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企業に社会性(社会課題解決性)が求められている? 地域の事業者と伴走する「休眠預金活用事業」の現場から見えてきたこと①

こんにちは。トラストバンクの休眠預金活用/ソーシャルイノベーションデザイン室の元岡と申します。
トラストバンク≒ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」のイメージをお持ちの方もいらっしゃることかと思いますが、弊社では、ビジョン「自立した持続可能な地域をつくる」の実現に向け、「ふるさとチョイス」以外にも地域にフォーカスを当てた様々な事業を展開しています。

参考リンク先|【知ってる?】民間企業初!「休眠預金活用プロジェクト」 ――事業者と一緒に作っていく”持続可能な地域” (2023年9月 TB Base)

私たち、休眠預金活用/ソーシャルイノベーションデザイン室では、JANPIA(正式名称:一般財団法人日本民間公益活動連携機構)から資金提供を受け、地域でビジネスを営んでいる事業者さんと、「新しい製品やサービスで『地域の課題解決』と『持続可能な収益性』を同時に叶えられるようなソーシャルビジネス(※)をつくり、実行まで併走していく」プログラムを提供しています。
※:弊社ではソーシャルビジネスを「社会性(社会課題解決性)と収益性(自主的な事業継続性)の二つの価値が両立した事業」と定義
 
この事業者伴走プログラムで、地域の事業者さんと一緒にソーシャルビジネスづくりを進めるなか、こんな疑問が湧いてきました。

「地域の課題解決≒社会性(社会課題解決性)って、どうやって獲得(証明)すればいいの?」
 
CSRやCSV、SDGsに始まり、ベネフィットコーポレーション、ソーシャルイントラプレナー、ESG投資、パーパス経営、サステナブル経営…などなど、企業の社会性(社会課題解決性)に関するパワーワードが行き交うなかで、企業はどのようにして社会性(社会課題解決性)を証明していくのが最適なのでしょうか。
そもそも営利を目的として設立するとされる企業が、なぜ社会課題解決の事業に取り組むのでしょうか。
 
この地域創生ラボnoteの連載では、海外を含む企業の社会課題解決/非営利活動の事例と、私自身が現場で得た示唆を基にしながら「企業が社会性(社会課題解決性)を獲得する術(すべ)」を考察していきます。

「社会課題を解決する事業を実施してみたいと思っていた」
「会社で社会課題を解決する事業を提案してみたけど、社内でなかなか受け入れてもらえない」
「会社で社会課題解決の事業を始めたのだけれど、社内外から何の役に立っているか聞かれ、先細りしていきそう」
 
企業の社会性(社会課題解決性)が問われる時代に、こんな悩みをお抱えの方もいらっしゃると思います。私も休眠預金活用/ソーシャルイノベーションデザイン室をつくる過程で、近しい悩みを感じていました。今回の記事がこんな悩みをお抱えの方々の一助になれますと幸いです!
 
では、「第1回 企業に社会性(社会課題解決性)が求められている?」から始めていきます。

企業に社会性(社会課題解決性)が求められている?

出典:書籍「理念経営2.0 ─会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ (著者:佐宗 邦威 氏 /2023年5月 ダイヤモンド社 出版)」より一部弊社にて改変

前述の通り、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)やCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)、SDGsに始まり、ベネフィットコーポレーション、ソーシャルイントラプレナー、ESG投資、パーパス経営、サステナブル経営…といった社会性に関連するパワーワードがビジネスの世界にとどまらず、世の中に飛び交っています。記事を閲覧中の皆さんも、上記の言葉を何度もご覧になっていることかと思います。
パワーワードが行き交うようになった背景は環境問題や社会情勢など国々で様々ですが、共通して言えることは「企業に従来から求められてきた営利性に加えて、『非営利性≒社会/地域にどのように貢献するか』が求められるようになった」ということです。 
上場企業の経営者は特にこの要請を身近なものに感じられるかもしれません。上記の出典図の引用の通り、経営者は会社に関わるステークホルダー(利害関係者)から社会性(社会課題解決性)への強い要請を受けていて、その要請に応えることが義務化されてきていると言っても過言ではありません。
私たちが休眠預金を活用して取り組んでいる「地域事業者へのソーシャルビジネス形成の伴走プログラム」の公募結果が、この要請への具体例となるかもしれません。

出展:ともに公募結果の公表|休眠預金を活用した支援先事業者の公募 (2023年5月 トラストバンク コーポレートサイト)より抜粋

上記の「トラストバンク休眠預金活用プロジェクトの公募結果 概要」の通り、私たちが提供する地域事業者へのソーシャルビジネス形成の伴走プログラムへ、43団体(申請検討124団体)から応募を頂き、そのうち、内定となったのは6団体であり、その倍率は約7.2倍(申請検討 約21倍)となりました。
助成事業の応募倍率は2~3倍程度が一般的といえるなか、今回、非常に多くの応募を頂き、高倍率の選考となったことは、地域事業者からのソーシャルビジネス形成に対する高い関心が伺えます。ステークホルダー(利害関係者)からの社会性(社会課題解決性)獲得の要請へ、地域事業者がソーシャルビジネス形成によって応えようとしてきているとも言えるのかもしれません。

今回、伴走先として内定された地域事業者の皆さん、各自がこれまでの企業や団体の活動を通じて見えてきた、地域や社会の課題に対して、多様な力を結集してビジネスの力を活用して取り組まれている事業者さんです。

小規模農家と福祉施設を掛け合わせた農福連携の課題解決プロジェクト、ハンディキャップや生きづらさを抱える方々へのアプローチ、地域の伝統文化やエコシステムなどの地域固有の価値のアップデート…など、内定団体それぞれが、社会性(社会課題解決性)と収益性(自主的な事業継続性)の二つの価値が両立する「ソーシャルビジネス」を生み出そうと奮闘されています。

このように、上場企業でない地域の非上場企業や団体のなかでも感度が高い組織には、ステークホルダー(利害関係者)から社会性(社会課題解決性)への強い要請を感じており、それに応える動きが少しずつ拡がりつつあります。

余談になりますが、ESG投資やパーパス経営の言葉もなかった10年ほど前、私は大学で観光まちづくりの学科を専攻後に、新卒でWebマーケティングの企業に就職しました。(その後、福島県へIターンして復興関連NPOで新規事業の開発をしたり、県委嘱職員として人財獲得や育成、事業開発の仕事を経た後、トラストバンクへ参画したのですが、本稿と関係ないので、割愛です。笑)
 
社会人になりたてで、大学時代に学んでいた住民主体の観光まちづくり(社会性)とWebマーケティング企業の業務内容(収益性)への乖離に悩んでいた私に、OJTを担当してくれた先輩社員さんが「社交性を鍛えて、かわいがられる人財になっていけたらいいね」と、社内のいろんな先輩社員とランチに行くことを勧めてくれました。
 
そのランチの際、折角の機会なので、「この会社って、どんな風に社会の役に立っていると思いますか?」と生意気にも先輩社員の皆さんに聞いてみました。「クライアントのマーケティング課題の解決を通じて、社会に役立ったりしているんじゃないのかな」でしたり、「この会社だけで数千人の雇用を生み、また、様々な企業のマーケティング課題の解決から、雇用を守ったり、生んだりしているんじゃないのかな」等の返答をもらいました。
 
まだ企業の社会性(社会課題解決性)が問われ始める前の時代、先輩社員の皆さんも回答に苦慮されたことと思います。(「このコは何でこんな質問するんだろう」という表情をされていたことを覚えています!)OB向けの広報誌で、新卒で入社し育ててくれたWebマーケティング企業で最近パーパスが策定され、改めての理念経営が始まったと拝見しました。本当にいろんな企業に対して、社会性(社会課題解決性)への強い要請が来ていることを実感しています。
 
第2回では、企業の社会性(社会課題解決性)について、海外や日本では、どのような取り組みがされているのか、お届けできたらと思います。

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