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CF(キャッシュフロー計算書)の図解 #会計の地図

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それではここから本文つづきです。

CF(キャッシュフロー計算書)

現金の使いみちがすべてわかる書類

会計の地図_3刷.016

会計の地図.098

会計の地図.099

会計の地図.100

CFは、現金の使われ方をみるためのツール。「現金を何にどれだけ使ったのか」を、営業、投資、財務の3つの分け方で考える書類だ。現金(キャッシュ)の流れ(フロー)を見るものなので、キャッシュフロー計算書。Cash flow Statementを略してCF(シーエフ)と言われる。

CFは、BSやPLと同様、財務諸表のうちの1つである。BSとPLは説明済みだから、これで財務諸表の3つがそろった。

「どのように現金を得て、何に使ったか」が丸わかり

CFは、BSやPLよりも歴史は浅い。日本では2000年に使われることになったもので、PL、BSとは成り立ちとして独立している存在だ。

CFによる現金の計算が必要なのは、PLで行われる利益の計算だけだと、実際に手元に残る現金の流れの把握が難しいからだ。現金が手元にないと会社は倒産してしまう。場合によっては「黒字倒産」といって、利益は確かに出ているんだけど手元のお金がなくなって、必要な支払いができずに倒産することも起こる。ちゃんと現金が十分に手元にあるか、適切に運用されているかを確認するために、CFは存在する。

それでは、現金の動きを把握するために、「営業」「投資」「財務」の3つに分ける理由は何だろうか。この3つそれぞれに意味がある。営業活動のプラスが大きければ、本業でしっかり稼いでいることが伝わる。投資活動のマイナスが大きければ、設備などにしっかり投資していることが伝わる。財務活動のマイナスが大きければ、負債をしっかり返済していることなどが伝わる。

現金の動きを営業活動、投資活動、財務活動の3つで分解すれば、その会社がどのように現金を得て、何に使っているのかがわかるのだ。

3つをつなげると「会社の意思」が見える

この3つは、それぞれを関連づけて考えることで、会社の活動の方針が見えてくる。たとえば、投資活動に積極的にお金を入れる(つまりマイナスになる)代わりに、財務活動で銀行などからお金を借りている(つまりプラスになる)場合、「今が攻めどきだ」と思って事業拡大を目指しているのかもしれない、と判断できる。

現金の動きをCFから眺め、自分の会社や競合の会社がどのような戦略で動こうとしているのかを読み取ってみよう。

「CF」を考えるための事例

会計の地図_3刷.018

90ページの負債のところで紹介した携帯各社を、CFの面から再度取り上げてみる。CFは前述の通り3つに分けられる。

まず、営業キャッシュフローは、3社とも共通してプラスになっている。つまり、3社とも本業でしっかり稼げているということが読み取れる。

投資キャッシュフローと財務キャッシュフローは3社ともマイナスだ。投資キャッシュフローは固定資産の取得や売却などによる現金の増減。財務キャッシュフローは資金の調達や返済などによる現金の増減。3社とも、投資して資産を取得し、負債をしっかり返済しているとわかる。

ただし、投資キャッシュフローと財務キャッシュフローを見ると、特にNTTドコモとソフトバンクが大きく違う。NTTドコモは投資が少なめで財務が大きくマイナス。ソフトバンクは投資多めで財務が少しだけマイナスだ。

これはどう読めばいいか。ソフトバンクは、90ページの通り有利子負債が多い特徴がある。これだけ投資の割合が大きいと、負債で調達したお金が投資に回っていると推測できる。実際、投資キャッシュフローが大きくマイナスになっている。これは株式会社ZOZOを子会社化するための株式購入によるものだ。また、財務キャッシュフローを見ると、支出として配当額などが増えたものの、有利子負債の収入(銀行からの借入金など)でまかなっていると見て取れる。ソフトバンクは、営業活動で得た現金と借入金を元手に、他社の株式を取得しながら成長していこうとする姿勢が読み取れる。

一方、NTTドコモは財務が大きくマイナスだ。なぜか。まず、投資キャッシュフローを見ると、マイナスで大きな割合を占めるのは資産の取得に関するもの。営業活動で得た利益を、本業に必要な資産を形成するための支出に回していることが読み取れる。一方で、その大きな支出を補う要因として、2005年から資本提携を行っていた三井住友カード株式会社との資本関係を解消し、三井住友フィナンシャルグループによる三井住友カード株式会社の全株式買い取りが2019年4月1日に実施されたことが大きい。その株式譲渡分の収入を得て、マイナスが小さくなった。

財務キャッシュフローを見ると、配当金の支払いや負債の返済によるマイナスに集中している。つまりNTTドコモは、ソフトバンクと対極的に、営業キャッシュフローで得た利益を投資キャッシュフローに投じることで本業をしっかり伸ばしていく一方、財務活動を通じて、借金を返済したり財務の健全化を進めている姿勢が見て取れる。

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「CF」まで埋まった。ここまで見てきたPL、BS、CFの3つは「財務3表」と呼ばれている。この3つは、実はつながっている。どんな関係なのかを、これから紹介していこう。

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