2021.2.25 県庁生活の嫌なところベスト3

これから県庁職員を目指す人向けにイチ県庁職員としてできることといえば自身の経験を綴ることだと思う。
ということで、今日は県庁生活について感じていることを書こう。

県庁生活の嫌なところ ベスト3

いきなりネガティブな話だが避けてはとおれないところだ。
そもそも公務員というのは社会のセーフティネットという役割が基礎にある。最近では「管理型行政から経営型行政へ」などと言われているが、決して管理型行政から脱却することを言っているわけではなく、基礎は変わらず管理型、つまりセーフティネットとしての社会インフラの維持管理にあるといってもいいだろう。
県庁生活の嫌な側面は、このガチガチの管理型行政、そして管理型行政に染まりきってしまった人材から生じるものが多い。

さて、僕がベスト3として考えるのは次のとおり

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①内規の多さと思考停止人間

県庁生活の嫌なところ第1は、
「内規が多く、内規の遵守に対して非常にうるさいということ。」

学校を例に挙げるとわかりやすいだろうが、学校に携帯を持ってきてはいけないだとか(今の学生は違うかもしれないが)、お菓子を持ってきてはいけないだとか、髪を染めてはいけないだとか、スカートを短くしてはいけないだとか、煩わしい決まりがたくさんある。
これらがいわゆる内規である。

内部の規則なだけで、別にこれを犯しても憲法にも法律にも抵触はしないし、なんなら自由権を侵害する内規もあるかもしれない。

当然必要性があって決まっているものもあるだろう。
内規は秩序の維持やコンプライアンス違反の抑止等の合理的理由があって存在するものいう本質を持つわけだが、
本質そっちのけで、今までそうしてきたからという理由だけで存在し、多くの行動に制限がかかる。

具体例を挙げるならば「文書管理規程」である。この文書管理規程に基づき文書事務の手引きが作られ、これを遵守するよう若手職員は叩き込まれる。
通知文の相手方の名前の前に全角の空白3文字を空けるだとか、右上の文書番号の後に全角1文字分空けるだとか、タイトルは中央ぞろえではなく左に全角3文字分空けるだとか、
そういったクソどうでもいい細かいところまで手引きには定められており、これに慣れ親しんで思考停止した一部の年配職員や上司に、書類(起案)を突き返される。(突き返してくる人の多くは、性格が相当細かい人か、内規の知識でしか優位に立てない年配である。)

若手職員も、上からめんどくさいことを言われたくないから言われたとおりにして、そうして思考停止が踏襲されていく。
自分が上司になったら、そんなどうでもいいことで起案をつっかえして無駄な時間を部下に使わせるなんてことは絶対にしたくない。

今のは簡単な一例だが、文書管理規程以外にも会計規則だったり、事業毎の要綱・要領だったり多くの決まり事が存在し、それが行動を制限するため、フットワークを重くする一因となっている。(フットワークが重い理由は議会だとか縦割りだとか色々あるのだが。)

ちなみに、なぜ規則でがっちがちにするのかにはいくつか理由があるが、理由の一つに、「人事ローテーション」があると考えられる。
コンプライアンス遵守のために、人事ローテーションを頻繁に行うため、突然誰がその仕事の担当になったとしても業務を回していくためには明確なマニュアルが必要になる。マニュアル主義といわれる所以である。

②異動の多さと部署の多様さ

県庁生活の嫌なところと聞いたらこう答える人は多いだろう。

先に書いたように県庁職員は人事ローテーションが頻繁に行われ、3年もしたら全然違う部署に異動になる。そして、県庁には多様な部署が存在しどこに異動になるかは神(人事課)のみぞ知るセカイである。

例えば税金滞納者から税金を徴収する仕事をしていたと思ったら、農地を守る仕事をしたり、県立病院の経営をすることになったりする。

これだけ聞いたら面白そうとなるかもしれないが、そんなかわいいものではない。
異動のたびに知識ゼロでLV.1の最弱キャラとして強いパーティに入れられ、戦力外として無能扱いされたり邪魔者扱いされることもある。

分厚い税法を読み込んでレベルが上がったと思ったら、LV.1の職業に変えられて今度は農地法や農振法などを読み込む。法律の裏にある歴史的背景などを学び、国から押し付けられる新しい事業の要綱・要領・マニュアル類を読み解く。
再度職業を変えられたら、今度は公営企業法や地方独立行政法人法だったり医薬品や診療材料の知識が求められる。所管する県立病院のこと勉強するだけでは足らず地域医療構想などの医療行政についてや、医療業界の政治的事情などについても勉強する必要がある。

そうやってレベルがある程度上がったら、また別の部署に行く。
蓄積していくのはOFFICEソフトを扱う技術や資料作成技術、会議開催のノウハウ、内規の知識くらいだ。だから内規の知識でマウントとろうとする一部の年配職員が生まれるのだろう。

これは強制的な転職にあたる。県庁職員になったら、人生で10回は転職の機会がある。

とまあ、異動について悪いことばかり書いたが、自己成長欲求が強い人間にとっては悪いことばかりではない。いろいろ知れるのが楽しいという側面もある。大学で教鞭をとっている僕の友達のように、「いろいろ勉強できて楽しそう」みたいな前向きな考え方もある。

ただし、専門性を放棄することにはなるだろう。
(どの部署にいっても、やりとりする相手方の企業や個人の方が業界知識に詳しくて大変。そんなことも知らないのか呆れられクレームに発展することもある。農家の方が農業に詳しいのは当然。異動してきたばかりで農業の補助金の担当になって農家に怒られたりする。)

③よくも悪くも年功序列

Ⅰ.出世

出世したい人は間違っても公務員になってはいけない。年功序列という簡単には崩れない鉄壁の秩序安定装置があるからだ。

主事→主任→副主幹→主幹→主幹(総括)→係長→補佐→次長→課長→部長

という風にクラスチェンジしていくが、30歳にならないと主任になれないなどの年齢による制約が存在する。民間企業に勤めている同年代の友人などはそろそろ係長だったりプロジェクトリーダーだったりを任されている頃に、やっと一つ上がるだけである。業務内容としてはそう変わるものではない。

女性は産休・育休期間は勤続年数に数えられないため、その分昇任も遅くなる。

出世を求めて公務員になる人も少ないだろうが、万が一あなたが出世を求めるなら辞めた方がいい。
なお、権威とコネクションを持ちたいなら別である。県庁職員から議員になる人もいる。

Ⅱ.給料

当然、給料も年功序列である。友人が年収1000万稼いでいる中、あなたは300万かもしれない。副業するにも投資くらいしかできない。

Ⅲ.不公平感

年功序列の一番の弊害はここかもしれない。
組織にはモチベーションの高い職員もいれば低い職員もいる。

僕は別にどちらも否定はしない。
報酬がそれに見合っていればいいと思っている。

頑張っている職員には報酬をあげて、頑張っていない職員には報酬を低くしてあげればいい。そうすればだれも文句は言えないし、優秀な人のモチベーションも上がる。

しかし年功序列による給与体系は、これとは真逆である。
しばしば、頑張っていない職員に報酬を上げて、頑張っている職員の報酬が低い場合がある。頑張っている職員は頑張っていない職員に不平不満を露わにして、頑張っていない職員は余計モチベーションが下がる。内部で分断・対立が生じる。雰囲気は最悪である。
この場合、皮肉にも頑張っている側の職員が悪い雰囲気を作ってしまう。



以上、県庁生活の嫌なところベスト3を挙げてみた。
体制的なところが多く、やはりこういうお堅い仕事は特殊な部分が多いと思う。人的な部分については大きい民間企業でも一緒だろうが「人ガチャ」などというくらいだから当たり外れが大きく運に左右される。
県庁職員を目指している人は是非参考にしてほしい。


もちろん県庁生活のポジティブ面もあるので、またの機会に書いてみたいと思う。県庁職員に性格分布などを分析してみるのも面白いかもしれないな。

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