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海、恋焦がれる南の島々(3) | 奄美大島

島の居酒屋ニッキでは南国の締まった刺身を肴に酒を飲みながら...

1月といえど、まだ20度近くあるのだろうか。
シャツを羽織っていれば、海風も心地良いほどの夜だった。

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街には南国風情溢れる看板が目に付く。奄美最南端の町、古仁屋の夜。

カウンターで食事をとりながら、女将さんと大将にウミガメツアーを強く勧められたが、なかなか来れない、体験できないからこそ、今回はどうしても加計呂麻島に渡りたいという思いが強くなってくる。

軽く飲むだけのつもりが、しっかり満腹になってしまい、お店の人たちの和やかな空気も心地よくなってきた頃だったが、なんとか会計を済ませ宿に向かうことにした。

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宿に帰ると、オーナーさんと他のカップルゲストが、ゆんたくさながら、円卓を囲んで酒を飲みながら盛り上がっていた。

宿の1Fには座椅子と低い卓が置かれ、食事や飲み物を持ち寄って過ごせるような空間があったが、外から戻るとそこでオーナーのお兄さんと、顔見知りのようなカップルゲストが3人で飲みながら盛り上がっていた。

せっかくの古仁屋の一泊。
朝早いと言えど少しご一緒しようと思い、寄せてもらった。

皆の話を聞きながら、自分も同じ宿泊業で働いていることなど話し、
特に大阪から奄美へ越してきて開業したオーナーの話は興味深く頷きながら、

やはり、ゲストハウスの醍醐味でもあるゲストとオーナーだけでなくゲスト同士の楽しい出会いがここにもあるなぁ、と楽しくなりながら、明日も早いので、と部屋に戻った。

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朝一番、古仁屋を出るフェリーかけろまは7:00発だ。

翌朝はまだ日も登らない暗いうちに準備を整え宿を出た。
奄美に来る前の少々のスケジュール変更(奄美大島旅 最初の記事を参照)により、本来の目的の加計呂麻島での滞在が1泊になってしまったので、できるだけ移動をタイトにしながら動いていた。

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奄美大島の南に位置する加計呂麻島。奄美大島と比べれば小さいが、東西に広がる島には古仁屋と繋がる港「生間」「瀬相」がフェリーかけろまが泊まる港。

土地勘のない南の島で、選ぶも何もない。
車で容易に周れる島だとも分かっていた。

この島を勧めてくれた友人は、島の南西部にある「西阿室」という集落が良いと言っていた。

夕日が綺麗な素敵な集落らしい。

まだ眠い目を擦りながらも、胸が躍るようなちょっぴりの興奮を抱えた僕を乗せて、フェリーはゆっくりと奄美大島から加計呂麻島へ動き出した。

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古仁屋の港は漁船もフェリーも同じ港を使っていて、乗る直前までフェリーがどこで待っているのかわからず、少し慌てた。

船の中は、早朝とはいえ20名ぐらいの利用客がいただろうか。
多くは軽装で荷物も少なく、自分たちのように浮き足立っていないようで、ローカルの島民の方々のようだった。

僕と妻は、前日買い込んだお菓子やパンを頬張りながら、船のエンジン音を背にうつらうつらと船旅を楽しんでいた。

船が島の間を渡ったのは30分間ほどだっただろうか。
その間に外は白け始め、薄い曇り空が明るくなってきた。

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地図では島の形を把握していたつもりだったが、船の上から海上で見る島の姿はちんぷんかんぷんで、おおよそ距離感や到着予想は諦めていたが、船内のアナウンスによると僕たちが向かう瀬相の港がかなり近づいているようだった。

頬張っていたパンを急いで飲み込み、荷物をまとめ、下船の準備をする間に瀬相の港に船は入港した。(とはいっても、港というよりは船着場といった具合だった。)

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朝7時半ごろか。加計呂麻島の瀬相船着場。奄美大島本島とつなぐ船便がいかに島民のライフラインとして重要かが分かるほど、車の数も多い。

曇天のため、まだ少し薄暗さが残ってはいたが僕は記念すべき、待ちに待った加計呂麻島への上陸を果たした。

どこか感慨深いものを堪えつつ、荷物を抱えて船着場を歩く。

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「フェリーかけろま」は何代にも渡って奄美大島と加計呂麻島の海上を繋いできた、島民に愛される船。

多くの人が迎えの車や、駐車していたマイカーで走り去る中、僕と妻はしばらく特に何もせず船着場で過ごした。(※実はこの時点で、島をどう移動しようか、どこに1泊しようか全く決まっていなかった。)

しばらくするとフェリーかけろまは、大きなエンジン音を響かせて、復路の客を乗せてまた古仁屋の港に向かっていった。

早朝の瀬相港。

次第に人影も少なくなっていき、残されたのは案内所のおじさんと、僕と妻になってしまった。

少なくとも、今からの行動を決めねばいけないが、妻は少し疲れたようで「案内所に座っている」と言ったため、僕は少し歩いて回ることにした。

とはいえ、さすがに港からの移動手段は少し事前に調べていたので、そのうちの「レンタカー」という手段をアテに歩き出したのである。

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道端に生える、南国っぽい木。名前はいまだに調べれていないが、加計呂麻島での旅中、何度も見かけたこの木は僕は何か島のシンボリックな存在として記憶している。

案の定、記憶通り、港から5分ほど西に歩いたところにガソリンスタンドが見えてきた。

数日前にググった時に、ここにレンタカー屋さんがあるという情報を掴んでいたのだ。その名も「瀬相レンタカー」。

軽自動車が事務所前に1台停まっていたのでラッキー、と踏んだがいかんせん朝の8時にもなっていない。スタッフさんがいるとも思えない。

「おはようございま〜す」。恐る恐るとはこのことか、事務所の前に立って声をかけてみると、古びたドアが開き、見た感じはほんとに「島のおじいちゃん」と言った雰囲気の男性が出てきて何かを僕に言った。

とっさのことで聞き取れなかった僕は「とにかくここまできたらレンタカーを借りよう、無理なら他の方法で島を回るか」と腹を括って、「車、借りたいんですけど」と妙に神妙な表情で答えた。

「それでも、ええ?」とその男性が事務所前の軽自動車を指差す。

うん、と頷いた僕に、「これ、書いて」と事務所内に手招きし、どこか年季の入った顧客名簿のような紙を渡す。簡単なもので、名前や連絡先、ぐらいだった。

「朝から急に押しかけて、迷惑な観光客だと思われてないかなぁ...」

少し不安に思いながら僕が書き終わると、その男性は、デスクをごちゃごちゃと探し回り、ペンで何やら書類にメモをし、鍵を拾い上げ僕に渡した。

その一連の動作の間中、僕は事務所、といっても、なんだか、おじいちゃんちの居間のような、居心地のいいような、不思議な空間を見回していた。

何はともあれ、鍵を受け取った僕は、早朝から対応してくれたこともあり、その男性に深くお礼を伝え、車に乗り込んだ。

妻へは車が手配できたことを伝え、ガソリンスタンドのある方向に歩いてきてほしいと伝え、自分も港方面に向かって車を出した。

一本道ということもあり、すぐに妻と合流できた。

瀬相レンタカーでの一連の出来事を妻に話しながら、道を進む。
朝8時を回り、加計呂麻島の1日目がもうすでに始まっている。

ノープランといえども、移動手段が手に入ったら、こっちのもの。

事前にインプットしたスポットや位置情報が、スケジュールが、頭の中でカタカタと組み上がっていく。

さて、行こうか。加計呂麻島。

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