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イラン史上初の女性五輪メダリストが亡命で考えたこと

2016年のリオ五輪テコンドー女子57キロ級で銅メダルを獲得し、イランの女子選手として初の五輪メダリストとなったキミア・アリザデ選手(21)が今年1月11日、イランからの亡命を発表しました。

SNSで体制批判

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キミア・アリザデ選手は自身のインスタグラムで「私は歴史を作ったわけでも、英雄でもない。私はイランで抑圧されている多数の女性の一人だ」と書き込み、女性の権利を抑圧するイランの体制を批判しました。そのうえで、イランの女性が外出する際に着用が義務付けられている「ヒジャブ」を指し、「私は着ろと言われたものを着てきた。そして言えと言われたことをそのまま繰り返した」「彼ら(体制)にとって私は道具にすぎず、メダルだけが重要だった」とイランの体制がスポーツを政治利用しているとも非難しました。

「この決断は金メダルを取るより難しかった。でも私はどこにいてもイランの娘だ」

実際に試合の際には、慣習に従って、テコンドーのユニフォームを着用しながら、防具の下にヒジャブを巻いて出場していました。

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ヒジャブって何?調べてみた

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アリザデ選手も巻いているヒジャブは、日本でもイスラム教徒の観光客らが巻いているのを見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

イスラム教徒の女性はなぜ髪の毛や肌を露出しないのか。

女性は、身内以外の男性に、美しいとされる部分は見せないようにする、というイスラム教の聖典コーランの教えに基づくものだと言います。

イスラム教徒ではない私は、夏場は暑そうだな。なんて考えたりしましたが、通気性のいい、軽い素材のヒジャブも売られているそうです。

さらに、黒をイメージしがちですが、最近は様々な柄のヒジャブがあります。こちらの女性は何十枚も持ち、インスタグラムにあげています。

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イランは厳しく、法律で、女性は9歳以上になると学校を始め外出する際はヒジャブを着用しなければならず破った場合は10日から2ヶ月の懲役、もしくは罰金が科されます。外国人旅行者にも適用されるようです。

イランのアスリートとヒジャブ問題、他にも

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亡命を発表したアリザデ選手以外にも去年4月、フランスで初めて試合して勝利した、女子ボクシングのサダフ・ハデム選手(25)がヒジャブを着用していなかったことが問題視されイラン当局から逮捕状が出ているとの情報を受けいまだ帰国していません。

また、アスリートではないですが、上海で行われたチェスの国際大会で審判をつとめたイラン人女性もヒジャブをつけてなかったことが発覚、帰ることができていません。帰国すれば拘束されるだけでなく、むち打ち刑を受ける可能性もあると言います。「自分に嘘をついてまでヒジャブを着たくなかった。後悔はしていない」と語る一方で、家族や友人にさよならも言えなかった、と涙を流していました。(BBC報道)

でもそんな話だけではありません。イランでは、去年10月、それまで禁じられてきた一般女性によるサッカー観戦が40年ぶりに認められたのです。男性の席とは2メートルの柵で隔離されてはいたものの、ヒジャブを巻いた、およそ300人の女性サポーターが詰めかけるなど盛り上がりを見せ、女性の権利拡大の一歩になると期待の声も上がりました。

日本とイランを比べてみる

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文化や習慣の違いを感じる方もいるかもしれません。しかし、日本も実は一定分野で遅れをとっています。世界経済フォーラムが発表した、男⼥にどれだけの格差が存在しているかを分析したジェンダーギャップ指数を見ると、日本は153か国中、121位と先進国の中では最下位でした(イランは148位)。特に女性の政治参加度の低さは顕著で、政治における男女平等ランキングも日本は144位と、イランの145位より1つ上なだけなのです。

ちなみに新型コロナウイルスの感染が確認されたことでクローズアップされたイランの副大統領は女性です。

世界と比べてみる

たとえば国会議員の男女比。世界の女性議員の平均は25%なのに対し、日本は10%、つまり世界は4人に1人の議員が女性ですが、日本では10人に1人だけです。さらに経済分野でも、女性が占める管理職の割合などで世界平均を大幅に下回っているのです。

みなさん、この現状について、どう思いますか。詳しいランキングは、Global Gender Gap Report 2020で。


遠藤さん

デジタル編集部 遠藤 弥生 記者

約10年間外信部で国際ニュースを担当後、2019年より現職。気になるネタを追ってSNSで発信しています。趣味はピアスを買うこと。