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「Day to Day 」~失われた日々を取り戻す~

2021年11月20日現在、新型コロナウィルス感染症の新規感染者数は減少している。
この1年半あまり、落ち着かない日々が続いた。

最初は私も在宅勤務となり、「おうち時間」が新鮮だった。リモートワークの主人とオンライン授業の娘のために、ちょっとテンションが上がりそうなランチを用意したり、3人でベランダでお茶を飲んだり…、なんとか楽しくやろうとしていた。
そのうち緊急事態宣言が発令されたり解除されたり…。娘はずっとオンライン授業だったが、私たちは職場に行ったり行かなかったり…
いつ頃どんな状況だったのか、離れて暮らしている実家の母に会えたのは去年だったのか今年だったのか…。今はすぐにはきちんと思い出せない。
コロナ以降の日々が、すっぽりと抜け落ちてしまったかのようだ。

「Day to Day」は、コロナ禍に集まった日本を代表するような100人の小説家のショートショートやエッセイを日付順に収録した1冊だ。2020年4月1日以降の日本を舞台に、1人1日ずつショートショートやエッセイを、100日間のリレー形式で収められている。その著者の顔ぶれの豪華さには驚かされる。

この本のページを1日1日と読みすすめていると、不思議とホッとしている自分に気がつく。収録されている作品はフィクションだったり、エッセイだったり、中にはどちらかわからないものもある。日付ごとに綴られてはいるが、正確な記録でもない。それなのに…、実際の自分の抜け落ちた日々が、空っぽになってしまった1年半あまりの日々が、ぼんやりと輪郭を表してくるような感覚になるのだ。

楽しいはずの娘の若い日々が奪われる悔しさや、高齢の母が淋しい日々を送っていることへの悲しい気持ちがよみがえってくる。それでも、なんとか乗りきろうと工夫していたことが少しずつ思い出される。なかったことにしたままでは、前には進めないから…

今日も1日1日と日々を取り戻すためにページをめくっている。

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