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中間支援組織の人材に必要な資質について(経験からの仮説)

中間支援組織と呼ばれる仕事に就いて20年になりました。2003年からの最初の2年半は社会福祉協議会のボランティアコーディネーターとして、2005年の夏からは岡山NPOセンターの職員としてお給料(今は役員報酬ですが)をいただき生活をしてきました。
当時はそもそもNPOで働いている人が少なく、美容師さんやタクシーの運転手さんに職業を聞かれては混乱の空気を巻き起こしていましたが(今もかも)、なんとなく最近は市民権を得てきたようにも思います。

NPOもいろいろですが中間支援組織もいろいろで、最近は政府でもSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)の文脈で中間支援組織の存在が語られたり、孤独・孤立対策の文脈で中間支援組織が語られたり地方創生の中で中間支援組織が語られたり、その他にも再生可能エネルギーの普及や高齢者の生活支援、生活困窮者支援などなど、環境から福祉まで様々な文脈で「繫ぐ役割」としての中間支援組織の必要性が語られています。

では、それらは全部違うかと言うと、地域で仕事をしてきた身としては実は共通しており、テーマは違えど、同じような役割が確かに必要だと思っています。ただ、そこで重要なのは単に「繫ぐ」だけではないということで、卸売の仕事でもニーズの先読みや時にはトレンドを生み出すこと、仕掛けていくことがおそらく必要なように、中間支援組織にもいくつかの目線が必要だと思うのです。
そして、それがなければ長く職業としてそれを地域に認めてもらってやっていくことはできない(食べていけない)のではないかなとも思っています。

ではでは、それは何なのか、どうやったら10年20年と成長し続けていける中間支援組織、そこを担う人材が育成できるのか。というのは、中間支援組織を経営するものとして最重要課題の一つですし、なにより次々と顕在化していく困りごと、社会課題、複雑な関係の中で生み出さなくてはいけない、再構築しなくてはいけない物事の中で、中間支援組織が機能するかどうかが、それを解決するスピードや質に関わると思うのです。

その解を求めて、ここ7,8年、尊敬する同年代や先輩世代後輩世代の中間支援組織リーダーの方々と定期的に集まって議論をする(=しっかり食べたり飲んだりする)場をもったり、また2021年から中国5県の中間支援組織で合同研修を開催したりしてきました。
その間に、様々な先輩たちにもご相談し、お考えを聞きながら、どうやったら人材の育成やもっと地域に踏み込んで取り組む組織同士で連携できるかと考えてきました。

どれもまだまだ答えもでないことですが、今回、一つの仮説を立てました。

中間支援組織の人材に必要な「4つの資質」と様々な技能

それが上の4つの資質が必要なのではないか。ということです。

1つが「意思・覚悟」。
これは中間支援組織を続ける意思を持つ、ということもあるのですが、地域課題や価値や人々のニーズに忠実にある、その意思とそれに取り組む覚悟を持つ、と言うことだと思います。
マネージャだけでなくスタッフでも、例えばNPOの代表者の相談にのっている際にはどうしても支援しているその代表者の意向に沿った回答や助言をしてしまうことが多いですが、そうした際にも団体の支援対象のニーズや事業が目指しているそもそもの目的に真摯にあるという意思をもって、代表者が妥協をしてしまう場合には正したり、指摘したりする覚悟が必要です。
常に何のために支援しているのか、事業に取り組んでいるのかを忘れない意思。逆にその場の正義を押し通すために無理強いすることでその先に目指すべきことが後退してしまうのであれば妥協したり先送りしたり、時には悪者役も引き受けるような判断も含めてとれる覚悟がまずは必要だと思います。

2つめが「立ち位置とそれを築く人脈」。
中間支援組織の主な機能が人や組織を目的のために繋ぐことであるのならば、繋げる人や組織が多く居なければ成り立ちません。それも漠然と知り合いを増やす、例えば異業種交流会で名刺交換をしただけでは人脈になりません。名刺交換をした場合にも、自分がどのような存在なのかを完全でなくても相手にわかってもらうような人脈形成がまずは必要です。そのためには人と会う際、支援をさせていただく際、場でご一緒する際に何を話すのか、どう関わるのかが大切です。また、声をかけられた、頼まれた際にどう反応するのかも当然、大事なことです。その積み重ねが意味をつくります。
またその立ち位置作りができていることで、まちの中にあるニーズ、地域の課題にその方々が直面した際に相談が来る、必要な場面で他採られる組織になり、その分、地域課題もちゃんと把握できる存在に近づけます。
立ち位置を形成していくには当然時間がかかりますが、漫然としていてはいつまでも作られません。意識や目標をもって取り組めることが必要です。

3つめは「先を読むこと」。
1と2が柱となるものとするならば、それをもって中間支援組織として動いていくためには、対象とする地域やテーマにおいて次に何が起きるのか、その予兆を感じ取り、予測して考えることを、常に意識していていることが必要です。企業経営でも数歩先を読むことがよく指摘されますが、社会課題の解決にはタイミングも重要であり、政策の動きや地域での取り組み度合い、関係性などを常に見ることが大切です。
僕もファンドレイジングの講座などでは孟子の「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」という言葉を引用させていただくことも多いですが、この3つも状況を理解したり、先を考えていないと活かせません。
一報では世間の空気や話題を知っていないとズレが生じることもあるので、ある種のミーハーさをもって世間の流行も意識しながら先を読み、次に何をすべきかを考えることが必要です。

4つめは「手順化できること」。
先を読んで次に必要なことが熱く語れても、それを実際に自分たちの地域やテーマで実践していくための手順。ある意味では設計図が作れなくては、評論家的になってしまいます。あくまで実行、具体的な事業や提案として物事を動かしていかなければ変わりません。また誰と誰を繋ぐのか、いつ繋ぐのか、なぜ繋ぐのか、その具体的な設計が出来なければ、ただの仲介役になってしまいます。
手順の中には当然、一緒に取り組む人や活用すべき制度、また資金調達の方法や広報なども含まれます。詳細でなくとも、それらを設計して取り組む順番に並べ、具体的に進めていく。できることならば、それをなるべく早く設計して動かしていくことが求められます。
その答えは当然、タイミングや場所、その時の関係性、自身や一緒に取り組む人の力量なども関係するので、先進事例をそのまますることでは実現しないことが多いため、アレンジをすることも含めて考えることが必要です。

以上の4つが僕がこれまでの経験や先輩や同年代、後輩世代の中間支援組織の方々を見て考えた「必要な資質の仮説」です。

どれも誰もの中にあるもので、これを「伸ばす」ことやきちんと「自覚する」「もつ」ことができるかが大きいのではないかと考えています。
この仮説を検証するためにも、この4つの資質をその資質をベースとしながら取り組むべき内容に関する「技能」を学ぶためのパイロット的研修として、「中間支援組織人材学校「春の合宿研修」」として岡山で2日間にわたって開催します。
僕も20代の時に「先読み」について伺い、そこから今思えばその資質を鍛えていただいたIIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表の川北さんに胸を借りしてスタッフ向けの講義をお願いすると共に、マネージャ向けの部分に関しては地域で中間支援組織の経営を行ってきた中国5県中間支援組織連絡協議会のメンバーでしっかりとそれこそ取り組もうと、長年活動してきた広島を離れて、ふるさと鳥取で新たに中間支援組織を立ち上げた、とっとり県民活動活性化センターの毛利さんの覚悟や、ひろしまNPOセンターの松原さんに経営赤字の中を経営者を継いだ覚悟を伺う座談会や、各地に市民活動センターが設立される状況の中で県域支援の立ち位置を形成してきた、やまぐち県民ネットの伊藤さんと、自分の倍は生きておられる地域のリーダーさん達と対峙しながら立ち位置形成をしてきた、みんなの集落研究所の阿部さんの座談会、ほとんど指定管理による収入に依存した状態から10倍の事業規模に成長をしてきました石原の苦労という名の先読みと手順化に関するお話など、各自が経験を開示する内容にしております。

中間支援組織人材学校「春の合宿研修」(研修ページへのリンク)


このパイロット版を開催した後には、その実施内容から講座内容を精査し、他の組織とも連携しながら体系的に学べる環境を作っていきたいと考えています。
特に「技能」は様々なバリエーションが考えられるので、多くの方と連携することで学びの場をもてるようにすると共に、それぞれの学びの「可視化」を進め、そこからさらに中間支援組織の人材同士でも連携できる環境づくりを目指したいと思っています。(このあたりの構想はまた別の機会に詳しく)

まずは研修の方、年度初めのお忙しい時期ですが気になる方はぜひ、ご受講ください!


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