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真説佐山サトルノート round 13 真説・サミー・リー

【この原稿は二〇一六年八月から二〇一八年四月まで水道橋博士主宰「メルマ旬報」での連載を修正、加筆したものです。秘蔵写真も入っている全話購入がお得です】


「何を飲む? うちはパブだ。ビールでも飲まないか」
 ぼくが黒ビールを頼むと、ウェイン・ブリッジは足を引きずりながら木製のカウンターの中に入り、金色のビールサーバーの取っ手を手前に引いてビールを注いだ。グラスを置き、泡が落ち着くのを待って、継ぎ足した。
 佐山さんがロンドンに到着したのは、一九八〇年九月のことだった。
「最初にサトルが来ることを聞いたのはプロモーターのマックス・クラプトリーからだった。そして猪木とミスター新間からイングランドで面倒を見てくれないかと頼まれたんだ。ぼくは猪木、ミスター新間といい関係を築いていたからね」
 ウェイン・ブリッジの英国式イングリッシュはアメリカの英語よりもゆったりとしており、聞き取りやすかった。ウェイン・ブリッジは新日本プロレスの招聘で何度も来日している。猪木は金払いが良い、最高のプロモーターだったと誉めた。
「その頃、ぼくは此処とは別の場所で大きなパブを経営していた。そのパブの上に部屋があった。サトルをその部屋に住まわせることになったんだ」
 佐山さんはメキシコからピート・ロバーツというレスラーと一緒にロンドンのヒースロー空港に到着している。
「誰かが空港でピックアップしてサトルをうちのパブに連れて来た。サトルはロンドンに来る前、メキシコで成功していた。ただ、ここでのデビュー戦前は上手く行くかどうか自信なさげだった。お前のやり方で大丈夫だと励ましたものだよ」
 佐山さんはマックス・クラプトリーの発案で、ブルース・リーの〝従兄弟〟の「サミー・リー」という設定でリングに上がることになった。


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