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AIとかDXと人間が持つ知識との間

こんにちは、多田陽子です。中小企業の経理や経営支援、税務申告をしています。たまにホットな税務トピックについてセミナー講師をさせてもらったりしています。(今はもっぱら定額減税!)

このモヤモヤは何?

できるだけ難しくない言葉で会計や税務を伝えることをモットーとしています。そんな私が、ここ数カ月の間、頭の中でもやもやしていたことを言語化してみようと思います。何をモヤモヤしていたかというと、私が専門とする会計とか税務って世の中に必要としつづけるのかというモヤモヤです。笑

何を言い出したのかと思われるかもしれませんが、経理ってそもそも会社の中で好かれる部署ではないですし(仕事の内容じゃないんかぃ)、税理士だって税の計算をするので、会社の味方かと問われると中立というか、専門家の中でもスタンスが分かれるところです。

内容に触れるなら、経理は会社のカネの流れを日々記録することです。また年に一回、決算という作業をすることでその期間の収支がわかるのと、お金だけでなくモノやヒトの動きも数字により把握できます。つまり、やっていることは日記の数字版を作ってるみたいなもんです。

ただ最近、AIとかすごい仕事のできる奴が登場してきて、面倒な業務がどんどん効率化されていく中で、税務・会計の分野で人間はもはや不要なのかなとか、あまり好かれもしない仕事に就く人も減っていくだろうなって思う訳です。

そんなことをずっと考えていたのですが、同志社大学の良心学研究センターの公開シンポジウム「AI・ロボット時代における良心」2019.1.17を拝聴し、少し頭が整理できたように思います。

税理士の仕事

税理士という仕事は税務申告書を作成するのが最終的な仕事ですが、その前に会社や個人の決算を締めるという業務があります。それを正しく行わないと、そもそも正しい利益が求められないので、税金の計算もできません。

この決算という業務ですが、経理という業務と簿記や会計の知識が必要です。その他にもいろんな知識がないとうまく業務が進められないのです。

多田事務所作成

50代以上の方は、そろばんをたたいて手書きで伝票や総勘定元帳を作成していたという経験がある方が多いです。私の時代はパソコンが主流で会計ソフトに直接入力していました。ですが、現金や預金出納帳は手書きのものもありましたし、インターネットは今のように多くの情報があるわけではありませんでした。こうやって振り返ると昭和から令和まで業界的にはかなり進化してきています。

システムの進化


最近は、freeeといった簿記の知識がなくとも決算書まで作成できるクラウド会計ソフトができ、個人事業主で自分で経理をやってみようというモチベーションがある方にとって簡単に取り組みやすくなりました。

つまり簿記をさほど知らなくても、システムを使いこなすことができればお金の流れを記録・管理することはできるわけです。そうすると経理という役割が希薄になり、パソコンや新しい仕組みに対応できる若い方ならば、経理業務ができるような錯覚が生じます。ここであえて錯覚が生じると言ったのは、簿記や会計の知識がないままだと、その記録・管理の方法が正しいのか、決算整理を正しく行えたのかを自分自身でチェックすることができないからです。その観点で言えば、決算が完了したとは言い切れないわけです。

こういう事例って、chatGPTをビジネスで活用する場面でも似たようなことが生じているそうです。論文を要約したり、ビジネス文書を作成してくれたり、広告を考えてくれたりするわけですが、その内容が本当に合っているのかを確認する必要があります。つまり、ある程度経験がある人がこのシステムを使えば効率よく業務が行えるのですが、新入社員が知識がない状態でシステムを使っても、一定の基準に達するような業務が行えているかは疑問、ということになります。

これからもどんどん使い勝手の良いシステムや機能が出てきて、私たちの業務は効率化していきます。つまり生産性が上がっていくことが期待されています。ですが、知識がなくても業務が自動的に完了するのではなくて、人間の目で必ず現在のルールに照らして確認作業が必要なのです。ルールさえAIが作る未来が来たら、、、。

システムと人間の役割

①おそらく現時点では、システムやAIがまだ成長段階のため、機械に人間が寄り添うことが必要です。機械が不十分な部分を人間の知識で補うことで業務が完了していきます。いずれは機械が自動的に正しい業務を行うようになるのでしょうが、それまでに私たちがやるべきことがまだ多くある、あるけどそれが言語化されていないし、認識もされておらず、仕事が奪われるという不安が先に生じているという状態です。

②完全自動化のタイミング以降は、人間は例えば簿記や会計の知識を持たなくていいのかという疑問です。システムやAIが得意な業務がありますので、その部分が発達していくと、人間よりもはるかに速いスピードで処理をして業務を終わらせてくれます。ではその業務はそもそも何のためだったのかが問われるのではないかと思うのです。

年代で異なる反応

この2つのモヤモヤを考えることが大事なんじゃないかと思っているのですが、今時点では主に①について考えたいです。これは世代が違うと全く異なる反応があるのではないかと思っています。

まず30~40代世代は、システムの変化やAIについては、パソコンが登場してきたくらいの感覚です。ここで他のメンバーより早く習得して業務に活用しようという気持ちではないでしょうか。

30代より若い世代で、経理や会計の経験が少ない世代は、勝手に業務をやってくれるなら使わないなんてあり得ない、もしかしたら知識を得なくてもよくなる時代になるんじゃないの?ラッキー。え?、なんか知識いるの?ネットとかで調べたらなんとかなるんじゃないの?という気持ちではないでしょうか。

50代以上の世代になると、またシステム変更か、もうあんな大変な思いはしたくない、AIって何?私の仕事なくなるの?もう、定年までは今のままでやり過ごしたいのに。。

上記は私の想像ですが、ただなんとなく周囲を見渡すと世代に応じた反応の違いをリアルに感じます。こういった反応は人間の心理を表していると思うので、年配者が多い部署でDXが進まないとかはこういった行動心理が働いているように感じます。

上記シンポジウムの動画の中で、労働人口減少が著しい日本において、移民を受け入れるかAIなどを活用するかという議論について良心が必要なのではないかという問いに、廣安先生が、「まだ未熟なAIを導入しても人の方がAIへ寄り添う必要があり、それよりも人間の意識や考え方を変化させる必要があるので、それを受け入れられる状態なのか、また、はっきりと明言しているわけではないけども移民を受け入れて一緒に働いてもらおうという考え方は、既存の考え方や生活、構造を変えないで移民の方に寄り添ってもらうことを想定しているのではないか」とおっしゃっていました。小原先生も「移民を労働力として考えてしまうとお互い寄り添えないので、一緒に新しい社会で共存できるように寄り添っていくことが必要だ」とおっしゃっていて、それは人間同士だけでなく、機械とも同じことなのではないかと思いました。

仕事がなくなるのではなく変わる

では年配者が不安に感じるように、経理の仕事は本当に失われるのでしょうか、、。
①については、現時点ではシステムやAIもまだ成長段階です。人間の知識を用いて一定のルールをクリアしているかを判断することができるのは年配者の方が得意かもしれません。逆に、常識に縛られない若手は経理や会計そのものの概念をとっぱらって新しい経理の仕組みを思いつくかもしれません。中間層はその両方も担えるし、世代間の調整をしながら、会社が立ち止まるのではなく、前に少しでも進めるように誘導する役割かなと感じます。さらにはこの業界で今後必要となるのは、普遍的な知識と応用力、分析力だと思うのでそれを磨き続ける必要があります。

そう考えると2つあるモヤモヤの①の方は、AIがどんどん進化する中で人間だけが立ち止まっていてはいけないなと改めて思いました。私自身も、経理や会計が不要ではといじける前に、一定の基準をクリアするためのデータの質や、経理・会計知識のレベルの差を埋める運用の仕組み、経験から得られる適応力など考えるべきことがあると感じました。

こうやって考えていくと、会社や個人が停滞するのって、やっぱりどこかに今の状態への執着が生じているからじゃないかなって思います。自分の利益ではなく、会社の一員として会社全体の利益のために考えるとか、望む未来があって、その未来を実現したいのなら、自分が変わる勇気が必要かなって思います。そうすれば人口減少の未来もそんなに暗くない。停滞している人、そうしたい人がいずれ仕事を奪われるのではないかという結論に至りました。

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