自由とは政府を批判できること
こんにちわこんばんわ。
全ての増税に反対し、全ての減税に賛成する自由人、七篠ひとり(@w4rZ1NTzltBKRwQ)です。
今日はこちらのポストから。
こちらは
2019年の反政府デモに参加したとして逮捕され、有罪判決を受けていた実業家の黎智英(ジミー・ライ)氏の上告を香港の最高裁判所が棄却し、有罪が確定した
というニュースです。
黎氏はアパレルブランド「ジョルダーノ」の創立者で、仕入れた衣服を販売するのではなく、製造と販売の両方を手掛ける「SPAモデル」によって大成功を収めた人物で、ユニクロがそのビジネススタイルを真似て同じく成功したことは有名な話です。
そんな彼がなぜ逮捕され収監されることになったのでしょう。
ということで今日はその理由と黎氏の半生から、
自由とは政府を批判できること
という話を書いていきましょう。
現在76歳の黎智英氏は、1947年に中国広東省広州市に生まれます。
7歳の頃に父親は香港へ亡命、母親は強制労働所送りとなってしまったために幼い兄弟を一人で養わなければならなくなった彼は、駅で乗客の荷物運びをするなどしてチップを稼ぐ暮らしをしていました。
苦しい生活でしたが、そこで彼の人生を変える大きな「出会い」を経験します。
その出会いとは「チョコレート」です。
ある日いつものように荷物運びをした時、鉄道客の一人が彼にチョコレートを渡しました。
空腹だった彼はすぐにチョコレートを頬張るのですが、その経験したことのない甘さと美味しさに言葉に表せない程の感動を覚えます。
そしてチョコをくれた鉄道客が香港から来たと知ると、「こんな美味しい物がある香港はきっと素晴らしい場所に違いない」と香港行きを決意します。
彼は母親が強制労働所から帰ってきても、香港への密航費用を貯めるために働き続けました。
そして12歳の時に密航船に乗り、たった一人で香港へ亡命したのです。
香港に着いた彼は、そこで初めて自由市場や言論の自由などの人権がある「チョコレートが普通にある社会」に触れることになりますが、豊富な商品が置かれる市場に感動しながらも、なにしろ所持金がほとんど無かったために次の日から手袋工場でがむしゃらに働くことになります。
そして貯金と投資によって数年間で富を増やした彼は、倒産した衣料品会社を買い取り、セーターの製造を始めることになります。
これが後々に前述したアパレルブランド「ジョルダーノ」に成長していき、巨万の富を得ることになるのですが、1989年に発生した天安門事件に対する中国政府のやり方に黎氏は大きなショックを受けることになります。
天安門事件によって自由の重要性と独裁国家の危険性を痛感した彼は、何十万枚の反共Tシャツを販売するなどして、公に中国政府批判を始めるのですが、当然この行動を中国政府がよく思うはずはなく、ジョルダーノは中国国内での営業認可を全て取り消されるなどを嫌がらせを受けることになります。
これにより彼はジョルダーノの株式を全て手放すなどの事態となりますが、しかしそれが逆に彼に火を着けることになり、自由と民主主義を守るメディアを自らの手で創ることを決意し、ますます政治への関わりを強くしていくことになります。
そして黎氏は1990年にメディア企業「壱伝媒」を創立。
週刊誌「壱週刊」などの創刊を経てし、1995年に日刊新聞である「蘋果日報(ひんかにっぽう)」を創刊し、中国共産党政府の批判を展開していきます。
一方で1997年7月1日に、香港の主権がイギリスから中国へ返還される「香港返還」が行われた際、中国共産党政府は50年間は社会主義政策を香港に導入しないという「一国二制度」を約束しますが、しばらくすると中国は言論の自由や報道の自由、司法の独立を含む「西洋の価値観」と戦わなければならないとした「9号文書」と呼ばれる政策を秘密裏に進め始めます。
しかしこの「9号文書」の存在が女性ジャーナリストの告発によって明らかになると、政府はすぐさま彼女を逮捕し、国家機密漏洩罪で懲役7年の刑を宣告するなど、香港での自由の弾圧はあからさまに強くなっていきました。
やがてそうした弾圧は、2014年の雨傘運動を引き起こします。
雨傘運動とは、2017年の香港特別行政区長官選挙から行われる予定だった「普通選挙」への中国政府による介入に反対する大規模なデモ活動のことで、黎氏も資金提供を含めこの運動に積極的に参加していきます。
また香港が徐々に独裁主義へと陥っていく中、2019年から2020年にかけて行われた「逃亡犯条例改正案」への反対デモにも参加して、彼は中国政府に抵抗し続けました。
お金も政治的なコネもある彼が、アメリカやイギリスなどの言論の自由が保障されている他国へ移り、そこから中国共産党を批判することは簡単なことだったでしょう。
それでも彼は香港の仲間を見捨てることになるとしてそれを拒み、平和的なデモによる抵抗に尽力し続けました。
しかし2020年に、中国政府は権力で彼の抵抗と「報道の自由」を踏みにじります。
新型コロナの感染拡大により世界中が混乱するなか、中国共産党は今が香港の自由を求める運動を崩す好機と捉え、200人を超える捜査員が「蘋果日報」の本社に強制捜査に入ります。
そしてその様子がライブ配信されるなか、黎氏は同社幹部ら7人と共に香港国家安全維持法違反などの疑いで逮捕されてしまいます。
そうした圧力を受けても「蘋果日報」は報道の自由を主張し続け、逮捕翌日の一面には
「蘋果日報は戦い続けなければいならない」
という見出しを掲げ、中国当局の非道なやり方を糾弾しました。
ちなみにこの号は、報道の自由を重んじる人達により購入が呼びかけられたこともあり、通常の8倍近くにあたる55万部が発行され、それを買い求めるために多くの人が列をなしました。
さて、黎氏はその後に保釈されたものの数ヵ月後には再び逮捕され、拘束されることになります。
それでも「蘋果日報」は発行を続けますが、中国政府によって黎氏と蘋果日報の銀行口座が凍結されたことで資金源を断たれ、ついに「蘋果日報」は2021年6月24日に廃刊に追い込まれました。
こうしてかつて食べることもままならなかった少年に、チョコレートの甘さという「自由と豊かさ」を与えた香港は、中国政府によって民主的な選挙も市民デモも弾圧され、ついには報道の自由も奪われてしまいました。
これ以来香港に住む人達は、中国政府のプロパガンダで埋め尽くされてた新聞しか手にすることが出来ません。
今の香港は、公に政府批判も出来ない社会になってしまったのです。
フレイザー研究所が毎年発表している「経済的自由度ランキング」においても、長年「地球上で最も自由な国」とされてきた香港は、近年の中国政府の介入による表現の自由や結社、集会の自由の破壊により、2021年にはその順位を世界46位まで急落させました。
この香港の没落は、自由を大切に思う人々にとっては悲劇でしかないですが、同時に学ぶ機会でもあるでしょう。
自由の本質は
公に政府を批判できること
です。
中国や北朝鮮を見ればわかるように、政府を批判する自由があって初めてその国は自由な国だと言えます。
逆に政府を擁護し、権力の全てを正当化することは、どの時代でもどの世界でも出来たのです。
でもそれを「自由な国」とは言いません。
政府を批判する報道や表現の自由は、とても大切なものなのです。
SDGsの目標16は「平和と公正をすべての人に」であり、
といったターゲットが設定されています。
SDGsがファッションでないなら、それを推進する企業や人々は冒頭のニュースを引用して
「SDGsの観点から中国政府を批判しろ」
と日本政府に対して声を上げるべきでしょう。
個人の自由は、政府を国民の管理下に置けるかどうかで決まります。
「政府を批判できる自由」の重要性を忘れないようにしましょう。
ちなみにこちらは今日ご紹介した黎氏の活動を描いたドキュメンタリーです。
日本語の自動翻訳でも十分わかる内容ですので、興味のある方はぜひ。
ということで、今日はここまで。
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