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テレワークゆり物語 (141)岸田総理は「産休・育休中のリスキリング」と言っていない?

国会答弁での岸田総理が「産休・育休中のリスキリングを後押しする」
と発言したことに対し、SNSや記事等で、「産休・育休は休みじゃない」
「育休中の大変さをわかっていない」
など、非難が相次いだ。

これに関する報道を見て、私は違和感を感じた。
自分なりに調べて、自分なりの意見を述べてみる。

●「産休・育休中に学ぶ」は、これまでも実施されてきた

育児休業中の社員に、eラーニングで「各種教育プログラム」を提供するビジネスは以前から存在する。また、福利厚生として、そのサービスを採用している企業も少なくない。
もちろん、強制ではない。また育児休業中なので、学習している時間に給与は出ない。しかし、そのサービスを利用して、育児休業中に資格をとった人もいる。ひとつの選択肢として、意味があるのではないのか。

●産休・育休中でも「学びたい」ママはいる

出産・子育てが大変なのは、私もよく知っている。3度ばかり経験した。
出産直後は体はボロボロなのに、赤ちゃんは容赦なく、夜中に何度も起こす。日中も、赤ちゃんの世話で一日が過ぎる。
しかし、24時間、一瞬たりとも時間がないわけではない。
赤ちゃんが機嫌のいい時間、寝ている時間、短くて細切れだが、ママ・パパの時間だ。その時間をどう使うかは、ママ・パパ次第なのではないか。
「一緒に寝る」「料理を作る」「掃除をする」「TVを見る」「ダラダラする」一番したいことをするのがベスト。「学びたい」という人もいるだろうし、「仕事をしたい」という人もいるだろう。

●今回の炎上のポイントは「産休・育休中」?

という話をすると、非難している方々は
「産休・育休中は、赤ちゃんのお世話以外をしてはいけない」と、言っているのではない。総理が、国の政策として「産休・育休中のリスキリング」に力を入れようとしている事に対して、意見している。
・・・とおっしゃるかもしれない。
つまり、問題は「産休・育休中」なのではないか。

●総理が「産休・育休中」と言ったの?

本件に関するニュースを見ていて、ひとつの疑問がわいた。
総理は本当に「産休・育休中」とおっしゃったのだろうか?

私は、さっそく参議院のホームページの「インターネット審議中継」に行き、2023年1月27日の本会議の動画をチェックした。
動画は、なんと5時間22分49秒。しかも倍速再生とか、無いし(笑)。
この答弁が登場したのは、後半も後半、4時間33分頃だった。自民党の大家敏志議員の質問の中で、「新しい案」として示された。

子育てのための産休・育休がなぜ取りにくいのか。理由のそのひとつが、一定期間仕事を休むことで昇進・昇給で同期から遅れをとることだと言われてきました。
しかし、この間にリスキリングによって一定のスキルを身に付けたり、学位を取ったりする方々を支援することができれば、子育てをしながらもキャリアの停滞を最小限にしたり、逆にキャリアアップが可能になることも考えられます。
大胆な子ども政策を検討する中で、たとえば、リスキリングと産休・育休を結び付けて支援を行う企業に対し、国が支援を行うなど、親が元気と勇気をもらい、子育てにも仕事にも前向きになるという二重三重にボトルネックを突破できる政策が考えられるのではないでしょうか。
(中略)総理のお考えをお伺いします。

2023年1月27日 自民党 大家敏志議員の質疑から

確かに、大家議員は「産休・育休」と明確に発言されている。
この質問に対し、4時間43分前後から、岸田総理は、以下のように答えられている。

育休中など、様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししてまいります

2023年1月27日 参議院本会議での岸田総理大臣の答弁から

あれ。岸田総理は「産休・育児中」とは言っていないではないか。
「育休中など」の「など」には病気治療中だったり、障がいがあったり、学ぶことに費用をかけられない人も、含まれるのではないか。

そして総理は、30日の衆議院予算委員会で、こう説明した。

あらゆるステージにおいて、本人が希望したらならば、そうしたリスキリングに取り組める環境整備を強化していくことが重要だという趣旨で申し上げたわけであります

 2023年1月30日衆議院遊山委員会での岸田総理大臣の答弁から

岸田総理は、「産休・育休中」と言っていないし、後押しの対象を限定していない。

【追記】国会答弁に詳しい方から、質疑と答弁は一対なので「産休・育児中のリスキリング」という意味でとらえても問題ないとの意見をいただいた。(そういうものだとは知らず…)

●私がこだわるのは「育休中の在宅勤務」という選択肢

長々と説明してきたが、実は「言った」「言わない」は本論ではない。

私が、今回の話にこだわっているのは、理由がある。
長年、「育児休業中の在宅勤務」について、声を出してきたからだ。
「産休・育休中のリスキリング」なんて、無理だ。という意見が世間に強く広がることで、

「ましてや、育児休業中に仕事をするなんてありえない」

という風潮になるのは困る。

もちろん、心身共に大変な育児休業中に働け、というのではない。
総理と同様に、「本人が希望すれば」選べる選択肢を用意したいだけだ。

「休む」と「働く」の間に「育児休業中に、毎日1時間だけでも在宅勤務で仕事をし、育児休業給付金に働いた分の給与をもらう」選択肢である。

この選択肢を作るための戦い(?)は、実は10年以上続いている。
そんな中、育児介護休業法の改正の中で、大きな変化があった。

男性の「産後パパ育休」において、在宅勤務が可能になったのだ。
条件はあるものの、
大きな一歩だ。

「育児休業中の在宅勤務」について、これまでの過程と、改正内容について、以下のオンラインセミナーで語らせていただく。
興味のある方は、ぜひ視聴いただきたい。
(登録いただければ後日の録画視聴も可能)

育児休業中に在宅勤務で働くことについて語ります

※冒頭の写真は、参議院本会議で、総理が「育休中など」と発言されたシーン。


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