天童荒太「悼む人」※12/3加筆修正

人に迷惑をかけてはいけない、とほとんどの場合に私たちは育てられる。
実際には人に迷惑をかけて生きているし無自覚に誰かを傷つけていて、憎まれることもあるだろう。
私だって凄惨な事件を見聞きしたり自分が酷い目に遭わされたら、迷惑な悪人というイメージを持たずにはいられない。

主人公である静人は、人の死を聞きつけては近所や家族に尋ね歩き、故人がどんなに評判の悪い人物でも最期を迎えた場所で悼む旅をしていた。
例えば不良グループのいざこざから死者が出た場合。事件の加害者が逃走中に転落した場合。
それでも彼は同じように悼む。
そうして知った故人の記録をノートに記して次の現場に向かうのだ。
人が亡くなった現場に淡々と現れるので気味悪がられたり警察に不審がられることも多いのだという。

映画「悪人」を見たときに襲ってきた、何とも言えない感情が蘇った。
若い男女が知り合い、やがて女性は被害者に、青年は加害者となる。どこにでもありそうな事件の詳細が少しずつ明らかになるうちに様々な視点から考えさせられる名作だ。
誰が本当に悪いのか。被害者だから可哀想なのか、加害者だからどうしようもない人間なのか。

人は自分が関わった人が、原因は何にせよ死んでしまうことはかなり気分の悪いことらしい。
死を受け入れ立ち直るための過程として、グリーフ(喪失)ケアというものがある。残された者はその事実にショックを受け、次に感じるのは否認や故人に対する怒りだ。何も出来なかった無力感や自責の念に囚われることも一因だろう。
登場人物は悲嘆に暮れ、怒りのあまり遺族間で喧嘩になる場面もあった。
それでも主人公はできるだけ周りの人に聞いていく。掘り下げていくにつれ、こんなことがあった、何が好きだった、何で笑っていた、そんな話も出てくる。

人は生まれたら必ずいつかは死を迎えるけれど、重要なのはそういうところじゃないだろうか。
もちろん死してなお、許せないだってあるだろう。生きているときは嫌な思いをさせられたこともあるに違いない。
それがその人のすべてではないのだ。
どんなに親しい人でもきっと最後まで知らない面があるように、自分が知らないその人を知っている人もいる。
死ではなくとも別れを経験したことのある人なら、今はここにいない誰かとの間に起こった何気ない思い出や共通の知人から聞いたエピソードがあたたかい気持ちにしてくれるのが想像できるはずだ。

自分や大事な人がこの世を去ったとしても、大抵は誰にも知られず新聞の隅に小さく載るだけで何もなかったかのように世間は続いていく。
皆が皆、その最期を見送り供養してくれる人がいるとは限らない。
そんなささやかな私たちの生を、関わったこともない全くの他人が実際に足を運び、なるべくいい部分やエピソードを知ろうと尋ねてくれたとしたら。
「忘れません」
そう胸に刻んでくれる人がいるとしたら。
死んだ後のことは誰にもわからない。それでもこの世界のどこかにそんな人もいるということが、生きている者にとっても救いになるのではないだろうか。

私は出来る限り自分が存在していたことを周りに覚えていて欲しい。
「あんなやつ、と思うけど憎めないところもあったんだよな」
と生前好きだった人たちに笑ってもらえるなら最高だ。
近所のコンビニやスーパーで顔を合わせる店員さんに、
「最近見ないな」
と思ってもらえるだけでもありがたい。

どの人も自分が生きることに精一杯で、日々の暮らしの中では大変な時期もある。人にやさしくできるときばかりではないだろう。
八つ当たりをしてしまうときもあるし、みっともない姿を晒して悩み苦しむときもある。
大勢に憎まれている人にもその人の人生がある。
そんなことも忘れてしまうほど私は目の前のことに必死で、大事な人をちゃんと大事にすることすら難しいのだ。

静人は悼む旅と引き替えに、自分の仕事や家族、友人や恋人のことを後回しにしているようにも思える。自分のことすら必要最低限で生きている。
誰のためでもなく、目的も答えられず、ただ自分の足を延ばせる範囲に存在していた見知らぬ人々の生を拾い集めていく。
晴れの日も雨の日も台風の後でも行われる、地面に跪いて祈るような独特な仕草。
彼の死後、きっと誰かがその不器用な姿を思うのだろう。

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  • 結論を明確にする: 記事の結論部分で、主人公の後ろ姿が語られていますが、読者に対してはもう少し明確な結論を示すと良いでしょう。主人公の行動や思いについて、読者が納得しやすくなるような形でまとめると、記事全体の一貫性が高まります。

AI機能を参考に加筆修正してみました。

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