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共感を得る写真とは

前回は「伝わる写真」について書きましたが、「共感してもらえるかは別」とも書きました。今回はもう少し掘り下げて「共感を得る写真」について探っていきたいと思います。

■相手の共感を得るには

結論から書くと「飾り気のない」「日常的な自然体」が共感を得やすいのかなと思います。「わざとらしくない」「作り物ではない」と言った方がわかりやすいでしょうか。

もうひとつ共感を得やすい要素として「記憶」「経験」があります。
自分の過去と重ね合わせ、共通する要素が多いと共感を得やすいようです。

先に断っておきますが、作りこまれた写真や計算された写真を否定しているわけではありません。例えばファッションや広告などの分野では、魅力的・芸術的に伝える上で必要な手段であり、非日常的な表現は憧れを抱かせるために非常に有効です。

あくまでも共感を得るためのひとつのアプローチ方法として、「こんな方法もあるんだ」くらいに思ってもらえたら嬉しいです。

■具体的な例で考える

七五三の写真を例にしてみましょう。

綺麗に着飾りスタジオで撮影したビシッとキマッた写真。見る人は綺麗とか可愛いとかカッコイイなどの感想を持つと思います。しかし、共感という意味ではちょっと違う感じがします。

では、スタジオ撮影の合間に撮ったオフショットはどうでしょう。ふざけて遊んでいるとか、不機嫌になって泣いているとか、そんな写真であれば「うちの子も同じ」とか「自分もそんなだったな」とか自分の経験と重ね合わせ共感する部分が多いと思います。

家族の記念撮影ではどうでしょう。
祖父母・両親・子供・赤ちゃんの6人が写っている「ハイ、チーズ」で撮った写真があるとします。

①全員カメラ目線で笑っている写真
②一人は明後日を向き、一人は不貞腐れ口を尖らせている写真
③赤ちゃんが泣いてしまい、全員赤ちゃんを見ている写真

どの写真が共感を得やすいでしょう。
写真としての完成度は①が良さそうですが、②は自分や家族の経験を通した共感、③は赤ちゃんが心配という共感を得やすいんじゃないかと思います。つまり、写真としての完成度と共感は必ずしもイコールではないということになります。

■カメラの存在

少し整理してみると被写体がカメラの存在を「意識している写真」と「意識していない写真」に分類できます。

・意識している写真
七五三のスタジオ撮影やブライダル、ファッション撮影などが該当します。
立ち位置やポーズ、表情、光など計算されており、被写体の魅力を最大限に引き出す写真です。撮影者も撮影されている側もカメラを意識しているので、どちらかと言えば非日常的になります。演技や演出と言えば良いでしょうか。絵画にも近い感じがします。

・意識していない写真
スナップ写真が近いかもしれません。撮影する側は構図やシャッターを押すタイミングを意識するので部分的に計算された写真になりますが、写っている側はカメラを意識していない。意識していないので自然体であり、飾り気のない日常に近くなります。日常であるからこそ、見る側も親近感を抱きやすく、共感しやすいと言えます。
また、ハプニングによって撮影者の意図しない写真になることもあります。
そのような偶然性も共感につながる要素になります。

■両方を併せ持つ写真を撮ってみよう

撮影者も撮影される側もカメラの存在は意識しつつ、自然体のように見える写真を撮ってみましょう。
映画やドラマに似ているかもしれません。役者は演技しているが、カメラのことを意識させない。

ポートレートでそれっぽくなる方法をいくつか紹介したいと思います。
ポイントは写真を撮るというより、映画やドラマのワンシーンを撮る意識にすると良いかもしれません。

①目線を外す

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カメラ目線で無い方が自然体に見えます。ドラマや映画もカメラ目線のシーンは極わずかです。「ちょっとあの木を見てて」とか具体的な方向を支持してあげるとモデルさんもわかりやすいです。

②気をそらす

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何か別なことに意識を向けさせ、カメラの存在を忘れさせる方法もあります。話しながら撮影するというのはよく使う手ですね。「そういえば、スタバの新しいフラペチーノ食べた?」とか質問すると、答えるために気がそれるのでその間はカメラの存在を薄れさせることが出来ます。
この写真は「そのカメラって撮った写真どうやって見るの?」と聞いた瞬間です。いわゆるオフショットになります。

③ノーファインダーで撮る
話しながらカメラは覗き込まずにとる方法もあります。モデルさんも撮られていることを意識していないので、自然体になりやすいです。また、構図のズレやタイミングなど撮影者の意図しない偶然性となって表れることもあります。

④自然なポーズ

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手っ取り早いのは動いてもらうことです。子供の場合は歩いたり、走ってもらったり、くるっと回ってもらったりはよく使います。最初から自然なポーズは難しいと思うので、歩きながら振り返ってもらったりするところから始めてみましょう。また、髪をかき上げてもらったり、スマホを見てもらったり、食べているときなど日常的な仕草はわざとらしくなりにくいです。

⑤自然な表情

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笑って!と言われて自然に笑える人は凄いと思います。(私には無理です!)笑顔は会話のなかで引き出せたら一番ですね。
アンニュイな表情を撮りたいときは「あー、明日仕事だ。嫌だな」と思ってもらうなど、モデルさんに具体的なイメージを抱いてもらう方法があります。感情豊かな人にはすごく有効な手段だったりします。

まとめると、如何にモデルさんにとリラックスしてもらうかです。特に子供相手だったり、モデル慣れしていない人にとって撮影=緊張することなので、自分なりの声掛けや会話を工夫すると良いでしょう。
家族や友人であればその辺のハードルは低いかもしれませんね。


■記憶による共感

もう一つの共感しやすい要素として「記憶」や「経験」があると冒頭に書きました。違う言い方をすると「過去」や「思い出」になります。

少し脱線しますが、フィルム写真を懐かしく思うのはフィルム写真を知っている世代だけなのでしょうか。今の若い人はフィルム写真を知らないはずですが、なぜかフィルム風の写真が流行っているそうです。

他にも田舎の風景。田舎に行ったことがある人は懐かしく思うのかもしれませんが、都会で生まれ育った人はどうなのでしょう?私は大正時代は知りませんが、建物などを見ると大正っぽいという感じはわかります。これはTVなどで得た情報を自分の記憶として置き換えていることなのかもしれません。

このように、昔を思い出させる要素は「記憶」「過去」「思い出」を呼び起こすカギになるようです。つまり、色褪せていたり、古ぼけていたり、年代を感じる要素を写真で表現すれば、共感を得やすくなります。

手っ取り早いのは色味です。フィルム調だったり、セピア調だったり、モノクロだったり、古さを感じさせれば良いということになります。敢えてノイジーにしたり、ピントが鮮明でないものもノスタルジックな気分にさせてくれます。

「二階堂麦焼酎」のCMを見たことはあるでしょうか?いろいろヒントになることが多いです。

■実例

これは東京カメラ部2020 10選に選んでもらった写真です。

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これまでの例に当てはめてみると

・蒸気機関車
古き時代の象徴のようなものです。音もイメージしやすいですね。

・カラス
カラスが飛んできたのは撮影者の意図していなかった偶然性です。
また、カラスは何処にでもいる身近な存在でありながら、幅広いイメージを持つ要素もあります。

・雪 / ススキ
寒さ・冷たさなど秋冬の季節を思い出させる要素です。
田舎を思い出させる要素もあるかもしれませんね。

・色合い
彩度を落としてノスタルジーを感じさせるようにしています。

振り返ってみると記憶を呼び出す「共感」につながる要素がたくさんある写真だとわかりました。ちょうど鬼滅の刃 無限列車が話題になっていたので若い世代にも共感してもらえたのでしょう。他にもハリーポッターやローンレンジャーを思い浮かべた人も多いようで、世代を超えた共感が生まれたようです。

■まとめ

このように「共感」を得るには様々な要素があることがわかります。相手にどのような感情を抱いてもらいたいのか、相手の立場になって考えることが一番の近道だと思います。
他のもいろんなアプローチ方法があると思うので、皆さんもいろいろ考えてみることをお勧めします。良い方法があれば是非教えてほしいです。

それではまた。

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