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あの頃のように…🌸

娘がまだとても小さかった頃、平日二人でよく近所の川に遊びに行っていた。手作りの小さいポシェットに小型絵本を入れて、お気に入りのパンを買って、ピクニックシートを持って…。手をつないで川まで歩いて行った。お天気がいい日には、一人で川原で本を読んでいる人や、絵を描いている人、楽器を練習している人もいる。そんな人たちを見ながらピクニックシートの上で小型絵本を広げたり、暑い日にはご近所の小さい子供たちやワンちゃんに混じって川に入ってはしゃいでいた。でも、その川が一番すてきな季節は春なのだ。川の両岸に並ぶ桜が満開になる季節、のんびりとお花見をして、散ったばかりの桜をお土産に、手をつないで家路についた。その頃、娘が住んでいる世界はまだとても小さくて、不安や悩みもなく、きっと外で遊ぶだけで幸せだった。

そんな娘も成長して、当たり前だけどすごく楽しい日もあり、とても悲しい日もあるのだろう。人と比べて劣等感を感じたり、自信をなくしたりすることもきっとある。それでもかすかな光を求めたり、自分を奮い立たせたりもするのだろう。でも…、母である私はそのすべてを知らない。いや、何も知らないのかもしれない。ただそばにいて、その心の中を想像するだけだ。そして毎日笑ったり、ケンカしたりすることしかできない…。

新型コロナウィルス感染症の感染拡大で、本当ならランチに出かけたり遠出をしたい春休み、久しぶりに二人で川に出かけた。単行本を持って、ハンバーガーを買って、ピクニックシートを持って…。桜並木は満開で、初夏のような陽気のその日、ご近所の小さい子供たちやワンちゃんは川に入ってはしゃいでいた。すると、娘がゆっくり話し出した。「私…、小さい頃の人見知りがなおったと思ってたけど、なおってないんだと思う。大学行くの、ちょっと緊張するな…」そこにはいつもの強がりの娘ではなく、素直な娘がいた。私は、ものすごく人見知りだった昔の娘を思い出して笑ってしまった。そして二人で昔話をして、大笑いした。とても懐かしくてやさしい時間だった。

その日の帰り道、さすがにもう手はつながない。今は満開の桜も散ってしまった。でも、これからももっともっと二人で川に行きたいな…と思っている🌸




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