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ナゴヤ城、鎮めるべし!!

p.m.3:00 アイチ県 ナゴヤ市

「ついにこの時がやってきましたね………」
袈裟を着こなす牧原歩はナゴヤ城を見る。巨大な鯱は瑞々しい黄金色に輝き、本丸は絹のように透き通る白が光る。
その美しさに牧村歩は喉を鳴らした。

「飲まれるんじゃないぞ、歩。」
「わかっております、師匠。」
妖艶な師匠の声に耳を傾け、牧村歩はナゴヤ城に向かって走り出した。

お遍路を通して鍛え上げた足腰で走る牧村歩と師匠。風を切る彼女らの前に【泥】が現れた。地面ににじみだす【泥】は11対の人の形でできている。

「………師匠!」
「うむ、速やかに鎮めるぞ!」

速度を落とさず、右指を刀の形に変える。そして彼女たちは【泥】に向かって指を振る。

「「臨・兵・闘!!」」

三度空間を斬り付け、【泥】は姿を崩し半透明な物体が11個、空へ飛んで行った。
その姿を見ながら合掌する牧村歩たち。だが時間がないため、すぐに一陣の風になる。

【泥】は際限なく現れ、道をふさぐ。しかし彼女たちは一流の霊祓い。次々と【泥】を祓い、そのたびに合掌する。悪霊と化したとはいえ祓えばただの魂。ならばその魂の門出を祈って合掌するのは道理である。
31度の合掌を済ませる頃、彼女たちの目の前に基地が立っていた。

p.m.4 ナゴヤ城前線基地

「あらら?ずいぶん遅かったんじゃない?もう作戦会議は始まっているわよ、佐藤ちゃん?」
「疑問符を立てている暇あるんだったらさっさと案内してくれ。」
「師匠………遅れたのは私たちですよ。その言い草はないでしょ!すいませんね加島さん。師匠はこんな人で………」
「いいのよ。私だって付き合い長いからね。佐藤ちゃんの傲慢さは指折り付きだもん。」
「私をからかっているのかお前ら?」
「「いえ全然」」

たわいのない話をしているのは緊張をほぐすためだ。彼女たちはナゴヤ城に突入する。

時は西暦11051の大晦日、末法最後の日。現世に復活したナゴヤ城は魑魅魍魎の箱庭なり!

【続く】

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