"普通"って、皆が空気を読み合って何もないように演技する事なのかもしれない(ネタバレ含)
最近『アルマゲドン』を見たら無性に見返したくなったため、『ドント・ルック・アップ』を2度目の鑑賞。
なんとなく見てた時より感動したし普通に泣いちゃった。チラとスマホの通知を確認なぞしたら見逃してしまうような小ボケが多くて楽しい映画。大掛かりな撮影やCGだけじゃなく、役者さんたちの演技が光る。
勿論今回も加瀬さんの吹替で。癖になる声質と口調。
燻ってる中年の吹き替え上手すぎる!
概要
この映画の概要は
「巨大な彗星が地球を滅亡させるぞ!それを阻止しなければ!」
っていう良くある終末映画(アルマゲドンのパロディもある)なんだけど、唯一無二でむっちゃ面白く仕上がってる。人より映画は見てきた自負はあるものの、「これに似た映画なんだろう?」と考えても思い浮かばない。
大まかに言うと SF→アメリカの風刺→人間讃歌 という展開で進んでいく。
これまた風刺のクオリティが高くて、実在するアーティストとかも使いながらギリギリのレベルで攻めてる。その塩梅が上手くて、笑えない冗談の0.5半歩手前って感じ(伝われ)
好きなシーン
「うちの母親信心深いけどおれはキリスト教信じてない」
って言ってた不良少年が隕石を目にした途端、熱心なキリスト信者の振る舞いをするところ。
その時カメラが恐らくケイト視点になって少年の背中を映すんだけど、ピントが一瞬ぼやけるのも心の距離が生じた感じがして好きなんだよな。
色々スキャンダルに巻き込まれて派手な生活をした人が最後には至極一般的な『普通の家庭』を必死に求める姿が哀れだけど愛おしくて好きなんだよなぁ。
暴動が起きたスーパーマーケットにて、妙に落ち着き払って買い物する博士。終末世界では無銭飲食している連れの2人のほうが正常にも思えてくる。それでもひとり『普通に買い物』する博士が痛々しくサイコパスにさえ思えたけど、愛おしかった。
『普通』ってもしかしたら、皆が空気を読み合って必死に何もないように演技する事なのかもしれない。時には問題に向き合ってないように見えるかもしれないが、それは"普通"であろうと努めた結果なのかもしれない。
日常は飽きてしまうけど尊ぶべきもので、努力のうえに成り立つものだと気付いた。
キャストが大物揃いでついそちらに目が行きがちだけど、そうではない俳優さんの演技もしっかり光ってた。
…そんな厳かな食事会のシーンで厳かに終わりにしてもよかったのに、抜け出した一部の人類が別の星で新たな危機に脅かされ、運良く生き残った人間は一番無能っぽい奴だったり。
最後までなかなかベストな終末を迎えさせてくれない監督のイタズラ心を感じる良い映画でした😂
(ちなみに今作の大騒動を引き起こした会社の名前"bash"という単語はアメリカのスラングらしく、「どんちゃん騒ぎ」や人を激しく非難する意味があるらしい)
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