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はい、縫製室です/整理整頓も仕事のうち!

 勤務で工業用ミシンを使っています。棚には色とりどりのミシン糸が並んでいます。商品の色に合わせ、元の糸の色に近い糸を使用します。
 ジーンズ糸、地縫い糸、レジロン糸、ロックミシン用の糸、スクイ(まつり縫い)用の糸があります。
 ミシン糸には番号がついています。

 職場によりますが、こちらの熟練の方々は糸を選ぶときに「〇〇〇番が良いんじゃない?」という会話が成立します。

 そうなんです。糸を番号で覚えているんですよ!

 「最初にまずこれだけ覚えておくといいよ」と教えてもらったのは、【760】【714】です。
 「760」は紺色で、「714」はグレーで、黒と共によく使われる色です。


 さて、この棚に並んだ糸たち。
 実は、ある意味…まったく並んでいませんでした!

 縫う商品が変わるごとに糸もつけかえるわけですが、はずした糸は、間近な棚の上に置いていく習慣のようでした。必要な糸を、番号で探して、セットして、使い終わったら、頭の真上あたりにポンと置いていく…。そういうやり方だったので、糸は「色並び」でもなければ、もちろん「番号順」で並んでおらず、置き場所が決まっていなかったのです。


 さて、工業用ミシンを踏むのも初めてならば、こんな色とりどりの糸を使うことも初めてのワタクシです。服を縫うのはもっぱら家族の為だけであったので、糸なんて、糸なんて…もちろん【白】一択!布地に合わせて糸までそろえるなんてそんなことまでしません。というのも始まりが手縫いものからでしたので、肌当たりを考えて袋縫いで仕上げるのがほとんどでした。赤ちゃん用の甚兵衛とかね。
 初めてのミシン使い以降も、袋縫いで仕上げていたものですから、糸はあまり表に出ませんし、それで「糸の色を変える」発想が無かったんですよ。本当です。

 そんなわけで。

 「糸を番号で覚える?できるわけない!」
 「色並びじゃない?探せるわけない!」


 これは後々やってくる(かもしれない)新人さんたちのためにも

「糸を探しやすい環境」を整えれば仕事の効率があがるはず!


 そう考えた私は、まず訊きました。調べました。
 そして、どうやら糸の色と番号は、特に、相関性が無いってことがわかりました。番号の小さい順に並べたからと言って、色もきれいに並ぶわけじゃないってことです。
 
 …番号付の法則がわからない。

 ならば「見た目の色並びで揃えてやろう!」。
 しかーし、「糸の色並び順ってなにが正解?」。


 とりあえず、並べました。
 「違ってる並びは先輩方が上手に並べ替えてくれるといいな♪」なぁんて考えは甘かったです。
 3年の間に2回くらいは並び順を変えてみましたかね。
 ある時、ただ一人糸を順番に並べることに賛同してくださっている先輩が「どうしてこのグレー系を、ベージュ系の隣にしたの?」って、何番の糸だったか忘れたけど言われたんですよね。「え!?それってベージュ系じゃないんですか!?」「…グレー系です…。」。
 ベージュ系と茶系は離れて置かれているのですが。

 まぁ、まぁ、まぁ、まぁ。
 それまでだって、「え、それは全然、違う色よ…」とか後ろで言われながら、地味に私なりの「色探しの段どり」の方法でなんとかどうにか対応してやってきました。そんなパパッと「これ!」という色をいっぱつで選べやしません。
 私は最初に「色系統」を見つけ、その次に「濃淡」で絞っていきます。「色系統」でつまづくと、糸探しは迷走します…。これが一番「手間取っている」と感じる時間です。

 4年目でたぶんどうにか色並びが整ってきたかなと思います。
 《赤~茶~緑~青~水色~グレー~ベージュ~黄色》とだいたいこの並びで、《青みがかった~》とか《緑がかった~》色が、間にそれぞれ入ってます。


 色並びにして、圧倒的に目的の糸を探しやすくなりました。
 布を持って、糸と照らし合わせながら、近い色を探しやすくなりましたから。すると番号も覚えてきます。

【710】【712】【713】【140】
【717】【706】【99】
【720】【724】【95】
 
 …ベージュ系と茶系が、なぜ離して置くことになったのか、自分でもよくわかりません。でも「赤からの茶」「黄色からのベージュ」の流れで、間に緑、水色、青系統が挟まるわけでして。いいのか?これで。
 まぁ、いまだに「どこに置けば!?」ってなってます…。



 「使ったら近場に置く」習慣はそうそう変えられないようで、《元の場所に戻す》ことをする人はスタッフの人数の割合でいえば”半分”です。だいたい私が空き時間に椅子の上に立って、色を眺めつつ、並び変えるのが仕事のうちになっています。

 これがねぇ。

「暇なの?」って開口一番に言われたりとかするんですよぉ!

 いやこれも仕事のうちだからっ!
 並べているから、仕事の効率があがるんじゃないですかぁ。

 いや、わかります。わかっていますとも。「暇」の意味するところは、急ぎの丈詰め商品が入ってきてないんだねっていう言葉を簡略化しただけのことなのだということは充分に。わかっていますとも!

 でも、整理整頓お片づけしていると、「(仕事もしないで)掃除してんの?」の視線を浴びせられたり、「暇なのね」って言われると、「違うでしょー!」って新人のわたしは(うぐぐっ)ってなりますよー。おーい。
 はさみの置き場所とか、くず糸がちらばっているのを目にすると、ササっと手が動きます…。「神経質ね」なんて言わないで。お願い。次の仕事のための「空間」を準備しておくのが必要なのよ。商品を運んでくる人と縫製スタッフが共有する空間じゃないですか。小奇麗にしておきたいでしょ?
 これまで一般的な会社で社内教育を受けてきたわけですから「仕事の全体像」を把握したうえでの「仕事の効率」「」を重視する傾向は強いですよね。

 素材別の箱の位置も整理しました!
 探しやすく並び替えもしました!
 

 基準は、初心者で新人の私でも、「仕事がしやすくなる環境」にすることです。


 朝いちばんの雑巾がけは「これから仕事がスタートするんだぞ!」の気持ちの切り替えといいますか、場を清浄にする意味があります。

 店じまい後の掃除は床のモップがけです。朝いちばんの雑巾がけはミシン周りを拭きます。細かい繊維を拭きとってついでに後ろに落ちてた待ち針なんかもよく発見します。朝の雑巾がけは最初の指導で教わったことですが、なぜか私以外の人はやりません。

 時間をみつけると、棚の上などすみずみまで雑巾がけをします。
 縫製業の疾患で多いのは肺疾患だそうです。そのため本来なら空調に気を遣われる職場環境のはずなんですが…そういうのは無いです。窓も無いです。日光も差しません。
 水ぶきは空気をきれいにするようなことですから、スタッフ全員の健康のために大切だと思ってやってます!

 働く環境って、【場をつくる・整える】意味も含み、とっても大切なことだということは、念頭に置いておきたいことですね。
 太陽光…窓…ほしいよねって、縫製室のスタッフ全員の願いなんですよぉ。休憩できる場所だって当然あってほしい。緑があって心がしっかり休憩できる場所があることって、人が人らしくその日一日を過ごすうちなんだから、もっと重視されてほしいな。

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