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北京の乙女とカラオケと焼き肉

註:以下は二〇〇五年当時の北京の話だ。習政権下で状況はたいぶん変わっている可能性がある。そこだけは留意して頂きたい。

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 北京は基本的に男の街だ。
 それはどういう意味だと深く追求されても困るのだが、まあそういう街だ。
 例えばカラオケ。中国にはKTVと呼ばれるカラオケボックスが沢山ある。ここはカラオケとは言うものの、実質はキャバクラだ。店に入ると目の間に綺麗どころがズラリと二十人から五十人くらい現れ、好きな娘を選んでくれと黒服の支配人に求められる。テイクアウトも可能らしいのだが、それについては僕は良く知らない。黒のバッジは持ち帰り不能、金のバッジは持ち帰り可能なのだが、それについては深く追求しないで頂きたい。
 彼女らは躾の行き届いたホステスだ。カラオケを楽しんでいる間は飲み物を作ってくれたり、フルーツを食べさせてくれたりと実に甲斐甲斐しいし、デュエットやらなにやら、とにかく客を楽しませることに尽力する。言葉も見事なもので、英語や日本語を流暢に話す。
 だが、同時に彼女たちは僕らの監視係でもある。トイレに立とうが携帯電話で話をするために廊下に出ようが、とにかく常についてくる。食い逃げされないように監視しているのだ。一度は男子トイレの中にまでついてきそうになって閉口した。ロングドレスの女性に後ろに立たれたり、手伝いされたらとても困る。
「はい、あーん」
 隣の誰だかちゃん(名前は忘れた)がフォークに刺したメロンを差し出す。

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