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【4】『児童生徒理解・支援シートの作成と活用について』ー不登校児童生徒への支援の在り方について (通知) 令和元年10月25日による変更点を検証

「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成28年9月14日付け文部科学省初等中等教育局長通知)から更新された内容があるのか。検証しました。下記内容について、特に変更は見当たりませんでした。

児童生徒理解・支援シートの作成と活用について


1.児童生徒理解・支援シートとは

(経緯)
初等中等教育段階において,様々な支援が必要な児童生徒については,個別に支援計画等を作成することを義務付けているものや,作成を促しているものがあります。
 具体的には,障害のある児童生徒については,個別の教育支援計画の作成が学習指導要領において規定されており,各学校や地域の実情に応じた様式によって作成されています。
 日本語指導が必要な外国人児童生徒等の在籍学級以外の教室で行われる指導について特別の教育課程を編成・実施する場合については,文部科学省通知(平成 26 年1月 14 日付け初等中等教育局長通知)において指導計画を作成することを求めており,文部科学省として参考様式を示しています。
 不登校児童生徒については,文部科学省通知(平成 28 年9月 14 日付け初等中等教育局長通知)において組織的・計画的な支援を行うための資料を作成することが望ましいことを示しており,文部科学省として参考様式を示しています。
 この度,平成 29 年 12 月 22 日の中央教育審議会答申の中間まとめ「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」において,「児童生徒ごとに作成される計画については,学校や児童生徒の状況等に応じて複数の計画を1つにまとめて作成することで,業務の適正化を図るとともに,効果的な指導につなげるべきである。例えば,日本語能力に応じた指導が必要であり,かつ不登校であるなど,児童生徒が複数の課題を抱えており,個々の課題に応じたそれぞれの支援計画の作成が求められている場合は,1つの支援計画でまとめて作成すべきである。そのためにも,文部科学省や教育委員会は必要な支援計画のひな型を示すなど支援を行うべきである。」とされました。
 この中間まとめを踏まえ,児童生徒の状況を的確に把握し,校内の教職員や関係機関で共有して組織的・計画的に支援を行うために必要となる支援計画については,これまで文部科学省で参考様式を示している不登校児童生徒及び日本語指導が必要な外国人児童生徒の2つに加え,障害のある児童生徒について教育委員会で作成された様式を参考に,それらの支援計画を1つにまとめて作成する場合の参考様式を作成しました。

(児童生徒理解・支援シートとは)
児童生徒理解・支援シートとは,支援の必要な児童生徒一人一人の状況を的確に把握するとともに,当該児童生徒の置かれた状況を関係機関で情報共有し,組織的・計画的に支援を行うことを目的として,学級担任,対象分野の担当教員,養護教諭等の教員や,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー等を中心に,家庭,地域及び医療や福祉,保健,労働等の関係機関との連携を図り,学校が組織的に作成するものです。
 支援が必要な児童生徒が抱える課題には様々な要因・背景があり,教育のみならず,福祉,医療等の関係機関が相互に連携協力して支援を行うことが必要であり,中長期的な視点で一貫した支援を行うことが求められます。また,児童生徒の抱える背景や状況が複雑で,長期的な支援が必要である場合や,一端支援が必要でなくなった後,再度支援が必要となる場合もあるため,進学・転学先の学校で以前の情報が共有されることは非常に重要です。
 児童生徒理解・支援シートを活用することで,支援が必要な児童生徒に関する必要な情報を集約し,支援の計画を学校内や関係機関で共通理解を図るとともに,さらに,そのシートを進学先・転学先の学校で適切に引き継ぐことによって,多角的な視野に立った支援体制を構築することが可能となります。このことは,児童生徒やその保護者にとって,「担当者が変わるたびに同じことを説明しなければならない」との問題の発生を減少させることにつながります。そのため,教育委員会又は学校においては,「児童生徒理解・支援シート(参考様式)」を参考としつつ,各学校や児童生徒の状況に応じて記載の項目や内容,方法等を修正するとともに,使用する様式の欄は児童生徒に応じて記入することが適切であり,全ての欄を記入することが求められているわけではないことに留意して,実践的に使用していくことが望まれます。

2.作成の対象

 本シートを活用して支援計画を作成する対象者は以下のとおりであり,児童生徒が支援の必要な状況となった場合のほか,支援の必要な児童生徒の転入学があった場合やそれが予定される場合などについて,作成することが適切です。
 児童生徒が抱える課題に応じた作成にあたっての具体的な点については以下のとおりですが,学校においては,指導要録や出席簿のほか,今回示した支援が必要な児童生徒の支援計画等,児童生徒の課題の状況によって様々な表簿や支援計画が作成されています。これらの基本的情報は共通した内容もありますので,更なる校務の効率化や教員の負担増加に配慮した持続的な支援体制の確保の観点から,例えば,「統合型校務支援システム」を活用し,記載内容が連動する仕様とすることで共通する内容の記述を反映させるととに,組織で情報を共有できるシステムにするなど,作成や情報共有に係る業務を効率化することも重要です。
 また,学級担任は,教務日誌等を利用して,学級内の全ての児童生徒に関して日常的に状況を把握することができる立場にあります。児童生徒の気になった点について,他の教員等からの情報も含めて記録しておいたものは,児童生徒理解・支援シートを作成するに当たって重要な情報となります。
 なお,保健室での保健日誌等も体調不良や相談で訪れた児童生徒の様子が記録されており,支援に当たって大きな手掛かりとなる場合があります。児童生徒によっては相談室や学校図書館が主な居場所となっている場合もあるため,気になる児童生徒について,各担当者が記録し,組織として情報を共有していくことが大切です。

(不登校児童生徒の場合)
基本的には連続又は断続して 30 日以上欠席した児童生徒のうち,何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,登校しないあるいはしたくともできない状況にある者について作成することが望まれます。なお,不登校児童生徒への支援は,早期から行うことが重要であり,予兆への対応を含めた初期段階から情報を整理し,組織的・計画的な支援につながるようにする必要があります。そのため,30 日という期間にとらわれることなく,前年度の欠席状況や,遅刻,早退,保健室登校,別室登校等の状況を鑑みて,早期の段階からシートを作成することが望まれます。以上のことから,それぞれの地域の実態に合わせて,教育委員会又は中学校区単位で,作成開始等の基準を設定し,地域として組織的に支援が行えるようにすることが重要です。なお,支援の結果,児童生徒が継続的に登校できるようになった場合においても,月別の遅刻,早退,欠席等の状況を継続して記録し,引き継いでいくことが,一貫した支援を行う上で大切です。

(障害のある児童生徒の場合)
 障害のある児童生徒について,特別支援学校に在籍する児童生徒については,個別の教育支援計画を作成することとされています。小学校及び中学校の特別支援学級に在籍する児童生徒や通級による指導を受ける児童生徒についても,個別の教育支援計画を作成することとしており,また,特別支援学級や通級による指導を受けていない児童生徒であっても,障害のある児童生徒について,個別の教育支援計画を作成し活用することに努めることとされています。
 障害の判断については,医学的な診断の有無のみにとらわれず,児童生徒の教育的ニーズを踏まえ,校内委員会等により「障害による困難がある」と判断された児童生徒に対しては,個別の教育支援計画等の作成を含む適切な支援を行う必要があります。
 なお,個別の指導計画については,本シートの対象には含まれていないため,別途,各学校や地域の実情に応じた様式によって作成することが必要となります。

(日本語指導が必要な外国人児童生徒等の場合)※在籍学級以外の教室で行われる指導について特別な教育課程を編成・実施する場合
 日本語指導が必要な児童生徒等に対する指導を一層充実させる観点から,当該児童生徒の在籍学級以外の教室で行われる指導について特別の教育課程を編成・実施することができます。
 その場合,日本語指導を受ける児童生徒が在席する学校は,個々の児童生徒の日本語の能力や学校生活への適応状況を含めた生活・学習の状況,学習への姿勢・態度等の多面的な把握に基づき,指導の目標及び指導内容を計画にした指導計画を作成し,学習評価を行います。
 また,指導計画は,児童生徒の日本語の習得状況を踏まえ,定期的に見直すことが望まれます。
 なお,指導計画とその実績は学校設置者に提出していただくことになっています。

3.内容

 児童生徒理解・支援シートは,支援に関する情報を集約し,引き継いでいくものであるため,複数の関係者が正確な情報を共有できるようにすることが必要です。そのため,主観的な判断を避け,客観的な事実を記載するということが重要となります。また,具体的な支援計画を作成する根拠となったアセスメントについては,児童生徒の状態の全体像をつかむための大きな情報となるため,複数回アセスメントを実施した場合はその推移を記載しておくと,協議会等の際に一目で児童生徒の傾向を把握することができます。

(1)共通シート
 共通シートは,支援全体を通して利用・保存される児童生徒本人の基本情報を記入するものです。そこには,本人の状態や,支援内容を検討する上で把握することが適切な家族についての情報等のほか,遅刻・早退等の不登校に至る前兆等について記入し,見立てを行う上で必要な情報を学校内で又は関係機関との間で共有できるようにすることがポイントです。特に,障害のある児童生徒については,障害の状態やこれまでの経過等について,詳細かつ正確に把握することが必要です。本シートに記載するほか,詳細を記載した資料を必要に応じて添付して活用することなども考えられます。
 共通シートに記載する内容は,基本情報ではあるものの,状況の変化に応じて随時修正や追記をすることが適切です。

(2)学年別シート
 学年別シートは,対象となる児童生徒の状況を随時追記し,具体的な支援の計画を記入するものです。支援機関に関する内容(支援内容や連絡先)や,細かい欠席状況,本人の学習や健康状況等を記載することで,継続的に本人の変化を把握します。また,関係機関と協議を経て決定した支援方針とその実施状況を記入することで,支援状況の変遷を一覧できるようにします。これらにより,一貫して計画的な支援を行うことができるようにすることがポイントです。また,児童生徒の支援は,次の学年でも引き続き行うことが重要となるため,当該学年での支援結果の評価を明確にしておくことが適切です。評価を行い,次年度における留意点等をまとめることで,担任・担当者の変更の有無にかかわらず,継続して支援を行うことができます。

(3)ケース会議・検討会等記録シート
 ケース会議・検討会等記録シートは,本人・保護者・関係機関の支援に関連する協議の結果について,実施の度に記入し,加筆するものです。
 本人の状況や希望する支援内容,保護者の希望について,記入し,加筆します。本人や保護者の思いを可能な限りそのまま記録し,残すことを基本として,漠然とした希望や要望についても丁寧に拾い上げて,支援内容を導き出すことが重要です。
 関係機関との連携については,実際に連携した機関と個別にやりとりした内容を含めて記録し,他の機関とも共有することができる形にすることが支援者全員で共通の認識を持つことにつながります。支援を開始する際に初めて連絡を取るのでなく,定期的・日常的なかかわりを持ち,お互いの業務について共通認識できるようにしておくことが適切で円滑な支援を実施する上で重要です。さらに,定期的・日常的なかかわりの中で,それぞれの機関から得た情報などは,あらかじめケース会議・検討会等記録シート等を活用して記入・蓄積し,支援計画作成の際に活用します。
 また,ケース会議・検討会等において,その都度支援計画の進捗状況を確認し,その場で合意・確認することができた事項については,記録しておくことで情報が蓄積され,支援の質を高めることにつながります。
 なお,学年別シートや共通シートが作成される前であっても,ケース会議などが開催される場合には,このケース会議・検討会等記録シートを積極的に活用し,情報を蓄積することが適切です。これによって,当該児童生徒の情報をより多く蓄積することができ,的確な要因を把握することにつながります。


4.引継ぎ

 学校や担当者に変更がある場合も,支援が必要な児童生徒一人一人が受けていた支援は,引き続き一貫して行われる必要があります。一方,当該児童生徒や保護者の立場からは,進学や転学に当たって,前の学校の情報が引き継がれることに不安を感じる場合もあります。そのため,児童生徒の情報を進学・転学先に引き継ごうとする学校は,児童生徒や保護者に対して,児童生徒理解・支援シートが児童生徒の評価に利用されるものではないことや学校における守秘義務等について十分に説明し,不安感を解消するとともに,児童生徒理解・支援シートを活用することで,組織的計画的な支援が可能となり,結果として児童生徒の生活を豊かにすることにつながることを理解してもらうことが大切です。なお,転入学までに理解が得られない場合であっても,児童生徒への支援を通じて信頼関係を築き,理解を得た段階で以前の学校で作成した児童生徒理解・支援シートの情報を引き継ぐことも考えられます。
 また,設置者が異なる中学校から高等学校,公立学校から私立学校等で引継ぎを行うことは,個人情報の保護への配慮等から消極的になることが考えられます。しかしながら,児童生徒理解・支援シートの引継ぎを適切に行い,支援計画の評価や見直しを繰り返しながら継続して支援を行うことは,児童生徒一人一人をネットワークで支援することとなり,学校だけで抱え込むことを防ぐことにつながります。そのためにも,当該児童生徒の支援に必要な情報については適切に引継ぎを行うことが大切であり,進学先や転学先の学校に引継ぐ際には,原則として,当該児童生徒や保護者の同意を得る必要があります。
 なお,情報の引継ぎに関しては,共通シートのみならず,全てのシート(学年別シート,ケース会議・検討会等記録シート)を引き継ぐことが望ましいです。児童生徒理解・支援シートの引継ぎに当たっては,保護者や関係者に十分内容を説明した上で,個人情報の取扱いや,関係機関等と共有する情報の範囲,守秘義務等について共通理解を図る必要があります。また,単に児童生徒理解・支援シートの写しを渡すだけではなく,個別に情報交換をする機会を設けるなど,責任を持って引継ぎを行うことが重要です。


5.個人情報の保護(学校間における情報の引継ぎ)

 支援が必要な児童生徒への支援については,例えば,不登校児童生徒の場合には一旦欠席状態が長期化すると,進学・転学後も不登校傾向が続く可能性がある場合が少なくないことから,継続した組織的な支援が重要です。また,障害のある児童生徒の場合には乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立った一貫した支援を行うことが重要です。そのため,当該児童生徒の状況等については進学・転学先の学校へ適切に引き継ぎ,双方の学校が連携して当該児童生徒への継続的・組織的支援を図っていく必要があります。
 個人情報保護の観点から当該児童生徒についてのどこまでの情報を引き継ぐことができるか,また,引き継ぐことが適切かについては,適用される関係法令に基づき各学校等が判断することとなります。基本的な関係法律として,「個人情報の保護に関する法律」(平成 15 年法律第 57 号)があります。個人情報の保護に関する法律は,民間である私立学校・株式会社立学校(株立学校)等に適用され,また,公立学校には,当該学校を設置する地方公共団体の個人情報保護条例が,国立学校には「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成 15 年法律第 59 号)が適用され,個人情報を第三者へ提供する際には本人の同意を得ることが原則とされています。そのため,計画を作成する際に,本人や保護者に対し,その趣旨や目的をしっかりと説明して理解を得,第三者に引き継ぐことについても,あらかじめ範囲を明確にした上で,同意を得ておくことが必要です。また,あらかじめ同意を得ているとしても,実際に第三者に提供する際には,本人や保護者とともに引き継ぐ内容を確認することで,互いの考えや思いを共有することができ,よりよい引継ぎができます。
 なお,本人・保護者と連絡が取れない,本人・保護者が第三者への提供を拒否するなど,本人・保護者の同意を得ることが困難な場合であっても,当該児童生徒への継続的・組織的な支援の観点から,進学先や転校先の学校に情報を共有(提供)することが重要となる場合もあります。その場合の個人情報保護の取扱いに関しては,設置者別に以下の対応が考えられます。


(公立学校)
 公立学校については,各地方公共団体によって個人情報保護条例の内容が異なることから,第三者提供の原則禁止の例外についての規定を確認する必要があります。また,条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うものですが,仮に,行政機関の保有する個人情報保護に関する法律第8条(参考①参照)と同様の規定を有する条例においては,公立学校が公立学校又は国立学校に,支援が必要な児童生徒への継続的・組織的な支援のために,必要不可欠な範囲で情報を提供することは,一般に,社会通念上客観的にみて合理的な理由があるものと認められ,同法第8条第2項第3号に相当する規定の「相当な理由のあるとき」に該当し,また,私立学校・株立学校に同様の情報を提供することは,一般に同項第4号に相当する規定の「本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当し,本人や保護者の同意を得ることが困難であっても,第三者提供の原則禁止の例外として認められるとも考えられます。ただし,繰り返しになりますが,条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うことになりますので,後述の国立学校や私立学校等の場合の例も参考にしつつ,各地方公共団体・各学校において必要な確認を行い,適切に対応することが必要です。
 また,私立学校・株立学校への情報提供については,条例によっては個人情報保護審議会の意見を聴取することが必要とされている場合もあるため,その規定をよく確認した上で,適切な手続を行うことが必要です。


(国立学校)
 国立学校について,国立学校又は公立学校に,支援が必要な児童生徒への継続的・組織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは,上記と同様に,一般に,社会通念上客観的にみて合理的な理由があるものと認められ,独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第9条第2項第3号(参考②参照)の「相当な理由のあるとき」に,私立学校・株立学校に,同様の情報を提供することは,同項第4号の「本人以外の者に情報を提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当すると考えられることから,第三者提供の原則禁止の例外として認められると考えられます。


(私立学校・株立学校)
 私立学校及び株立学校について,他の学校に支援が必要な児童生徒への継続的・組織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは,「○個人情報の保護(学校間における情報の引継ぎ)」に記載する観点等に鑑みて,個人情報の保護に関する法律第 23 条第1項第3号(参考③参照)により,第三者提供の原則禁止の例外として認められると考えられます※1。この点,個人情報保護委員会が公表した「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(平成 28 年 11 月(平成 29 年3月一部改正)個人情報保護委員会)(参考④参照)においても,第三者提供の制限に関する例外として,「児童生徒の不登校や不良行為等について,児童相談所,学校,医療機関等の関係機関が連携して対応するために,当該関係機関等の間で当該児童生徒の情報を交換する場合」とされています※2。


(留意点)
 なお,引き継ぎについては,前述のとおり,あくまでも当該児童生徒や保護者の同意を得ることが原則であり,引き継ぎを望まない場合であっても,その理由を聞きつつ,引き継ぐことの利点や,どの程度の内容であれば引き継ぐことが可能かについて話し合うなど丁寧に対応することが重要です。同意を得る努力をしないまま安易に引き継ぐことは適切ではないことに留意が必要です。
 また,当該児童生徒や保護者から情報の引継ぎについて同意を得る際には,児童生徒や保護者に対して,提供しようとする情報の具体的な内容を示して同意を得ることが必要です。


6.個人情報の保護(民間施設等への情報提供)

 支援が必要な児童生徒が,学校外の民間施設等を利用する場合には,一定の情報を適切に提供し,学校及び民間施設等双方が連携して当該児童生徒の支援に当たることが効果的と考えられる場合もあります。その際,当該民間施設等において,守秘義務が課されているか否かをあらかじめ確認し,それを当該児童生徒や保護者に十分説明した上で,その個人情報の提供について同意を得ることが望ましいと考えられます。


7.保存

 児童生徒理解・支援シートは,条例や法人の各種規程に基づいて適切に保存されるものですが,出席の状況等指導要録の記載内容と重なる部分もあることから,指導要録の保存期間に合わせて,5年間保存されることが文書管理上望ましいと考えられます。

※1 個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)が改正され,平成 29 年5月 30 日に施行されました。改正により,個人情報を取り扱う全ての事業者が「個人情報取扱事業者」に該当することから,全ての私立学校及び株立学校に個人情報の保護に関する法律が適用されます。

※2 個人情報の保護に関する法律の改正に伴い,「文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成 27 年8月 31 日文部科学省告示第 132 号)は廃止され,個人情報保護委員会策定の,全ての事業分野に適用される汎用的な「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」が公表されました。

(参考)
① 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)
(平成十五年法律第五十八号)
(利用及び提供の制限)
第八条 行政機関の長は,法令に基づく場合を除き,利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し,又は提供してはならない。
2 前項の規定にかかわらず,行政機関の長は,次の各号のいずれかに該当すると認めるときは,利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し,又は提供することができる。ただし,保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し,又は提供することによって,本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは,この限りでない。
一 本人の同意があるとき,又は本人に提供するとき。
二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって,当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
三 他の行政機関,独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において,保有個人情報の提供を受ける者が,法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し,かつ,当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
四 前三号に掲げる場合のほか,専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき,本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき,その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。
3 前項の規定は,保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。
4 行政機関の長は,個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは,保有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部局又は機関に限るものとする。

② 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)
(平成十五年法律第五十九号)
(利用及び提供の制限)
第九条 独立行政法人等は,法令に基づく場合を除き,利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し,又は提供してはならない。
2 前項の規定にかかわらず,独立行政法人等は,次の各号のいずれかに該当すると認めるときは,利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し,又は提供することができる。ただし,保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し,又は提供することによって,本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは,この限りでない。一 本人の同意があるとき,又は本人に提供するとき。
二 独立行政法人等が法令の定める業務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって,当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
三 行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律 (平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第二条第一項 に規定する行政機関をいう。以下同じ。),他の独立行政法人等,地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において,保有個人情報の提供を受ける者が,法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し,かつ,当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。
四 前三号に掲げる場合のほか,専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき,本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき,その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

③ 個人情報の保護に関する法律(抄)
(平成十五年法律第五十七号)
(第三者提供の制限)
第二十三条 個人情報取扱事業者は,次に掲げる場合を除くほか,あらかじめ本人の同意を得ないで,個人データを第三者に提供してはならない。
一 法令に基づく場合
二 人の生命,身体又は財産の保護のために必要がある場合であって,本人の同意を得ることが困難であるとき。
三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって,本人の同意を得ることが困難であるとき。
四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって,本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

④ 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(抄)
(平成 28 年 11 月(平成 29 年3月一部改正)個人情報保護委員会)
3-4-1 第三者提供の制限の原則(法第 23 条第 1 項関係)
次の(1)から(4)までに掲げる場合については,第三者への個人データの提供に当たって,本人の同意は不要である。なお,具体的な事例は,3-1-5(利用目的による制限の例外)を参照のこと。
 (3)公衆衛生の向上又は心身の発展途上にある児童の健全な育成のために特に必要な場合であり,かつ,本人の同意を得ることが困難である場合(法第23条第1項第3号関係)

 ※3-1-5 利用目的による制限の例外(法第 16 条第 3 項関係)(3)公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって,本人の同意を得ることが困難であるとき(法第 16 条第 3 項第 3 号関係)事例2)児童生徒の不登校や不良行為等について,児童相談所,学校,医療機関等の関係機関が連携して対応するために,当該関係機関等の間で当該児童生徒の情報を交換する場合


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