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初めてレゲエのイベントに参加した話 横浜レゲエ祭 THE FINAL -VIBEZ OF YOKOHAMA-

人生初のレゲエイベント

まず大事なことをお伝えすると、今回の横浜レゲエ祭は私にとって人生初のレゲエの現場であった。
ロックやパンク、スカといった音楽に多く触れている私がレゲエにハマったのは本当にここ1年くらいのことで、ようやく初めて現場でその文化を体感することができたのだ。


変な物言いにはなるが、レゲエは私にとってずっと「ハマってみたい」音楽だった。
というのもパンクやスカを聴いているとレゲエの要素に触れる機会があるし、ハードコアパンクのローカルショー終わりの中打ちでラヴァーズロック等の緩く暖かいレゲエがかかることが多かったりと、私にとってレゲエは身近なものではあった。
しかしあと一歩が踏み込めない、そんな距離感の音楽だったのだ。

明確なきっかけは覚えていないが、1年くらい前にYoutubeでなんとなくレゲエのことを調べたら大阪のレゲエサウンドRed SpiderのJunior氏がレゲエの文化を解説する非常にありがたい動画がたくさん出てきて、それらを観ることでレゲエの基礎的な知識を得た私はどんどんその独自の文化にハマっていくこととなった。

レゲエはとても面白い音楽だ。
ロックやポップスの世界ではバンドやグループがオリジナル曲を持ち曲として、音源やライブという形でそれらを披露する当たり前のサイクルが基本だが、レゲエにはリディムやダブプレートやサウンドシステムといったそのサイクルとは違う独自の文化があり、それらに私は大いに惹かれていった。

しかしいくら文章を読んだり動画を観たりしても、やはり現場で実際に体験しないことには始まらない。知識だけじゃなく経験が欲しくなった頃、最後の横浜レゲエ祭開催の知らせを見た。

MIGHTY CROWNのファイナルシーズン

フェスを主催するMIGHTY CROWNはこの夏をもって30年以上に渡るサウンド活動を終了し、その後はプロデュース等の裏方的活動を考えているとのことだ。
そんな彼らのファイナルシーズンを飾る大きなイベントの一つが今回の横浜レゲエ祭 THE FINAL。
サウンド活動も終わり、主催のフェスも今回で最後。
まさに有終の美を飾るべく、集大成と言える催しを仕掛けているわけだ。

横浜、日本、どころか世界を代表するレゲエサウンドである彼らの存在は私も以前から知ってはいた。
AIR JAMへの出演等からロックやパンク界にも名前が知れ渡っているし、その圧倒的な功績から音楽界においてシンプルに有名な存在でもある。

しかし彼らがどのような存在かというと、そこは把握できていない人が多いと思う。
レゲエのファン以外にとってはサウンドというレゲエ独自の活動形態は正直よく分からないし、レゲエの世界チャンピオンって言われてもそれってどういうことなの?という感じだろう。
事実私がそうだった。

しかし色々と知識を得ていくうちにMIGHTY CROWNの功績のその震えるほどの凄まじさが徐々に理解できたし、同時にそんな彼らが私の地元である横浜を代表する存在であることをとても誇らしく感じるようになった。

彼らのサウンド活動終了前に出会えてよかった。
ギリ間に合った。


横浜レゲエ祭 THE FINAL
-VIBEZ OF YOKOHAMA-

2023年6月24日と25日の2日間、最後の横浜レゲエ祭は横浜赤レンガ倉庫にて盛大に行われた。

圧巻のフライヤー

横浜レゲエ祭は1995年にクラブでの室内イベントから始まり、2000年代には八景島シーパラダイスや横浜スタジアムを使った大規模な野外イベントへと成長した。

個人的にも2006年以降の横浜スタジアム開催のフライヤーは覚えている。
当時中学生だった私の記憶にも残るほど、横浜市民の多くが「横浜レゲエ祭」の文字の圧に食らっていた。

それ以後は会場を川崎東扇島公園やパシフィコ横浜に移して開催されたが、2017年を最後に開催は止まっていた。
しかし今回MIGHTY CROWNのサウンド活動終了に伴って、最後の横浜レゲエ祭の開催が発表されたのだ。

長くファンでいる方々にとっては嬉しい知らせながらも、そのタイトルのTHE FINALの文字には複雑な思いもあったことだろう。

当初は2日目だけの参加を考えていた私はアーティストの日割りを見てやはりその全てを体感したくなり、初のレゲエ現場ながらいきなり2Days参加を決めた。

横浜赤レンガ倉庫

横浜の赤レンガ倉庫はフェスの数が急激に増えたここ数年で、フェス会場の定番の一つになった。
奥の海沿いの公園のエリアのみを有料のライブスペースとし、その手前の出店やミニステージのエリアは無料とすることでフラッと立ち寄ったお客さんも遊べるようにするスタイルはとても効果的なように思う。
フェスティバル本来のフリーなお祭り感がしっかり出るし、人がライブの来客数以上に集まるため出店するフードや物販の売上も多く見込めるのだろう。

実は私もちょいちょいフェスが開催される日に赤レンガに行って音漏れを聴きつつフードや人の集まりを楽しむなんて遊びをしてきた。
だからここは慣れた会場ながらも、ちゃんと有料エリアに入るのは実はかなり久々だったりする。
その点も含めて楽しみだ。


6/24(Sat)

天気予報を見ると梅雨の季節などなんのその、両日ともに雨予報なし。
この時点で何かの波動を感じる。
天からの祝福もあり、とんでもない2Daysになることが確定した。

やってきましたレゲエ祭


会場のライブエリアのオープンは13時。
物販は朝10時から。

12時手前くらいに会場に着いてスムーズにリストバンド交換をし、その後甘い気持ちで物販に並んだら1時間以上並んだ挙句に欲しいものの初日分は全部売り切れ。
翌日の朝早くからの出動が決まった。

フェスグッズ一覧
MIGHTY CROWNグッズ一覧


物販列を抜けたところでもう会場はオープン済みということで急いで中に入る。
いよいよ初のレゲエ現場だ。

エリアマップ


初サウンドシステムの衝撃

まずはSOUND SYSTEMエリアへ。
そこでオープンからダブワイズを全開でぶっ放すMIGHTY CROWNのCojie氏所属のSCORCHER Hi-Fiの音を食らう。

これがMIGHTY CROWNのサウンドシステム
城みたい

ライブハウスの爆音に慣れている私ではあるが、レゲエのサウンドシステムの音は「内臓が揺れる」とか「近くに行くと呼吸がしにくい」など恐ろしい表現での説明を事前に聞いていたため、正直ビビっていた。
結果、見事にその通りで圧倒された。

とにかくローの威力が凄い。
ズンズンと響くキックとベースラインに合わせて着ているTシャツと内臓が揺れ、手に持つドリンクが波打つ。

しかしその音全体を聴くと、ローによる身体への物理的な攻撃力は異常ながらも耳に痛い爆音ではなく、強調したい帯域がしっかりと意識された音作りがなされていた。
これがレゲエの音なのだと、早速現場での学びがあった。


物販の都合で入場が遅くなったため、SCORCHER Hi-Fiのプレイは少ししか聴けなかったことが残念。
こちらも明日取り返すこととなる。

ライブ

メインステージでフェス開催の狼煙をあげるのは主催のレゲエサウンドMIGHTY CROWN。
ロックのフェスだと機材転換の都合とかもあって主催のグループがトップバッターを飾ることはなかなかない。そこにはDJやサウンドのフットワークの軽さの強みを感じた。
クレイジーケンバンドのタイガー&ドラゴンのダブプレートも飛び出し、流石の盛り上がり。

フロアの観客が掲げるガンフィンガーやガンショットも私にとっては初のものだ。
文化を生で体感できるのは現場ならでは。

RUEEDのステージには実兄である窪塚洋介氏も登場したり、流石の人気のJ-REXXXはチョコレートプラネット松尾氏をステージに招き入れたり、最後にはジャパニーズマゲニーズを迎え入れて『最後の一本』を披露したりと早い時間からかましまくりだ。

YARZやHUMAN CRESTのレゲエサウンドのプレイを観ると、MCで大いに煽りながらとっておきのダブプレートをガンガンかけている。
曲の頭数秒だけをひたすら矢継ぎ早にかけていくスタイルはとても面白い。
他ジャンルから来た自分にはとても新鮮で最初は戸惑ったところだが、徐々にレゲエのノリが掴めてきて楽しくなってきた。

17:25頃にはMIGHTY CROWNが自身のサウンドシステムを使う最後のプレイがあった。
曲をかける時に「たくさんかけてきたこの曲もこれで最後」という旨の言葉が彼らの口から何度か出た。
私は最初で最後を噛み締めて楽しむものの、ベテランのお客さんたちはやはりどこか寂しそうだ。
それでも盛り上がりはエグく、いわゆる鬼ボスを起こして彼らは去っていった。

MIGHTY CROWN最後のシステムを使ったプレイ


ここからメインステージでは初日のラストまでベテラン勢によるプレイが行われた。
それらのバックバンドを務めるのはHOME GROWN。
シンガーやDeeJayのローやプロップに的確に応えながらグルーヴのある演奏を続けるという凄まじい芸当をやってのける、説明不要の素晴らしいレゲエバンドだ。

レゲエにハマる前から好きだったRANKIN TAXI氏は期待通りの曲をやってくれた。
70歳が歌う『CCPP』は痛快だったし、『実の娘をナンパ』ではまさかのご本人が登場した。

特筆すべきはHAN-KUNのステージ。
ともにレゲエを背負いながらもそのスタイルとやり方の違いから確執のあった湘南乃風とMIGHTY CROWNが長い時間を経てお互いを認め合い、こうして手を組む。
このフェスの直前にリリースされた『傷が絆に』はとても意味合いの強い曲だ。
ステージ上でもHAN-KUNとMIGHTY CROWNが握手を交わす。
バックステージにも湘南乃風から差し入れがあったとのこと。

HAN-KUNとMIGHTY CROWNが同じステージに



SAMI-T氏の「唯一レゲエでオリコン1位を獲った男」という紹介で登場したDOZAN11 aka 三木道三。
この日のラスト、日の落ちて暗くなった会場に暖かい音と美声を届けたPUSHIM。
レゲエとは情熱も優しさも同じ次元の中で表現できる音楽なのだと感じた。


こうして初日は終わった。
レゲエのイベントの楽しさを初めて体感できた記念すべき日になった。
明日もあるなんて最高。


6/25(Sun)

先述の通り前日は目当てのグッズを買えなかったため、しっかり早起きして10時の物販開始前の9時過ぎくらいには列に並んだ。
10時半頃にようやく目当てのタオルとTシャツを購入。

フェスのタオルと、横浜の夜景にMIGHTY CROWNのロゴが乗った最高のTシャツ


物販の後は野毛のどこかにあるという巨大なウォールアートを探しに行った。
MIGHTY CROWNからの僅かなヒントを元に無事に見つけることができた。

息を呑むほどのアートワーク


そうこうしているうちに、フェス2日目にして横浜レゲエ祭最後の日のライブが始まった。
13時のオープンとともにスタッフの指示に従って走らずに中へと進んでいくと、SCORCHER Hi-Fiがあの強烈な爆音で我々を迎えてくれた。

MIGHTY CROWNの渋さ担当と言えるセレクターCojie氏はとても知性を感じる人物だ。
彼と、活動休止中のFIRE BALLのSticko氏が組んだSCORCHER Hi-Fiはレゲエの知識が浅い私にもサウンドというカルチャーの渋さを感じさせてくれた。

ステージを見るとターンテーブルは1台のみのようで、セレクトしたレコードを丁寧に拭いてからセットしている様が伺えた。
加えてアンプの調節もステージ上で行っているようで、その横でリバーブのかかりまくったマイクでMCをする。サウンドエフェクトも初めて聴くものだった。

詳しいことは分からないが、とにかくかっこいい。
私は一気に彼らのファンになったし、サウンドシステムの歴史をもっと知りたくなった。

SCORCHER Hi-Fi


メインステージではYouth of Rootsが暖かいバンドサウンドを鳴らし、私と同世代のサウンドのJiggy Rockが熱いMCとセレクトで大量のガンフィンガーを産み、ralphやLEXら横浜エリアのラッパーによるヒップホップのセクション、レゲエの若手のホープZendamanと熱いステージが続く。

そしてサウンドKING LIFE STARによるプレイの後は前日と同じくHOME GROWNをバックバンドとしたベテラン勢のライブが始まった。ジャパレゲを語る上で欠かせない面々がMIGHTY CROWNへの愛を持ってステージを繰り広げる。

今やヒップホップファンにも強く存在を示しているCHEHON、JUMBO MAATCH氏所属のMIGHTY JAM ROCKと続いたところでアーティストのライブの大トリはRYO the SKYWALKER。

前日からそうだが、全ての出演者がMIGHTY CROWNへの感謝と敬意を大いに示していた。
そんな全ての想いが集まった会場に、いよいよMIGHTY CROWNが登場する。

MIGHTY CROWN FINAL ROUND

ド直球でいく。
泣いても笑っても最後だぞ。
そう宣言し、矢継ぎ早に曲をかけていく。

正直レゲエ初心者の私は彼らのアンセムをあまり知らない。
それでもT.O.KのI Believeや一連のプロペラチューンなど知っている曲がかかったことが嬉しかった。

彼らと、彼らを信じてついてきたファン達にとっては一つ一つの思い出と決別していくような、そんな時間だったのだろう。
MIGHTY CROWNの圧倒的な盛り上げ方を前にフロアはひたすら沸き続けていたが、どうしても寂しさが見える。
自分も経験があるが、解散や脱退前ラストのライブってどうしてもそうなるよな。

説明するには私があまりにも無知なためここでは詳細を述べることはしないが、数人のゲストが出てきた。
その中でも最後に出てきたFIRE BALLは私も知っているし活動休止中であること、そして復活が望まれていた存在であることも把握していた。
そんな彼らがSEとともにステージに現れた瞬間は、割れんばかりの大歓声が巻き起こっていた。

FIRE BALLのパフォーマンスを経て、MIGHTY CROWNが最後にかけた曲はJimmy Cliff『Many Rivers To Cross』のダブプレートだった。
2006年の横浜レゲエ祭の映像の観客一人一人の携帯の光がスタジアムを照らした感動的な場面でかかっていた曲だが、それが今回の最後の曲。
スマホのライトで埋め尽くされるフロア。
ステージからの光景はそれは素敵なものだっただろう。


最後にSAMI-T氏が涙で言葉を詰まらせながら、実兄であり最大の相棒であるMASTA SIMON氏にリスペクトを送った瞬間はまさにハイライトだった。


こうして横浜レゲエ祭、MIGHTY CROWNの地上でのプレイは終わった。
歴史に幕が降りた瞬間ではあったが、未来へと繋がる希望に満ち溢れたエンディングであった。

MIGHTY CROWN


最後に

まず、本当に横浜レゲエ祭に行ってよかった。
純粋に楽しい文化的なお祭りだったし、さらに未来への希望と個人的な学びもたくさんある素晴らしい時間を過ごすことができた。

冒頭で話したようにレゲエに出会うまでには時間がかかってしまったが、そんなの今となってはもう気にならない。
この音楽と文化は、これから長く付き合うこととなるだろう。



ジャパレゲのシーンは、かつてのように再びメインストリームに返り咲くことを目指して一丸となって戦っている。
かつて流行した事実があるからこそ、現状に対する悔しさもあるのだろう。

しかしヒップホップシーンにレゲエDeeJayが参加する流れも増えたし、事実私のようにレゲエに新たに出会った人も確かにいる。
ここから確実に、更なる流れができるに違いない。

音楽も動画も、観たり聴いたりするだけならほぼタダみたいなもんの現代。
オープンな感性を持って未知の文化へと興味を進めていけば多くの知見を得ることができる、そんなチャンスに溢れている最高の時代だ。
みなさんにも新たな楽しみとの出会いがありますように。



MIGHTY CROWNとスタッフの皆さんへ最大級の感謝とリスペクトを。

ありがとうございました。

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