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〈起業家インタビュー③〉支え合えるコンテンツ起業仲間と出会える場所

東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)卒業起業家インタビュー
株式会社Live2D  中城 哲也 氏

〈中城 哲也 氏のプロフィール〉
2006年Live2D創業、以来現在に至るまでLive2D関連事業に注力し、社員70名、世界50ヶ国で使われる技術に育てる。

TCICには2009年に入居し2012年に卒業。
2009年前半の規模拡張から、同年後半の破綻の危機、2010年以降の本格的な発展まで手厚くサポートいただきました。

日本発のオリジナル技術で世界に!

ーー まずは、株式会社Live2Dの設立の経緯について教えてください。

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中城:
大学2年ぐらいのときに、サークルで起業家精神というものに触れる機会があり、そこからビル・ゲイツなどに憧れ、ものづくりで少しでも世の中を良く出来たらと思い、起業を目指すようになりました。

30歳までの10年間在籍した前職のベンチャー企業、神戸の株式会社GTBでは、学生インターンから始まり、学生アルバイト、正社員、取締役と経営陣にまで加えて頂きましたが、やはり自分でゼロから勝負してみたいという気持ちが抑えられず、30歳になったタイミングで神戸から東京に出て創業しました。

ーー Live2Dの事業についても伺えますでしょうか?

Live2Dとは

中城:
2006年の創業以来、Live2Dというグラフィックス技術の開発と、Live2Dに関連するデザインやサービスなどに注力しています。

Live2Dは、最高品質のイラストを立体的に動かす世界最先端の技術として、2D表現の新たな可能性を切り開いて来たと自負しております。

これまでLive2Dは、ゲーム開発や映像制作などで幅広く使っていただいて来ましたが、最近では特に VTuber の表現技術として活用いただいており、万を超える数のVTuber で使っていただいているとのことです。

把握している限り、世界50カ国で利用いただいており、普及のペースは加速していっております。

創業時から、日本発のオリジナル技術で新たなマーケットを生み出し、世界に向けて輸出できるものを生み出したいという想いでいましたが、ここ数年で実際にそのようなステージになりつつあります。

辛い時期を乗り越え、良いタイミングで良い人と出会えた

ーー中城さんは2009年にTCICに入居していますが、TCICを選んだ決め手と入居してみての感想を教えてください。

中城:
TCIC入居以前も別の創業支援施設に入居していましたが、TCICというコンテンツ関連に特化した施設があると聞き、ぜひとも入居したいと思い申し込みました。

2006年に一人で開発をする形で創業しましたが、3年目ぐらいで開発した製品を事業化する段階となり、パートナーとスタッフが加わり、その時に借りていた場所が手狭になっていたタイミングでしたね。

入居してみて思ったのは、東京コンテンツインキュベーションセンターという名前の通り、コンテンツ関連の幅広い業種のスタートアップが入居しており大いに刺激を受けました。

また、そのような縁を取り持つための交流会やセミナーが定期的に開催されていた他、インキュベーションマネージャーが状況を定期的にヒアリングして、経営面のアドバイスや、TCIC内外の会社を直接紹介してくれたことで、事業を加速できたように思います。

ーーTCICに入居したメリットをあげるとしたらどんなことがありますか?その理由も伺えたらと思います。

中城:
いくつかありますが、まず当時のインキュベーションマネージャーから起業家としてのビジネスの基礎を教わったのを覚えいています。基礎的なところですが、請求や検収方法など当時は分からないことも多かったので、困ったことを都度相談していました。その結果として、人や企業、行政でやっている制度、助成金などもご紹介いただいていました。

あと、入居したメリットでやはり大きかったのはコスト面ですね。

ただ、私が一番のメリットに感じているのは、インキュベーションマネージャーが業界にも詳しいこと、そしてコンテンツ関連の起業家やクリエイターが入居していたことでした。前のベンチャー施設では業種がバラバラだったので、交流会といっても一般的な経営の苦労を話すような場だったのですが、TCICでは近い業界の方に絞られていて最先端の話題が飛び交ったり、刺激を受けたりと勉強させていただいたりすることが多かったです。

そのなかで、TCIC内に入居している他社の社長にアドバイザーになってもらうこともありましたし、協業したりもして、事業を加速させることが出来ました。会社がつぶれかけた時に連携した仕事で一緒に盛り上がっていた会社さんとは未だに仕事で頻繁に協力しあったり、時々飲みに行ったりする関係が続いています。

振り返ると、良いタイミングで良い人と出会えて順調に開発できたのだと思っています。

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ーー入居している3年間で一番良かった時と辛かった時はどんな時でしたか?

中城:
辛かったのは、事業を拡大しようと入居したものの最初の一年ぐらいは全く軌道に乗らず、どうにかかき集めた資金もショートしかけて、4人まで増えていたスタッフとパートナーに辞めてもらわざるを得なかったことですね。彼らには本当に申し訳ないことをしました。売上がほとんど無い状態で、どんどん資金が減っていく中、ギリギリこのタイミングまで給料が出せるというタイミングまで遅配無く給料を出しつつ辞めてもらって、一人に戻った2010年の正月前後が一番厳しい時期で、個人と会社合わせて30万ぐらいしかない状態までいったと思います。

良かったのは、その直後に、バンダイナムコゲームスのPSP用ゲームソフトに採用いただいたことでガラリと状況が変わり、一気に成長できる段階になったことです。

ーー辛かったときにどう乗り越えましたか?

中城:
一番辛かった時期は、お金が減っていく恐怖の中で、一人に戻って動けることも少なくなって、メンタル的にもなかなか厳しい状況ではありました。ただ、会社が潰れてしまうと、それまで育ててきた技術がゼロになってしまうので、技術の可能性を信じて、どうにか存続だけはさせようと思い乗り越えました。

ここで挫けたら、2D表現の進化の可能性が断たれてしまう」ぐらいの使命感のようなものがあったように思います。

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中城:
厳しい時期も、インキュベーションマネージャーには、色々相談に乗ってもらい、励ましてもらったり、色々な会社を紹介してもらったりしていました。

前のベンチャー施設では、インキュベーションマネージャーが常駐して相談に乗ってくれたりはしなかったのですが、TCICではインキュベーションマネージャーが施設に常駐して、会社のことを詳細に把握した上でアドバイスを貰えるので、一人に戻ったタイミングではとても心強かったですね。

ーーTCICがもっとこうなったらいいなと思うところはありますか?

中城:
施設の規模がもう少し大きくなって(できれば10倍とか)、より多様なスタートアップが入居して、連携を深めることが出来たら、より成功する企業が増える気がします。分野ごとにそのような大規模施設が出来たら、日本の成長に大きく貢献できる気がします。

ただ、今ぐらいの規模だから繋がりが強く、アットホームで良いという面もあるとは思いますが。


ーー入居を考えている起業家に向けて

中城:
私が創業した頃と比べると、スタートアップ向けの施設がとても増えているので、他と比べてどうというのは詳しく分かりませんし、今流行のオシャレなスモールオフィスと比べると無骨な印象ですが(笑)

コンテンツに近い業界で新しくて難しい事業に挑戦して、じっくりと落ち着いて成功を目指すなら、とても良い施設と思います。

ーーありがとうございました!!