認めたくないことに真実はあるのか雨のメトロノーム

少し熱が出たり、少し紅斑が出た程度のことで、毎度わたしはGoogleにかじりつきになる。
これは何の病気なの、チェックリストから当てはまる項目を一心に探す。
好奇心任せのことだが、自分で自分をチヤホヤヨシヨシする娯楽でもある。

しかし、逆に、わたしが一心に見なかったことにするチェックリストがある。ADHDのチェックリストだ。

性格としては昔からおとなしいと言われてきた。そして同時にそそっかしいとか、手遊びしすぎだとか、人の話を聞いていないだとか、忘れっぽいだとか。
ずっと言われてきた。
どこにいってもずっと天然、天然と言われてきた。

好きかもしれない人を含む何人かでひなびた観光地に行ったとき、東屋と展望台のあいのこのような、TDSにいくつかあるような感じの小さい建物に入った。
ざっと何があるか把握して、長居は無用だと思った。出口はどこだろう。ヒールのつま先が痛むのを我慢して奥まで行ってみた。
戻ってきて「こっち出口なかったよ」と言ったら、その人は「え、出ようとして奥に行ったの?」と答えた。彼はわたしたちの入ってきたドアのところに所在なく立っていた。「出口知ってたなら教えてよ!」と訴えたら、一瞬の間があって「本物か」と言われた。たしかに入り口は出口だよな。向こうからしたら、フラフラどこかへ行ったわたしを待っててくれたんだよな。

今ならたしかにそう思うのだけど、そのときその瞬間は、奥に出口があると思ったのだ。なぜか妙な思い込みをしてしまったりして、気が回らない。こんなことが多々あった。

運動神経はとてつもなく悪い。自分の体を把握できないという感覚の方が近くて、どうやればあのダンスを踊れるのか、左手をどう動かせばあの動きになるのか、全くピンとこない。
ボールがどこへ飛ぶのかなんかも、立体的に把握できない。

忘れ物、なくし物多数。知らない間になくなっている。何かしようと思って階段を上がって、全然別のことをして下りてしまう。

遅刻は、しないことの方が珍しい。今日も遅刻→忘れ物を取りに帰る→遅刻のコンボを決めている。
片付けはもともと好きな方なのだが、認めざるを得ない現状として、今の部屋は汚い。
先送りも日常。締切を守れないのも日常。超デイドリーマーですほんとすみません。

他人のために何かするのは大好きだが、自分のために頑張れない。お金をもらうことも苦手。
たとえば実を言うと、五月から、一つの仕事のお給料をもらっていない。
先方はいつでも言ってくれと言ってくれているのだが、気が重くて、自分の労働を申告していない。

睡眠にも難あり。今日も昨日もそうなのだが、慢性的にぼんやりしている。
寝続けることが苦手で、寝不足なのに早起きしてしまう。昼寝しようとしてもうまくできなくて、数秒、数分のうとうとを繰り返す。

徒歩10分の知っている場所に行こうとして1時間迷う。
先日病院に行くときだって、17分遅刻してしまうことになって電話して謝り、不安でアワアワしてるうちにバスを乗り間違え、一層アワアワして「ごめんなさい遅れて申し訳ないしよくわからなくなってしまってキャンセルさせてください」と電話した。受付の方に「近くなので落ち着いてください」と励まされながら結局50分遅刻した。お忙しい中すみませんほんと……

エピソードを掘り出すたび、アウト、という気はする。
楽しいとき、何かに強い興味があるとき、集中しているときに寝るという点を除けば、ことごとく当てはまってしまう(ADHDの人は興味がないと寝て、楽しいとき覚醒するらしい)。

そういえば、最初にわたしの睡眠バグってるんですけど……と相談した相手は精神科医だったのだが、彼は睡眠専門のところでまずみてもらって、睡眠障害がどのように起きてるかはっきりさせてからまた僕のところにおいで、といった。
そうだ、彼の言葉は、睡眠専門の病院に行きなさい、だけでは終わらなかった。
ナルコレプシー等の睡眠障害はADHDの鑑別疾患らしい。
プロの医師である彼の頭にも、わたしのADHDを疑う気持ちがあったのだろうか。

ほんとにそうだったらどうしよう、とそわそわしている。こわい。周りにばれるかな。ばれたらなんて言われるだろう。

でももしかして、ほんとにそうなら、薬をもらえば楽になるんだろうか。 生きやすくなるんだろうか。
薬じゃなくても、対策を立てることで生きやすくなるんだろうか。それは希望だと認めないといけないだろう。

認めざるを得ないのは、そのことだけではない。
第一に、わたしはADHDと全く無縁ではないだろうこと。
第二に、精神障害・精神疾患に偏見を持つ人の中で育ち、立派にその偏見を受け継いでいる自分がいることだ。
いずれにせよ、わたしはわたしを知って、わたしを御していかねばならない。

と書いている側からねむくて、手の力が抜けて、スマホを何度か落とした。

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