新曲「タジンの花 (Thant Sin Pan)」 ミャンマーで国軍によって迫害される人々に。 またアジア系へのヘイトクライムが激化する欧米の友人に向けて。

「タジンの花」という、今日作った新曲を載せておきます。


現在ミャンマーでは、国軍の武力行使によって、抗議デモに参加した人々が日夜殺されている。今日も50人が命を落とした。
また、コロナ禍以来、欧米で過激さを増しているアジア系住民へのヘイトクライム。危うさはずっと感じていて昨年はLIFE HOUSEに中国の友人を招いたりもしたが、状況はますます悪くなっている。
このふたつは別個の問題だが、アジアのごく普通の人々の真上に重くのし掛かって来ている暴力であり、到底、他人事とは思えない。
けれど日本ではなかなか関心を持たれづらい。

脱亜入欧を掲げた明治以来、周囲の国を見下しながら世界のあちこちで名誉白人の如く振る舞って来たわれわれ日本人は、世代を重ね、少しの慎ましさと現実感覚を取り戻したはずの今も、自らがアジア人であるという意識は希薄だ。

先日このニュース記事に対してそうしたことを短くツイートしたが、引用リプライの中には「まあ韓国のことには皆さん無関心ですからね」といった感じの緊張感を欠いたものもあり驚いた。
昨年からアメリカでは日本人音楽家が暴行を受けたり、日本式の寺が放火されたりもしていて、中国人か、韓国人か、日本人か、区別をした上で、暴力が降りかかって来ているわけではない。

ヘイトクライムはとても大振りで雑なもので、普通の怨恨殺人などとは違う。大小さまざまな虚妄に取り憑かれた人間がふるう腐食し刃こぼれした大鉈の一撃なのであって、個々の被害者の本当の姿などは勘案されない。屠畜のように人の尊厳を奪う。

ある日とつぜん、何の因果関係もない他人に殺されるかもしれない。
通学路で。ショッピングモールで。デートの最中に。
ただ、肌が黄色いという理由で。
それがヘイトクライムなのだ。

タジンの花とはミャンマーで愛されている白い花で、よく髪に飾られる。
きっと日本の女性の髪にも似合うのでは?

春に2、3日だけ咲くという、もうひとつの国花、パダウの方が広く支持されているらしいが、タジンにはちょっと引っかかるエピソードがあった。
年の最初に咲いたこの花は、王家に捧げるしきたりになっていて、それよりも先に髪に飾った者は死罪にされたそうだが、現在では誰でも気軽に身に付けられる花に変わっていると。
権力に囲い込まれていた花が、やがて、誰もの花になったのだ。


タジンの花 (Thant Sin Pan)

タジンの花が手折られて
黒い髪を飾るたびに
誰かがきみに焦がれて
アジアの隅で胸を痛めた
黒い髪を飾るたびに
黒い髪を飾るたびに

アジアに風が吹き渡り
タジンの花は飛ばされた
誰かが道を駆け出す
この手に花を戻すため
あの子の髪に飾るため
あの子の髪に飾るため

タジンの花が手折られて
誰かが血を流しても
わたしはまどろみながら
アジアの風を吸い込むだけ
黒い髪を揺らしながら
アジアの風をあびながら

noteでの記事は、単なる仕事の範疇を超えた出来事について、非力なりに精一杯書いています。サポートは、問題を深め、新たな創作につなげるため使用させて頂きます。深謝。