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〈起業家インタビュー①〉TCICアクセラレーションプログラム参加から会社設立・資金調達・サービス構築までの怒濤の1年間

TCICアクセラレーションプログラム参加者インタビュー
Portl齋藤 大貴 氏

〈齋藤 大貴 氏のプロフィール〉
1992年生まれ。神奈川県藤沢市出身。東京理科大学卒業後、電機メーカーでの5G開発の経験を経て、2019年1月現在の会社を設立。

幼少期から見てきた船舶の稼働機会に対する課題感と、クルーザーオーナーの持つ課題感を肌で感じてきた経験から、クルーザーのシェアリングプラットフォームをメイン事業とする株式会社Portlを創業。
日本中で遊休資産となっているクルーザーをシェアリングで稼働資産へと変えていき、誰もが海を自由に活用できる社会の実現を目指しています。

Portl:https://www.portl.co.jp/


きっかけは「空想をカタチに!」

ーー まずは株式会社 Portl の設立の経緯について教えていただけますか?

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齋藤:
今の会社は、小学生の頃からの空想を叶えた会社でした。
うちは海の近くの川沿いに住んでいたので、河川に並ぶ船を見る機会があったんです。
そうすると、最寄り駅に行くために必ず毎日、船が目に入ってきて。

でも、動いてるのを見たことがなくて。小学生ながらに「動かさないともったいない」って感じていたのを覚えてます。すぐ近くにあるのに、遠い存在な気がしていました。

そんな遠い存在だった船ですが、中学生の時に、クルーザーのオーナーに船に乗せてもらうこともあって。
「日本に住んでるのに海を楽しまないともったいない」というのを教えてもらっていました。母親がサーファーだったこともあって、海に関連する知り合いは元々多かったんです。

この生まれ育った環境をキッカケに、漠然とした「もったいない」の想いが、「船(海)を身近な存在に変えていきたい」に変わっていき、誰もが海を楽しめるようになる船のシェアリングサービスを始めようと決意しました。.


ーー「Portl」はどんなサービスなのでしょう?

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齋藤:
「Portl」はインターネット上で船をチャーターできるサイトです。ボートをお持ちの方の「スキ」と、船に興味のある方の「乗ってみたい」を繋ぐプラットフォームになります。

例えば、湘南で船を持っている方がご自身の船をPortlで公開して、船の上で海水浴をしてみたいという方が予約をする。こういった人同士を繋ぐ役割を担っています。

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Portlで船をシェアするオーナーは当然、収益を目的とする方もいますが、船ならではのシェアする目的もあります。「若い方たちに海(船)の世界を知ってもらいたい」だったり、「ひとりだと船を出す機会がないから稼働する機会が欲しい」だったり、シェアする方が求めるのは、必ずしも収益だけではなかったりするんです。そのため、シェアいただく多く船はびっくりするほど低価格です。

他にも、楽しみ方の幅が広いことも特徴です。海はその土地の地形や、景観によって楽しみ方がまったく異なってくるので、船を持つオーナーが一番その海の楽しみ方を知っています。
そういった背景があり、サイトでは予約をする前にオーナーと直接楽しみ方や相談ができるような仕組みになっています。

勢いから参加して会社の設立へ。TCICアクセラレーションの価値とは?

ーーそんななか、 TCIC アクセラレーションに参加したきっかけは何だったのですか?

齋藤:
TCICのアクセラレーションに参加したのは、完全に勢いでした。当時から起業する決意はあったものの、家族も彼女も不安にさせるんじゃないかと躊躇していたんです。

当時を振り返ると、参加したのは勢いではあったものの、後押しして欲しいという気持ちと、この事業でスタートさせても本当に大丈夫なのかを確認したかったんだと思います。

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ーーなるほど。実際に参加してみてどうでしたか?

齋藤:
まず、起業に踏み切れました。
最終日にデモデイがあったんですけど、そこで投資家の方から「今ここにそのサービスがあったらすぐに出資したい事業だ」と言っていただけて、自信をもって起業に踏み切ることができました。

そして、アクセラレーションのプログラム期間中にまずはボートシェアリング用の保険を構築させました。
TCICアクセラレーションに申し込みをしたときにあったのは構想だけで、事業として始めるには基板がゼロの状態だったんです。
プログラム内でピッチをしてフィードバックをもらっていると、「保険はどうするの?」という声が多くあって、まずは保険を構築しないと事業は始められないとニーズを掴むことができました。

そこからすぐに保険会社に突撃してみました。結構断られましたが、最終的には日本初のボートシェア保険を構築していただくことができました。

ーーすごい行動力ですね!TCICアクセラレーション終了後、どんな結果がでましたか?

齋藤:
2019年にはなりますが、日本初のボートシェア保険を構築のほかに、ベンチャーキャピタルからの資金調達もしてもらいました。

実は、2018年にTCICアクセラレーションに参加して会社名を決めたくらいだったんですが(笑)1年後には『大手保険会社と提携して開発した包括保険を提供』と『資金調達』まで実施しプレスリリースを出しました。この元となったのがアクセラレーションで学んだことを実践していった結果だと思っています。


ーー行動だけでなく、1年で結果も出しているのですね。TCICアクセラレーションで学び実践した結果とありましたが、実際身についたことはどんなことなのでしょうか?

齋藤:
やはりピッチ力ですね。このプログラムで身に着けたピッチスキルは一生モノになりました。社長の仕事は必要な資金を集めることと、会社を成長させる人材を集めることなのでそのどちらでも大活躍しています。
これまでに色んなインキュベーション、アクセラレーションに参加してきましたが、ピッチスキルを伸ばすプログラムはなかった気はします。

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(↑2018年TCICアクセラレーション参加時の写真)

ピッチは、採用でも資金調達でも広報でも、すべてのベースとなるものなので、あまりフォーカスされませんがすごく重要な要素だと思っています。創業前、一番初めにピッチのスキルを身につけておけば、その後の加速度は確実に変わるはずです。

ーー一生ものっていいですね!確かに話し方1つで加速度は変わってくるかもしれないですね。具体的にTCIC アクセラレーション後に参加したことが役に立ったと思った瞬間はありましたか?

齋藤:
決められた時間で、ピッチを終わらせることができた時はいつもプログラムに感謝をしています。スタートアップを立ち上げると、ピッチをする機会が本当にたくさんあります。そして必ず制限時間が定められていて、時間を少しでも過ぎると強制的に終了になります。

たくさんの人にピッチをする機会で、伝えたい情報が伝えられずに終わってしまうのはもったいなさ過ぎます。タイムキープはできて当たり前と思われがちですが、発表のスライドを2枚くらい残して終了になってしまっている人はよくいる印象があります。この時間感覚は、経験の数でしか鍛えられないので、練習という名目で繰り返しピッチをできるこの機会は想像以上に意味のあるものだと思います。
今では3分、4分、5分の3タイプのピッチ資料を作成して、誤差7秒以内には調整できるようになりました。

あと、参加から1年後の2019年にメンターとしてTCICアクセラレーションで講義をさせていただきましたが、参加者の方から初めて『自信満ちあふれている』と言われたのを覚えています。

ピッチの価値は、やってみないと価値を感じづらくて、やらなくても事業は始められるので後回しにしやすいですが、間違いなく初めに身に着けておくべきスキルだと思うので、是非多くの人に受講をおすすめしたいと思いました。


ーースキルを身につける以外で齋藤さんにとってTCICアクセラレーションが良かったと感じるところはありましたか?

齋藤:
少人数での受講なので、参加者と仲間意識が生まれていくのが良かったです。
10人くらいの規模感になるとコミュニケーションを取り切れない人が出てしまって、深い関係になりづらいですが、当時は同じフェーズの5人だったので、すぐに相談しあえる関係になることができました。今でもその時の参加者とは交流がありますよ。

あと、これはアクセラレーションというよりTCICの印象なのですが、インキュベーションマネージャーを含めてウェットな付き合いだと感じています。アクセラレーションプログラムだけではない付き合いを今でもさせてもらっています。創業時から一緒につくっている感覚があり、どこかで創業メンバーのように考えているんだなと。
個人的にはTCICでは失敗が許されるから本音をしゃべれていました。どうしても他のプログラムだと完璧を求められるように感じがあって。プログラムの役割の違いかとは思いますが、今でも仲良くできて心強いですよ。


ーーそんなに言っていただけるのは嬉しいですね!逆にもっとTCICアクセラレーションがこうなったらいいなと思う点はありますか?

齋藤:
特にないですね(笑)あ、でもしいて言うならであれば1つあります。せっかくアクセラレーションは良いプログラムを組んでいるのでもっとみんなに知ってもらえるように開けた明るい雰囲気作りをできるといいなと思いました。閉じてやっているように見えるのが個人的にはもったいなく感じています。


ーー最後にこれからTCICアクセラレーションに参加する方に向けてコメントお願いします。

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(↑2018年TCICアクセラレーション参加時の写真)

齋藤:
素直にフィードバックを聞いて、即行動ができるかどうかで、参加する意味があったかどうかが決まってくると思います。

フィードバックの中には事業の根本を変えなくてはいけない内容もあったりして、コメントを否定してしまえば簡単なのですが、何度も言われるコメントは乗り越えるべき課題なので、「来週までには解決策を持ってこよう」とすぐ動くようにしていました。

繰り返しダメ出しを受けていると反論をしたくなるのは当然だと思いますが、TCICアクセラレーションは起業家にとってはボランティアに近い形で運営していて、フィードバックはすべて起業家の成長のためです。
一度スタートすると事業の根本に対するアドバイスを受ける機会は少なくなるので、完璧ではないことが許容される今のうちに事業を見つめ直すと良い機会になると思います。