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そろそろ令和3年度の調査報告が出そうなので振り返りますー『令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査結果』

 前回は平成30年度および令和元年度の調査結果からまとめました。

 この時の主な目的は緊急事態宣言による一斉休校と自主的な長期欠席児童生徒の統計がどのように調査に反映されるかを確認することでした。
 令和2年度の結果は、今年度の令和3年度の結果と合わせて、その推移を見たかったので、まとめるのを1年伸ばしました。
 
 10月です。今月は令和3年度の調査結果が出る頃だと思いまして、令和2年度の結果を見返してみました。すると!

 なんと「概要版」が出てたんですよ。推移が分かりやすいまとめになっていると思います。
 注目したい項目を確認しつつ、詳細もチェックして、最新報告結果を待ちたいと思います。



令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
令和3年10月13日

1⃣小中学校における長期欠席の状況について

 マガジン『休校要請から~』シリーズでも取り上げた「出席停止扱い」ですが、note『自主休校は可視化されるのか』で、「出席停止」の項目には出席停止扱いについて新たな項目は加えられていないことが分かりました。

 令和2年度の調査項目では長期欠席の理由に「新型コロナウィルスの感染回避によるもの」が追加されました。令和2年度から3年度のかけた推移を見ることで、「新型コロナウィルスの感染回避」による長期欠席の重要な課題が見えてくると考えています。

令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要

 「出席停止扱い」の裁量は各学校の校長にありますから、文科省通知内容と厳密に合致するとは限りません。「出席停止扱い」とされるか、不登校による「出席扱い」に移行するのか。それによってオンライン授業や、ICT教材等による学習の指導要録上の出席扱いと評価にかかる判断基準にも影響があるものと思われます。実際に、影響を及ぼすほどの「数」が発生したのかを確認した項目です。その「数」がどれほど重視され、対策が講じられているのかの実態を推測する手助けになるかと思います。

 

経済的理由の増加

 長期欠席の理由の内訳で「経済的理由」となっている児童生徒数の近年の増加傾向が気になっています。その推移を確認しておきたいです。
 コロナ騒動による緊急事態宣言や自粛措置は、経済活動に大きな負の連鎖を引き起こしました。いまだ増大していることは、特に低収入の世帯では実感していることでしょう。同時に「お金を持っている人がお金を使うことが、低所得層に収入に直結する社会構造」であることを実感する事態でした。多くの低所得層が担う【製造・サービス産業】がもたらす社会の豊かさとはなにかを深く問いかける社会情勢となりました。

その他に含まれる児童生徒(家庭)とは

 横道にそれた話になるかもしれませんが、興味深い資料があります。しかし、この内容は、現在も続く全国各地の「不登校の無理解」の実態だと思いますので記述しておこうと思います。

『不登校児童生徒の支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 令和2年3月
 
 いつも「その他」にはなにが含まれているのだろうかと思っていました。

 それから「保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心」は、学校が設置された歴史のなかで、学校に通わせるよりも家業を継ぐための修行を優先する保護者が大半だったと思われます。そんな保護者の学校不信を払しょくし、こどもに教育を受けさせる意義を理解してもらうことが必要でした。学校側の「こどもの普通教育を受ける権利を守る」ために、保護者への働きかけが反映している項目だと解釈していました。
 ですから、「保護者の教育に関する考え方、無理解・無関心」の項目は過去の遺物であるもののその意味は異なっていて、現在の学校外教育を受けることに積極的な保護者が該当するものなのだろうか、と考えていました。

 それがこの資料で、ひとつの解釈があることを知りました。大変な驚きです。

『不登校児童生徒の支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 令和2年3月
p.9 2.初期対応
p.16(5)具体的な対応例


『不登校児童生徒の支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 令和2年3月
目次

 正直言いまして、かなり衝撃的な沖縄県教育庁の不登校支援の姿勢です。
「学校教育への不信が重たる要因」である場合には、チャートでは「虐待か否か」の振り分け(判断)に始まります。そして「親の就学義務を問う」対応につなげています。
 学校教育とは異なる多様で自由な学びはまったく想定にありません。

 学校外教育については、3つの大きな支援の指針のうちの3つめである「自立支援 学校外の施設と連携した支援体制」で取り上げられます。その目的は明確です。

『不登校児童生徒の支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 令和2年3月
p.17 (1)適応指導教室(教育支援センター)


 「不登校児童生徒が、主体的に社会的自立や学校復帰にむかうよう」とあります。
 きわめつけは「フリースクール」の理解がどんなものか、ですが。こちらです。

『不登校児童生徒の支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 令和2年3月
p.17 (2)フリースクール等の民間施設

不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)』 2016(平成28)年9月14日』は確保法成立前に出された実質的な現場のガイドラインで、基本指針は教育機会確保法の施行後に出されています。
 (※通知は、「学校復帰」の文言のはいった各関連通知の見直しのために令和元年に新通知に変わり、平成28年度版は廃止となっています。)

 懸念されたもっとも「最悪な解釈」だなぁと読み取った次第です。
 学校外の自由で多様な学びは「なかったもの」になっています。しかたがないといえば仕方がありません。「学校教育法の外」のことだと考えられているからでしょう。かといって「生涯学習課」がこれについて請け負うこともありません。宙ぶらりんなところにいるのが、普通教育でありながら制度整備がなされていない学校教育以外の普通教育の在り方と、学校教育が独占する公教育の教育思想ということです。

2⃣小中学校における不登校の状況について

 「不登校児童生徒」の定義は、その用語を使う場面によって違います。調査報告書では「30日以上の連続または断続的な欠席」を目安としています。

学年別不登校児童生徒数


 「学年別不登校児童生徒数」の平成30年度、令和元年度、令和2年度の推移グラフは、年度もまたいだ増加率が見えます。例えば平成30年度時点の「小1」の学年が、翌年(令和元年度)に「小2」になり、令和2年度の「小3」であることがわかります。グラフは「学年があがるごとに増加する」傾向を示しています。「この学年になるとこれだけいる」という見方をして「学年別に課題がある」とはいえないということではないでしょうか。


令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要


不登校の要因

 「判断する回答者は先生だから偏見があるのではないか」と指摘の多い項目です。しかしながら、言い換えると、学校として「どのように”不登校の課題”を設定し、解決を図る」姿勢を持ちえるのかが見えてきます。
 この項目は報告があがるたびにころころと変化が大きいので、令和3年度ではどのようになっているか確認したいところです。

令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要


不登校児童生徒が学校内外で相談・指導等を受けた状況

 「不登校傾向」にある児童生徒もカウントされるようになり、結果、数字にあらわれる「不登校児童生徒数」が急激に増えた年度があります(平成29年度だったでしょうか?)。その年度では「不登校児童生徒 20万人」の衝撃的なタイトルの報道がありました。「隠れ不登校」の言葉も登場したかと思います。
 ”長期欠席になる前に指導によって再登校が可能になった児童生徒数”であり、この背景には「欠席日数30日にとらわれず、早期発見につとめる」不登校支援のガイドライン(※)があります。

※「児童生徒理解・支援シート」ー不登校児童生徒への支援の在り方について (通知)より


令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要


3⃣自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数について

 実はここがもっとも関心の高い調査項目です。
 「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」では上記の「不登校児童生徒が学校内外で相談・指導等を受けた状況(p.18)」にグラフで示されています。
 詳細を、こちらから確認します。

令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 p.88「自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数について」

令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
 p.88「自宅におけるICT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数について」


〇自宅におけるIT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒
〇学校外の機関等で相談・指導等を受けた日数についても指導要録上出席扱いを受け、「学校 内外の機関等での相談・指導等を受けた人数」の、「うち『指導要録上出席扱い』となった人数」にも計上 されている児童生徒数

 重複して計上されていますので、差し引いて、「自宅におけるIT等を活用した学習活動を指導要録上出席扱いとした児童生徒数」だけを見ます。

 小学校:665人
 中学校:1333人
 合計:1988人

 ものすごい増加数ですね。

平成30年度 171人
令和元年度 301人

 長期欠席理由のうちの「感染回避」の数と照らし合わせてみたいと考えていますが、令和3年度の調査結果を待ちます。

 次のnoteも参考までに、お読みくださるとうれしいです。

 

振り返りはここまでです。
 今年は以下の調査研究者会議も始まりました。

不登校に関する調査研究協力者会議 報告書 ~今後の不登校児童生徒への学習機会と支援の 在り方について~ 不登校に関する調査研究協力者会議
令和4年6月

 まとめではありませんが、第一印象の感想を書いています。今後の動向を注視したいと思います。


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