おそらく「仕事」「ビジネス」と呼ばれるものの様式、思考、行動、生活に適応できなかった人が、逃げ道として「好きを仕事にする」を使っているからではないでしょうか。

しかし、「好きを仕事にする」ということは、好きな事に対して「仕事」「ビジネス」としての様式、思考、行動、生活をあてはめないと成立しないという事でもあります。好きな事を仕事にしても、趣味の延長程度の意識では立ち行かなくなるし、事業、商売に関して無知なままでいたのでは、搾取されても仕方ない事なのかもしれません。

好きな事を仕事にしているからといって、情に流されたり、無益な労働に従事する必要はまったくありません。搾取されがちな人は特に、自分に利を生まない関係性の見極め、損益の分岐点の見極め、損切のタイミングの見極めが苦手なのではないでしょうか。好きな事でも「ビジネス」としてやっているのだから、もっと自分に利があるように割り切った考え方、立ち回り方をするべきではないかと思います。

クリエイターの自由と安息の地はどこかにあるのだろうか?

会社員を辞めてフリーランスになれば、自由な働き方ができると考えている人も多いのではないかと思います。しかし、実際にフリーランスになってみると、自身の立ち回り方次第では会社員よりも不自由で、不安定、安全保障のない危うい立場になってしまいます。

そもそも「スキルを売ってお金を得る」「スキルを頼りに他人から仕事をもらう」請負仕事が主幹のビジネスモデルでは、「他人に使われる立場」であることは会社員でも自営業でも変わらない、つまり、どちらの立場でも自由ではない、という事になります。そうなると、社会的信用が低く、社会保障も薄いフリーランスは会社員よりもデメリットが多い、場合によっては会社員よりも自由の無い働き方になってしまいます。

クリエイターとしての立場で「本当の自由」を得たいと考えるのなら、自分自身で事業を起こす、サービスや仕組みを考えて立ち上げる、ストック型ビジネスや自己発信で収益を得られるようにする等、「他人に使われない働き方」を目指さない限り、自由の実現はできないのはないでしょうか。

そして、真のクリエイターとは「この世に無いなら自分で創る」ができる人だという事も覚えておきましょう。

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