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【コーチインタビュー #2】「完璧さ」を手放した先に見えたものとは

徐々に日本でも主流になりつつあるコーチング。きっとコーチングを受けたことがある方は多いと思いますが、コーチとして活動されている方のお話を聞く機会はあまりないのではないでしょうか?

実はコミュニケーションのプロである「コーチ」としての活動のあり方はコーチングセッションや研修の提供だけではありません。日常のあらゆるコミュニケーションや普段の仕事の中で学びを活かして活躍されている方がいます。

本特集「コーチになって拓けた新しい視点」では、一般社団法人トラストコーチングで活躍されているコーチへのインタビューを通じて、コミュニケーションの学ぶことの魅力についてお伝えしていきます!

井上 貴夫さん TCS認定コーチ
薬剤師として新卒から調剤薬局に勤務。自分自身のキャリア、そして対人コミュニケーションに悩んだ時にコーチングと出会う。自分自身を知ることが人との関係性につながっていくことを実感でき、コーチングを学び続けようという想いに。「患者様のために働く薬剤師、そして薬剤師を目指す薬学生を応援したい」想いから、TCS認定コーチとして活動。社内でのみ活動していたが、今後はフィールドを広げて活動していく計画を立案中。


「常に正しくあらねばならない」という気持ち


ー TCSに出会われたきっかけを教えてください。

井上  8年前に新卒で入社した会社を辞め、2社目も同業種の会社に入ったのですが、その辺りから人との付き合い方がわからなくなっていました。

それまでの私は上司、部下の上下関係をはっきりさせ、今でいえばパワハラと言われても仕方がないようなコミュニケーションを取っていました。当時の自分は与えられた役割を全うし成果を出すためには、そうしたコミュニケーションでないとやっていけない環境だと考えていたのだと思います。

他の会社でも変わらず通用すると思い込んでいた部分もあり、転職先でもコミュニケーションスタイルは大して変わらなかった。すると、会社を変えても自分の周りから人が離れていく・・・。そして転職を繰り返してしまっていました。

そうした日々を過ごすうちに、今までとは違ったコミュニケーションのあり方に興味が湧くようになりました。

いろいろ調べてみると、どうやらコーチングというものがあるらしいと。
コーチングとの出会いはそこからでした。

コーチングを学ぶためには高額な出費が必要な組織もありますが、TCSは手を伸ばせる範囲の価格帯でした。まあコーチングに対する理解が深くなかったので、まずはTCSでコーチングを学んでみようと思いました。

ー そうだったのですね。当時、厳しいコミュニケーションの取り方をしていたという話がありましたが、今振り返ると、何が自分をそうさせていたと感じますか?

井上  そうですね・・・。多分、自分の正義を貫きたかったんだと思います。当時はマネージャー職だったので、マネージャーとなった以上は自分が常に正しくなきゃいかん!という気持ちは強かったですね。

だからどちらかと言えば、合意形成をするよりも、説き伏せたり、論破するコミュニケーションが多かった。常にマネージャーとして正しいことを部下に示さなければならないと思っていました。

ー でも、それだけでは難しいと思い始めた?

井上  はい。コミュニケーションのあり方を変えなければ、これから立ち行かなくなると感じていました。

ちょうど自分のキャリアにも悩んでいたこともあり、特に自分自身のあり方を見直すことを大切にしているTCSを信じてみようと思いました。

正直に言えば、コーチングを学ぼう!と決めた時はコーチングに対して少し疑念があったのも事実なのですが・・・。

ー その疑念とは?

井上  なんでしょう。その時の自分はコーチングを学んだり受けたら、「ガラッと自分を変えなきゃいけない」と思い込んでいました。

学んだからには変わらなきゃいけない。つまりそれまでの自分を否定して新しい自分にならないといけないみたいな感覚があったんですよね。
そこに違和感があったり、本当に変わるのか?という観点でも疑念があったのかもしれません。

でも、とにかくその時の自分は今までとは違うコミュニケーションのあり方を模索していたので、今の自分にコーチングでの学びを取り込んだ時にどう変わるだろう?と考えるようにして、感じていた疑念は横に置き、まずは信じてやってみよう!と学びと実践を繰り返すことを決めました。


ー 実際に学び始めてから、どのような変化がありましたか?

井上  たくさんの学びがあったのですが、あまり自分から発信しないようになった時期があったんですよね。なんというか、自分の想いを表現することと、アドバイスはしないコーチとして相手に関わることのバランスがすごく難しいなと悩みました。

そうした悩みが更に積もっていき、周囲の方とのコミュニケーションの衝突が再び起きてしまいました。本当にこの組織に居ていいのだろうか、今後どういったキャリアを歩んでいけばいいのかと不安に感じる機会も増えました。

ー 学んだことで見えてきた、本来ご自身が理想としているコミュニケーションがうまく取れない時期が続いたことで不安が増していったのですね。

井上  そうですね。その時は結構短期間で転職を繰り返していた時期でもあったので、よりそうした不安が増していたように思います。

そんな感じで、結局学びも始めても同じような状況を繰り返していたこともあり、やっぱり一歩立ち止まり、しっかりコーチングを学んでみよう、自分のコミュニケーションを見直そうと改めて決意しました。

「完璧」からの脱却


ー 実際コーチングを学んでいく中で自分で感じるご自身の変化や周りからこんなことを言われるようになったなどの変化はありますか?

井上  私が働いているような薬局ってすごく狭い空間で、何人かの限られた人と一緒に働くことが多いんですよね。だから誰かと誰かの関係性が良くないと、職場の雰囲気がとても悪くなる・・・。

そんな中、もし自分の話を押し付けるのではなく、相手の話も聞いた上でお互いに建設的なやりとりができるようになれば信頼関係も築きやすくなると思うんです。

だからこそ、まずは自分から変わろうという想いがありました。

コーチングを学び始めてから、徐々にですが変化が出てきたと思います。

例えば、誰かと会話する時、まずは相手の話を聞こうという気持ちへと自然と変わっていきました。他には、「完璧」を追い求めなくなりましたね。

ー 「完璧」、ですか。

井上  はい。それまではコミュニケーションを取る中でこれは絶対終わらせておかないといけないとか、関係性をここまで持っていかないと、という気持ちが強かったです。

それが自然と「完璧」を追い求めなくなった。「完璧」であろうとする気持ちを手放せたことは自分にとって大きいことでした。

ー どうして手放せたと思いますか?

井上  そうですね・・・、なんかしんどかったんですよね。無意識に「完璧」であろうとする自分が常にいて、そうじゃなきゃいけないって自分を追い込んでいたのかもしれません。

だんだんとそうした自分の気持ちに気づくようになったことで手放せたのだと思います。

ー そもそも「完璧」を目指そうとしていた自分は、何を大切にしたかったのでしょう?

井上  振り返ると、マネージャー時代の記憶が蘇ります。

当時の私は薬局の担当エリアがとても広かったんです。通常のエリア範囲であれば薬局1店舗あたり、1時間ぐらい薬剤師の方とお話ししても問題なかったかもしれません。でも私の場合は担当店舗がとても多くエリアも広範囲だったので、移動に時間が割かれるために、1店舗あたり15分くらいしか話ができていなかった。

そんな中で伝えなきゃいけないことは伝える必要があるので、とにかく必死に伝達事項を伝えることがゴールになっていて、それを達成することが「完璧」になっていました。

今となっては「完璧」を自分に求めなくなりましたし、お互いに話をして違った視点も得られたらいいなという気持ちが強くなっています。まあそもそも、「完璧」なものって世の中にはないですもんね。

ー とても大きな変化ですね!

井上  そうですね。どんどん自分の心が楽になってきている感覚もあります。以前はどこを突かれても徹底的に答えられるようにしようと常に肩肘張っていましたから。

隙のない「完璧」さから、「余白」の大切さを感じ、心のあり方が変わりましたね。


力が抜けたからこそ生まれた変化


ー 周囲との関係性で何か変化はありますか?

井上  以前は厳しいコミュニケーションスタイルだったので、あまり周囲から話しかけられませんでした(苦笑)。
ところが最近は「ちょっと今いいですか?」と相談していただける機会も増えてきました。真逆ですね。

あとある店舗に周囲から、厳しくあまり話さないという印象を持たれていた方がいました。他の方もそれもあってあまり話しかけないそうなんです。ところが不思議なことに、その方とお会いして2回目には打ち解けてしまいました。

自分ではどうしてそうした関係性ができたのかまだ掴み切れていないのですが・・・。まだこうすれば上手くいくみたいなパターンは見えていないかな・・・。勝ちパターンみたいなものですね。

ー もしかしたら上手くいくパターンを確立していないからこそ、自然体で相手に関われているのかもしれませんね。だからこそ信頼関係を築ける。

井上  あ〜・・・そうかもしれませんね。パターン化しようとすると、また「完璧」を目指す方向に向かいそう笑

肩肘張らず、ある程度力を抜いてフラットな状態で「おはようございますっ!」って店舗に入った方が良い関係性を築けることが多い気がします。

あ、そういえば以前、ある人からとても印象的なことを言っていただきました。

新卒で入った会社の先輩だった方なんですが、会社を辞めてから数年後に久しぶりにお会いする機会がありました。その時に「なんか井上君さ、肩肘張って仕事してたけど、今話している感じ、全然肩肘張ってないね」と言われたんですよね。

その方からは別の機会に「高田純次さん、知っているか?」って聞かれたことがありました。
「一見、適当な雰囲気を出しているけどそれでも長い間、色々なところでご活躍されている。本当に適当なだけじゃ絶対長く活躍できない。お前もあれくらい、力を抜いても良いんじゃないか」って。

あと、前の会社を辞めた後も連絡を取っている元部下の方がいるのですが、以前DMでやり取りした時に「井上さん、なんか変わりましたよね」と言われました。「なんだか文章が柔らかくなった」と笑

自分の変化に気づいてくれて嬉しかったですし、フィードバックしてくれる人がいることは本当に有難いことだと思いました。


ー これから井上さんはどんな人でありたいですか?

井上  ありきたりかもしれませんが、相手を変えるのではなく、まずは自分が変わる。その方が楽しいという感覚を今では持てています。大変なこともあるけど、自分が変わっていく様をじっくり楽しむ。

そして、一言でいえば「パワースポット」みたいな人でありたい。

「不思議と井上と一緒にいて話すと上手く行ったりするよね」みたいな。今までの自分は「完璧」を目指していたけど、これからは全く違ったスタイルの自分を目指していきたいですね!

ー もし、コミュニケーションに悩んでいた当時の自分に声をかけられるとしたら、どんな言葉をかけたいですか?

井上  世の中も変わってきている中で、今のまま行ったら、自分の未来ってどう見える?って聞いてみたいですね。薄々、自分でも「このままじゃまずい」ってわかってるんです。だからこそ、そうした言葉を投げかけられるとドキッとして、変わろう!という決意が固まる気がします。

それから、「そんなに力を入れなくても大丈夫だぞ」とも言ってあげたいですね。



以上、いかがでしたでしょうか。

コーチングでの学びや日々の生活の中での気づきが重なり、気づけばコミュニケーションスタイルが真逆に近いほど変わられた井上さん。

誰しも持っている自分なりの「完璧」は、気づけば自分の重りになっているかもしれません。その重りを手放すことは簡単ではないかもしれませんが、手放した先に見える景色は全然違うものだなと改めて感じました。

トラストコーチングは10年以上の実績と第一線で活躍するビジネスパーソンに選ばれ続けてきたコーチングブランドです。
2015年より《誰もがコミュニケーション(コーチング)を学ぶ文化を創る》というミッションを掲げ、より多くの方に、もっと身近にコーチングを体感して頂きたくTCSが誕生しました。

コミュニケーションを学んでみたい!と思われた方はぜひHPをご覧ください!

また、気になる点などございましたらお気軽に事務局までご連絡ください。


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