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サンソンの日記とフランス革命な日々

私はお気に入りの番組を何回も何回も何回も見る。そのほとんどは、歴史や書物、書くことに関連した番組。古くはビデオのVHSのテープが擦り切れるまで、今ではDVDやBlu-rayのディスクの再生現度回数を超えるまで見る。これも恐らく、しいたけ.さんの言う、牡牛座さんの「ペロペロ」なのだろう。

数ヶ月前、たまたま『コテンラジオ』なるものを見つけ、家仕事をしながらスマホで何回も何回も何回も聞くようになった。ただの歴史ラジオかと思ったが、全然違った。すんごく、おもしろい。笑えるし、深い。私が歴史の教師なら、生徒たちに『コテンラジオ』を聞くよう勧めると思う。

つい最近までは、玄奘、ガンディー、空海と最澄、ブッダなど、東洋の回を延々と繰り返し聞いていた。その後はオスマン帝国を繰り返し聞き、そしたら次は西洋かなと、フランス革命の回へと移った。すでに一度聞いているが、あまり興味のない時代だったこともあり、当時はさほどハマらず。だけど今回は2回目ということもあり、スッと入ってきた。以後、フランス革命の回ばかりを聞きまくっている。

そのタイミングで、私の好きなテレビ番組のひとつ『ダークサイドミステリー』で、シャルル=アンリ・サンソンを扱った。死刑執行人を輩出するサンソン家にあって、フランス革命の時代を生きたのが彼であり、ルイ16世やマリー・アントワネットの処刑にも関わった――というお噂はかながね聞いていたが、私が興味を持ったのはそこではない。

シャルル=アンリ・サンソンは、日記を書いていた。日記を書く歴史上の人物は、大好きである。

中学の頃に『紫式部日記』や『和泉式部日記』など平安女性の日記を読み漁ったのを始め、最近では『モンゴメリ日記』を興味深く読み耽った。それから市内図書館で見つけた、集英社の『kotoba 日記を読む、日記を書く』という、日記に特化した季刊誌。――なんかしらんが日記というものに強く引かれる私にとって、これは最高の雑誌である。だから貸出期間がまだ何日も残っている段階で、Amazonから購入した。書店さんに取り寄せを依頼したが、すでに出版社には在庫がないとのことで。

こんな私が、テレビでサンソンの日記の存在を知る。しかも番組で引用されている文章を見ると、ただの業務日誌ではなく、サンソンの苦悩や、処刑直前の人たちの言葉も綴られている。これはもう、読まなきゃいかん。

Amazonで調べてみるとサンソンに関する本はいくつかあったが、とりあえず失敗のないように、番組で紹介された『サンソン家回顧録』を探す。上下巻あり、サンソンの日記は下巻に収録されていた。

しかし下巻1冊だけでも高価である。――迷う。できることなら本で読みたい。電子書籍は便利だし価格もちょっと安くなるが、好きじゃない。しかし本は高い。どうしたもんか。散々悩んだ挙句、最初の2ヶ月は読み放題でその後は月額制という、Amazonのキャンペーンに乗っかった。

節操ないが、下巻の「シャルル=アンリ・サンソンの日記」の項へ早速飛ぶ。お目当ての日付を探すが、なぜか日付が2種類書いてあり、軽く混乱。探し方が悪いのか、目に入っていないのか、読みたかったものに当たらず、欲求不満。頭からきっちり読むべきなのだろうが――やはりどうしても、スマホで読むことにストレスを感じてしまう。マンガならまだいいが、こういう本は、めくって読みたい。パラパラしたい。もう無理。

愚行かもしれないが、電子書籍と紙の本、結局両方を買うことにした。

せっかくスマホで全部読めるのだから、念のため上巻もチェックする。正直上巻にはあまり興味はなかったのだが――ここで私は気づく。上巻も、ある意味日記だと。

『サンソン家回顧録』は、どうやらシャルル=アンリ・サンソンの孫がまとめたものである。だから国王ルイ16世の最期の日のことなど、孫サンソン目線で、まさに日記の如く綴られている。シャルル=アンリ・サンソンや、その息子の様子も記されている。ああもう、これは、買うしかない。

この一連のなんやかんやを聞かされた私の親友。
「『イノサン』貸そうか? 全巻。画集もあるよ。明日持ってく」

『イノサン』はまさにシャルル=アンリ・サンソンを主人公としたマンガである。番組や日記を追いながら、実はちょっと、『イノサン』読んでみようかなと思っていたところで、まさか親友が全巻持っていたとは知らなかった。

この親友、私へのマンガの与え方が毎回絶妙である。前に別の知り合いから『イノサン』を猛烈に勧められたが、残念ながら私は本を勧められると、途端に読みたくなくなる。多分、相手の想いや圧が余計なのだ。

本を読むというのは、自分と本との対話だと思っている。だからそこに第三者の何かが入り込むことが、極端に嫌なのだ。だけど親友は、私がわーっと盛り上がっているときにスッと「読むか?」と差し出してくれる。最高である。

マンガが入口となって、原典や歴史に興味を持つというのはよくあったが、今回は歴史上のことで興味を持ってからのマンガとなった。

どちらにしても、こういう興味が最高潮のときに関連本やマンガを読めるというのは、最高のしあわせである。小説『ラゴスの旅』でラゴスが、史書を読み、並行してその時代の伝記を読むという方法が、なんとも贅沢で愉悦に満ち、歴史理解の最も効果的な方法だと言っているように。

親友には『風の谷のナウシカ』を全巻貸した。ちょうど読みたかったとのことで。この日はお互い、最高のタイミングである。

その夜、借りた本を物色していたら、イノサンセットの中になぜか『オタクだよ! いかゴリラの元気が出るマンガ』という本が1冊入っていた。こういう異彩を放つものをしれっと入れておくあたり、あの親友らしくて笑う。



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