見出し画像

奈良のシカから見えた社会問題

ちゃんとしたnoteは久しぶりになってしまいました。

実は今、自費出版しようと本を書いているんですが、その中で改めて見えてきたことを本のダイジェストみたいな感じで書きたいと思います。

奥が深いというか、シカを撮らせてもらっている側?としてもちゃんと向き合わねばならない(けど僕1人の力じゃどうにもならない)ので周知だけでも。とりあえず、少しでも多くの人に現状を知って欲しいです。


奈良とシカの歴史

古都と呼ばれる奈良・京都・鎌倉には古くからの街の中に国宝群の神社・仏閣がある。
それは都であった時代からの建物が保護され残されてきたからである。

古都としての奈良で言えば、街の中に世界遺産や国宝群が建ち並び、そしてその中の奈良公園で暮らす奈良のシカは国の天然記念物である。


なぜ奈良公園にシカがいるのか?というのは、春日大社の神様が白い鹿に乗ってやって来て、その子孫とされているからであるが神鹿でなくても、もともとシカはどこにでもいる野生動物である。
しかし時代が進むにつれて山は切り開かれ、街が開発されて次第にシカをはじめとする野生動物の棲む世界と人間の住む世界が交わることなく離れていった。


ただ、奈良公園界隈では神鹿として手厚く保護を受け、街中でありながらシカとシカの棲む世界を人間の手で守ってきた。シカ自体が神鹿であるのと、シカが多く棲む春日山原始林が春日大社の神聖な土地とされ禁足地となり、こちらも長年にわたって保護されてきたのも相乗効果としてシカの保護に繋がっているのだろう。


人間がシカとその環境を保護し、シカは奈良の象徴であり続ける。

この環境はやはり奈良にしかなく、もはや奈良を代表するアイデンティティになっている。
奈良といえば”大仏と鹿”と言われるぐらい日本全国に浸透しているし、それを奈良の人はアイコンとして誇りに思っているのだろう。


奈良のシカの光と陰

しかし今、この奈良のシカを掘り下げて見てみると、陰の部分が少しずつクローズアップされ始めて今やシカにおける死活問題になっている。

まず、シカの総頭数が年々増加しているのに比例して交通事故死するシカが増えていること。
奈良公園は立地上、県庁所在地かつ観光地で周辺の道路の交通量が多く、シカが道路へ飛び出すと車はブレーキが間に合わず轢かれてしまう例が多い。くどいほど”鹿の飛びだし注意"の標識が立っているが実際、注意して通行している車はどれぐらいだろう。

画像1


次に奈良公園内でのシカの誤飲による死亡例が増えていること。
奈良公園内にはシカがゴミ箱を漁ってしまうため、原則としてゴミ箱は設置されていない
その影響でポイ捨てされたゴミをシカが誤って食べてしまい5歳のシカの胃から4kgものポリエチレン類の塊が発見された例もある。


シカによる被害

そして今度はシカに対してでなく、シカによる被害である。
奈良公園近隣の農家の田畑を荒らしたり、奈良女子大学では校内に記念植樹として植えられていた木が食害に遭ってしまった例もあり、高畑など奈良公園近隣の住宅地ではシカが民家の敷地へ入らないよう防護ネットを張っている姿が見受けられる。


またシカは野草ならなんでも食べるわけでなく、食べる・食べないものがはっきりしていて、外来種のナンキンハゼなどシカの食べない草や木が食べられず残った結果、大繁殖し世界遺産である春日山原始林含む奈良公園全体の生態系への影響が懸念されている。



まさに今の奈良公園はシカを中心に交通事故・プラスチックゴミ問題・食害・生態系の変化と現代の社会問題の縮図のようになっている。

まさかシカに着目して社会問題を突きつけられることになろうとはー


ただこれが現在進行形の奈良公園におけるシカの光と陰、全て現実なのである。
これら全てはシカの総頭数が増え、社会の変化による周辺環境が様変わりした結果であり、これからの時代どうこの問題と向き合うか今問われている。
奈良公園へ足を踏み入れる以上、観光客も他人事ではないと僕は思う。

画像2



これまでとこれから

シカ自身がこの問題のことを知っているのかは分からないけど、シカは言葉を話せないので、いつもつぶらな瞳で訴えかけてくる・語りかけてくる。
そんな気がしてこれまでシカさんにカメラを向けてきました


シカは可愛いし好きだから写真を撮っているけど、写真を撮ってシェアして可愛いね・綺麗だねで終わってその先の現実には目を向けずというか、そこまで考えたこともなかった。

奈良のヒトとシカの関係性とか距離感とか、シカの居る街の空気感みたいなものは本当に奇跡だと思うし、これからも変わらずあり続けて欲しい。

これが今求められるサステナブルな社会かー



ここまで書いておいて僕は奈良市民でも奈良県民でもない、
ただ奈良の街とシカが好きな人なんですが、僕に何ができるだろう。

まずそこから考えてみようと思う。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?