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〈起業家インタビュー②〉 インキュベーションマネージャーの存在が心強かった3年間

東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)卒業起業家インタビュー

株式会社スクルー  犬塚 亮 氏

〈犬塚 亮 氏のプロフィール〉
2003年に中堅ゼネコンの新規事業として子会社の立ち上げに参画。
2005年、株式会社イプロス(キーエンス子会社)に入社。営業職を経て2010年から運営するB2Bマッチングプラットフォームの企画部門責任者を担当。2016年6月、自身の二人の子供に様々な体験をさせたいという思いから株式会社スクルーを創業する。

2017年8月にTCICに入居し、2020年8月に卒業。

子供が選択できる社会をつくりたくて

ーー まずは、株式会社スクルーの設立の経緯について教えてください。

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犬塚:
子供の頃からいつか起業したいと考えてました。
前職(株式会社イプロス)に入社した時もなるべく上から下までの業務を一通り見られる会社規模が良くて選んだくらいで。その会社が成長し、だんだん人数が増てきたところで『会社を成長させるために必要な要素はなにか?』をだいたい理解したつもりになったので、そのタイミングで株式会社スクルーを立ち上げました。

事業の分野は何でも良かったわけでなく、会社設立前からテーマはずっと変わってないです。子供に対していかに社会の良い情報を提供するかを考えて事業計画を作っていました。

ある時、娘の習い事を探していて、子供の習い事業界にある古い商習慣に驚いたことがきっかけで自分の力で社会システムを変えてやろうと考えて生み出したのが今のスクルーの事業になります。

ーー スクルーの事業は具体的にはどういったものなのでしょうか?

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犬塚:
弊社は子供向けの習い事やアクティビティの体験プラットフォーム「スクルー」を運営しています。子供にとって自分にあった習い事を見つける仕組みが存在しないことが課題と考え、その解決のため、子供がもっと気軽に楽しく様々な種目の習い事やアクティビティを体験できる、そういったものが数多く販売されているマーケットプレイスです。

会社設立の前から習い事のポータルサイトはあったのですが、広告収益が成り立つビジネスモデルなこともあり、掲載されているのはどうしても大手教室が中心になっていました。個人で運営しているような教室がなかなか見つからないことに課題感を感じていたんですよね。

そのためスクルーでは、個人の小さな習い事教室でもスクルーのプラットフォームに参加できることいわゆる体験レッスンではなくて、もっと色んなレッスンを気軽に購入できるような仕組みをつくっていくこと、この2つがマストの要件になっています。

まだ道半ばですが、子達が幅広い体験を通して、大好きなこと、夢中になれることを見つけられるプラットフォームを目指しています。


インキュベーション施設の価値とはなにか?

ーー 犬塚さんは2017年にTCICに入居していますが、その時にTCICを選んだきっかけと決め手はなんでしたか?

犬塚:
TCICに入居したのは創業して1年くらい経ってからでしたね。それまでの1年間は自宅やコワーキングスペースで業務を行なっていました。初期のサービスがローンチするタイミングでメンバーが2人から3人に増え、創業資金の借入もできたので、そろそろオフィスが必要だと思って探し始めました。

当時は色々な物件やシェアオフィスを探していたのですが、賃料が高いとイニシャルコストも高くなってしまうし、そこまで広い部屋が使えなかったり、会議室もなかったりとなかなか良いと思えるオフィスが見つかりませんでした。

TCICを見つけたのは、その時にメンバーの一人が入居募集しているのを見つけたからです。

内見をしてみて、
・賃料が非常に安かったこと
・会議室があり、来客者と打ち合わせができる共有スペースも広かったこと
・パーティションではなく完全に区切られた個室であること

この3つが魅力でTCICに入居の申し込みをしました。


ーー入居してみての感想はいかがですか?
犬塚:
創業以来、初めて自分のデスクを持てたことにちょっと感動したのを覚えてます(笑)施設内は静かで仕事に集中できる環境でした。コワーキングスペースの時は混んでいて会議スペースが予約できなかったのですが、TCICでは複数ある会議室を自由に利用でき、来客対応にとても便利でした。

パーティションではなく、完全に区切られた個室はコワーキングスペースよりもメンバー同士のコミュニケーションが増えて、事業の成長にも貢献したと感じています。

ただ、より印象に残っているのは2つあります。
1つはTCICには起業家をあらゆる方向から支援するインキュベーションマネージャー(以下、IM)がいて、多岐にわたってサポートしてくれたこと。
もう1つは近くに同じ創業フェーズの起業家がいて話ができたことです。

創業から強い信念を持って事業を行なっていますが、
「自分たちの事業に本当に価値があるのか?」
「事業として成長していけるのか?」
「今やろうとしていることは正しいのか?」

こういった点は常に自信と不安の間を行ったり来たりしています。
その中で自社の事業をご理解いただいた上で、様々な経験から継続的にアドバイスをいただけることは精神的な面で非常に助かりました。この点は中小企業診断士のスポットコンサルのようなその場限りの関係では補えない部分だと思っています。

また、同じ創業フェーズの入居者の方々が近くにいて、同じように資金調達で悩んでいたり不安に思ったりしているのを聞くと「不安なのは自分だけじゃない!」と感じられることが助けになったこともあります。

3年間こういった環境に身をおけたのは、とても良かったと思っています。

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ーーIMの話が出たのでもう少し伺わせてください。IMがどんな役割なのか聞かれることも多いのですが、犬塚さんから見てのIMはどんな役割・存在でしたか?

犬塚:
私も入居した時はIMがどんな役割なのか全然ピンと来ていませんでした。
ただ入居して話をしていくうちにIMの方がスクルーの事業を非常に理解してくれて、『あの雑誌者に声かけて取材とってくるといいよ』とか資金調達のアドバイスしてくたりとか、社内のメンバーだけでは出ないアイデアや方法を教えてくれました。

専門家などに一度会ってアドバイスをいただくこともありましたが、IMの良いところは事業の進捗状況を把握しながら継続的にアドバイスをいただけるところです。アドバイス自体が参考になるのはもちろんなのですが、メンターのような方が近くに寄り添ってくれることが私にとっては非常に心強かったです。


ーーなるほど!では、入居していた3年間で印象に残っている出来事はありますか?

犬塚:
私はTCICで実施しているピッチに特化したアクセラレーションプログラム『TCIC Dash(現:TCIC Pitch Campus)』ですね。

入居してすぐにIMの方に、『参加するでしょ?』と誘われたのがきっかけだったのですが、入居した時はうちはまだ売上が少なくビジネスモデルも揺らいでいた時期でした。

実は誘われた時はどんなプログラムかも全くわからない状態だったんですけどね(笑)
それでも誘われてTCICのアクセラレーションプログラムで揺らいでいるものが少しでも前に進むならと思い参加しました。

参加してみて、弊社にとって2つ良いことがありました。
1つはアクセラレーションプログラムのメンターである方々と繋がりを持てて、そのメンター達に継続的に相談ができたこと。
もう1つは、TechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで2つの賞を受賞したことことです。

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(TechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで2つの賞を受賞した時の写真。スクルー様プレスリリースより)

この2つは結構リンクしているのですが、TCICのアクセラレーションプログラムとTechCrunch Tokyo 2017がちょうど同時期だったため、TechCrunch Tokyo 2017の練習をTCICのアクセラレーションプログラムで練習させてもらいました。

TechCrunch Tokyo 2017のピッチで賞をいただいたことは会社的には非常に大きかったです。色々なメディアに取り上げてもらったり、大手さんから提携の話をいただいたり、投資家に話をする時もとても話しやすかったです。

TCICのアクセラレーションプログラムのおかげでTechCrunch Tokyo 2017でのピッチが評価されて、その結果、資金調達だったり大手さんとの取り組みの話をいただいたりと会社の成長に大きく繋がりました。

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(↑2017年TCICアクセラレーション参加時の写真)

そういったこともあり、3年間でプラットフォームに参加していただく方の数が飛躍的に伸び、提携先も増え、資金調達まですることができました。


ーーこれはすごく良い流れですね!逆にもっとTCICがこうなったらいいなと思うところはありますか?

犬塚:
私も力不足で実施できませんでしたが、昔はTCICで『社長会』と呼ばれる入居者同士の交流会がもっと盛んにあったので、そういった文化を復活させたかったですね。
年に4回は事務局主催で交流会を実施してもらっていましたが、やはり25社の方全員と話すのは難しいというふうに感じてました。

入居者同士のつながりで事業シナジーがほしいとかそういうのではなくて、同じ立場の人が一緒に話す環境にあるというのは意外に大きいんですよね。


ーー最後にTCICへの入居を考えている方々に向けて一言ください。

犬塚:
まだ事業やビジネスモデルが揺れているような時、経営者1人だと事業面や精神面などかなり厳しいと思うので適切なメンターがいない方は入居したほうがいいかなと思いますね。

TCICには壁打ちの相手になってくれるIMの方々や、悩みを共有できる他の入居者がいるので、まだサービスがPMF(プロダクトマーケットフィット)に至っていないスタートアップ企業にはお勧めします。

ーーありがとうございました!!