【レビュー(ネタバレあり)】PS4 キングダムハーツⅢ『この空がつなぐ世界で辿り着く場所は果たして…』

<基本情報>
正式名称:キングダムハーツⅢ
ハード:プレイステーション4
ジャンル:アクションRPG
発売元:スクウェア・エニックス
発売日:2019年1月25日(金)

■キングダムハーツシリーズについて

人気アクションRPG「キングダムハーツ」シリーズの待望のナンバリング最新作「キングダムハーツⅢ」が発売された。スピンオフ作品やリメイクはこまめに出ていたのでシリーズとしては9作目に当たるが、ナンバリング作品としては前作の「Ⅱ」から約13年ぶりとなる。

ボクがキングダムハーツに初めて触れたのは小学生の頃だ。いまはなきデジキューブの宣伝を見て、ディズニーとのコラボに胸を踊らせ、親に頼み込んで隣町のコンビニまで車を走らせてもらい、初代キングダムハーツを買いに行ったのは強く心に残っている。それ以来、ほぼすべてのキングダムハーツシリーズをプレイしてきたし、一番好きなゲームだと言っても過言ではないぐらい思い入れのあるシリーズだ。

今作はマスター・ゼアノートを巡る「ダーク・シーカー編」の物語が,ついにクライマックスを迎える。BBSのテラ・ヴェントス・アクアの3人はどうなるの?358のロクサス・アクセル・シオンは?光と闇の戦いの結末は…?闇の勢力側の目的は?などなど…際限なく広げられた風呂敷に、期待と不安をいっぱいにしながら待ちに待ち続けてプレイした、キングダムハーツ3のレビューを書いていこう。

■あらすじ

本作の主人公は,もちろんソラだ。キーブレードマスター承認試験において、闇に飲み込まれゼアノートの器にされかけたことで,持っていた多くの力を失ってしまう。ゼアノートとの決戦を前にその力を取り戻すのが,本作の冒険の目的の1つとなっている。

開口一番、宇多田ヒカルさんの「Face My Fears」と過去シリーズを追想する映像にいきなりボルテージは最高潮に。初代キングダムハーツが発売されてから積もった、16年間の思い出が一気に蘇る。

■シリーズ伝統の「爽快アクションバトル」を正当進化させた最高峰のバトルシステム

キングダムハーツの魅力の一つであり根幹でもある「簡単で爽快感のある戦闘」だが、今までのシリーズを踏襲しながら、正当に進化させた手触りのいいハイレベルなアクションゲームに仕上がっている。

まず、キーブレードを3つ装備でき、戦闘中いつでも切り替えができる。そしてコンボを決めていくとキーブレードの変形が可能になる。これにより、魔法主体、攻撃主体、遠距離、近距離と様々なバトルスタイルをストレスなく切り替えることができる。キーブレード一つ一つにド派手なフィニッシュ技も用意されているので、戦闘に飽きが来ずいつまでも戦っていたいと感じられる。「動かすだけで楽しい」とはこのことだろう。

キングダムハーツシリーズおなじみの仲間との連携も非常に協力で楽しいものに仕上がっている。ウッディやバズと一緒にロケット花火に乗ったり、ベイマックスとともに空を飛んだり、マイクを転がして攻撃したりなど、ディズニーらしくコミカルで楽しい演出がいっぱいだ。

また、その他ソラの心のつながりをたどってアリエルやスティッチ、シンバなど、シリーズおなじみのディズニーキャラクターを呼び出すリンクも可愛く、カッコよく、楽しいものになっている。

基本的な攻撃は左下に表示されたコマンドを○ボタンで押しながら戦っていくのだが、いま挙げてきたような様々なバトルスタイルを複雑な操作もなく△ボタンひとつで行えるのは事細かな調整のなせる技だろう。

戦闘の手触りについてはまさに最高峰の出来ではあるが、何点か残念な部分もある。

先ほどの△ボタンで行える技の一つに「アトラクションフロー」という、
名前の通りディズニーランドのアトラクションのような攻撃を行えるものがあるのだが、これが今までのシリーズと脈絡がなさすぎて突然どうした?という感じが否めない(なにかディズニーの陰謀を感じ…ゲフンゲフン)

これが通常の戦闘の場面であれば別にまだ受け入れられるのだが、ボス戦やシリアスなバトルでもこのアトラクションフローを発動できるため、雰囲気がぶち壊れてしまう。

※シリアスな戦いの場面で「やっほー!」はやめてくれ

また、キングダムハーツⅡでは相手の技や特性を利用して戦うというシステムがあったが、今作では仲間との連携に重きを置いているのかそれが全くない。Ⅱの相手の力を利用して死力を尽くしながら工夫して戦っている感じがよかったのに、今作ではなんだか知らないけどめちゃくちゃ強くなりすぎてしまったソラとその友情パワーに一方的にボコられる敵となってしまっている。

プラウド(最高難易度)でプレイしたが、上記のような技が強すぎるため、○連打、△連打の脳死プレイでも簡単にクリアできてしまった。もう少しリスクとリターンのバランスが取れていればゲーム性もより広がっただろう。

以上のような細かな不満点はあれど、有り余るほどの爽快感と手触りの良さがあるので、カジュアルアクションゲームとしての出来栄えはトップクラスだろう。

■細部まで再現された高クオリティのディズニーワールド

PS4で再現されたディズニーワールドのクオリティはすさまじく、特に今作から初登場するトイ・ストーリーやモンスターズインクなどのピクサー作品は元がCG映画なので、まさに映画の中を自由に歩き回れる体験を与えてくれる。それだけでも大変価値があり、ディズニー好きにはたまらないだろう。

キャラクターの動きや表情なども忠実に再現されており、各原作を再現したシーンにはゲームのリアルタイム描写でここまでできるのかと感動した。


ただ、仕方がないとはいえ話の都合上原作を見ている前提になっており、見ていない場合はなにがおこっているのか全くわからないという状況に陥ってしまうだろう。(パイレーツ・オブ・カリビアンはみたことなかったので、なぜ白いカニを探さなくてはいけないのか謎すぎた…)

また、ソラが各ディズニーワールドを巡る理由もあまりわからず、暗躍する真ⅩⅢ機関も何がしたいのかわからないため、ディズニーという暴力的コンテンツパワー以外の魅力がまったくない。唯一ベイマックスのワールドは原作の続きという形で、ヒーローものという相性もよく良かったと思う。

※ここから正直愚痴しかないです…

■思わせぶりで退屈なムービーが多すぎる

これは元々ムービーゲーであるキングダムハーツの伝統だといえば仕方がないことだとも言えるが、今作はあまりにもムービーが長い。長過ぎる。そのムービー自体が食い入るようにみるものであればまだいいが、退屈で動きのないムービーが(体感)8割を締めている。よくいえば昔と変わらない、悪く言えばなにも進化していない。もう少し移動中に会話を挟むことで状況を説明したり、動きのあるカメラワークなどで工夫してほしかった。

特に昨今はYouTuberスタイルの普及により、飽きが来ないよう会話の間を切ったような編集が好まれるし、細かいところだが字幕がでていると、次になにを発言するかわかってしまい早く○ボタンで会話を飛ばしたいという感覚になってしまった。(深夜にプレイしていたのもあって、ムービー部分は半分寝かけていたりした…)

また、ムービーの中で敵側が意味深なことをいって去っていくということを永遠と繰り返していくのだが、その度ソラは「心の繋がりはお前らなんかに負けない!(意訳)」的なことを繰り返し言い返す。もう少し敵側の思惑などを小まめに出しながら描いていくほうがよかったんじゃないだろうか。

■ストーリーとディズニーワールドのボリュームの少なさ

今作で登場する新たなディズニーのワールドは全部で8つ(うち新規作品は5つ)「Ⅰ」が9つ、「Ⅱ」が12だったことを考えると、「Ⅲ」で8つというのは正直少ないと感じてしまった。PS4となりグラフィックも綺麗になり、ボリュームも圧倒的に増えると期待していた中でのこれは期待ハズレだと言わざるを得ない。(各ステージごとが作り込まれていたことを差し引いても)

また、「Ⅱ」だとストーリーの都合で各ディズニーワールドをもう一度回る展開が発生する。そのおかげで各ワールドのキャラにも愛着がわき、ソラたちとの絆や旅してる感を感じることができた。今作は一度訪れたらその世界はそれっきりなのであっけなく感じてしまったし、キャラともそこまで深く関わらない。グラフィックの出来がいいだけに残念で仕方ない。

そして、話の都合上「13の闇と7つの光の衝突」が物語上不可欠のため、敵の戦力を各ワールドの中で倒すわけでもなく、敵側も別にソラたちを倒そうとするわけでもないため、どうにも緊迫感がないまま話が終わってしまう。

「Ⅰ」では開いてしまった世界の鍵穴を閉じて回りながら、親友のリクとカイリを探すというディズニーワールドを巡る理由が物語の本筋と明確に関わりがあった。
「Ⅱ」でも、ノーバディという新たな世界の脅威を倒すことと、リクを探すという目的が、ディズニーワールドを巡る理由とつながっていた。

しかし今作は「目覚めの力」を取り戻すための旅という、不明瞭でぼんやりとした目的となっている。なにがきっかけで取り戻すことになるのかわからないし、それだけではディズニーワールドを巡る理由として圧倒的に弱い。先に述べたように各ワールドでの出来事も緊迫感のない茶番でしかないため、ディズニーワールドの存在意義がないのだ。

今作のメインストーリーのボリュームは30〜40時間ほどで今までの作品と比べてもプレイ時間自体はあまり変わらないのだが、それでも、ボリュームが少ないと感じたのは内容が薄っぺらかったせいなのは否定できないだろう。

■歯ごたえのあるやりこみ要素が少ない

「Ⅱ」のファイナルミックス(アップデート版)では、大幅強化されたXⅢ機関のデータと再戦できたり、歯ごたえのある隠しボスがたくさんいた。

この隠しボスの難易度の高さが、カジュアルアクションゲーであるキングダムハーツの魅力を底上げしていた要因でもあるだろう。今作にもあることにはあるが、「Ⅱ」のファイナルミックスのようなボリュームはない。また、シリーズ伝統のオリンポスのコロシアムもない。

宝箱集めや幸運のマーク、クラシックキングダムのミニゲームといった、細かいやりこみ要素はあるものの、そういう作業的な要素ではないところを期待したかった。過去作でもファイナルミックスで大幅追加されてるわけなので、ファイナルミックスもしくはDLCに期待といったところだろうか…

■最終決戦〜エンディングまでの流れ

今作の一番の問題点はおそらくここだと思う。逆にここさえ良ければ先に上げたような枝葉の部分は正直どうでもいい(よくない)

しかし、やってしまったのだ。

今までキングダムハーツに積み重ねてきた時間と想いを、最悪の意味で大きく裏切る展開が待っていたのだ。

まず、最終決戦時闇の勢力のひとりであるテラの体を乗っ取ったゼアノート(通称テラノート)に行く手を阻まれる。(ここからもう展開のためにキャラが動かされている感が強くて違和感がすごい)

ソラは息巻く「お前たちに負けることはない」

しかし、圧倒的な力を前に負けそうになる光の守護者たち。

ここがまず無抵抗でみんなやられていくのがおかしいと感じた。13人の闇の勢力の総攻撃にやられるのであればまだしも、たった一人に9人もいて壊滅させられるのは光の守護者弱すぎでは…?しかも、唯一活躍したのがグーフィーとドナルド(ドナルドに至ってはゼタフレアとかいうマダンテのような魔法を使い敵を追い払うという大健闘)。もう少しキーブレード使い頑張ってくれ…特にアクアはBBSの最終決戦でテラノートと渡り合っていたはずでは…?

そして、今作の最大の問題点のひとつであるシーンとなる。

なんとかドナルドのゼタフレアでテラノートを押し返すも、闇の勢力に仲間たちをやられたソラが「もう戦えないよ…」と嘆き出すのだ。親友のリクは諦めずに眼の前で戦っているにも関わらずだ。(ソラはいつだって仲間のためであれば最後まで諦めずに戦うような人間のはずなのだ…)

この瞬間「ガシャンっ」とボクの中のなにかが終わった音がした。ソラは犠牲になったのだ…展開という名の犠牲に…

※キングダムハーツをやったことがない人にわかりやすく例えると、ワンピースのルフィがシャボンディ諸島で仲間がクマたちにやられそうになったときに、ゾロが一人で抵抗しているのにも関わらずルフィは「俺はもう戦えない…(メソメソ)」と嘆くようなものだ。

闇の勢力に負けたソラは終わりの世界という(三途の川のような世界?)にいき、カイリに助けられ再び最終決戦前へと時間が巻き戻る…(もうこの辺からなにが起きているのか全く理解ができなかった。)

そして再びテラノートと対峙するのだが、「Ⅱ」で登場した「留まりし思念(=テラ)」が現れテラノートを倒してくれたり、キーブレード戦争で散っていった古のキーブレード使いたちが力を貸してくれるテラノートやハートレスを一掃してくれる。この展開自体は過去作をすべてやっている人からすると熱い展開ではあるのだが、じゃあさっき負けたのなんだったの?という疑問が拭えない。しかも、この手助けしてくれるきっかけや理由というものが描かれないのだからなおさら訳がわからない。

その後戦いは、真XⅢ機関との総力戦になっていくのだが、ここですべての戦いにソラが駆けつけ敵を倒していく。(え、ちょっと待ってくれ…急に無双しすぎじゃないか…?)

ただでさえ13:7で数では劣っているのだから、連携して倒すとかなんとかもう少し展開はなかったのだろうか…あと、各個敵を撃破するたびにムービーシーンが入るのだが戦ってる最中にこれは違和感ありまくり…

アクアやリクがプレイアブルだったんだから、ミッキーやヴェントスなんかの他のキャラも操作して、各キャラそれぞれで1〜2人撃破していく総力戦的な展開を演出してほしかった…(超サイヤ人のように死の淵から舞い戻って強くなったソラが無双していくようにしかみえなかったのだ…)

そして、この戦いの中でテンポよく復活を果たしていく、ロクサス、シオン、テラ。ここに至るまでとてつもないほどの時間(現実時間)がかかっているのだから、もう少し丁寧に描くべきではないのか…?こんなにあっさり復活してしまっては余韻もクソもない。

戦いの最中、カイリはゼムナスに攫われてしまいマスター・ゼアノートに消滅させられてしまう。

怒る王様とソラ、しかしマスター・ゼアノートは止められない。奇しくも再び絶望するソラだが、一緒に旅をしてきたドナルドとグーフィーに励まされ奮い立つ。ソラ・ドナルド・グーフィーの絆の強さを感じるここの展開は、初代からキングダムハーツをプレイしてきた人であれば感涙ものだろう。最終決戦時、唯一よかったのがこのソラ・ドナルド・グーフィーの3人が主軸だったということ。

そして、マスター・ゼアノートをやっとの思いで倒すが…最後の最後でマスター・ゼアノートは改心するのだ。改心すること自体はいいのだが…自分がやったことを全く反省せずに綺麗に去っていくのは許されるものなのだろうか…せめてマスターなのだからカイリを助ける方法やヒントを伝える、せめて謝るとか色々なかったのだろうか…

そして、最後エンディングにて、カイリを探しに再び旅出るソラ。しかし、目覚めの力は本来心のつながりをたどって飛び回る力じゃない。カイリを助けられたとしても、ソラ自身は元の世界に戻ってこれないかもしれないという。結果、エンディングではソラの姿はなく…カイリは一粒の涙を流してエンドロールへ…

えっ、みんなでハッピーエンドじゃないの?

主人公消息不明のバッドエンドって完結編でそんなにアリ?

17年間待ち望んだ結末がこれなのか…

■総評
「光は負け、世界は闇に覆われる」

シリーズをプレイしてきた人であればあるほど闇堕ちしてしまうんじゃないかと思った今作、予知書の内容がまさか現実にまで及ぼうとは想像もしなかった。ファイナルミックスやDLCが出るのであれば、そちらにかすかな希望を残していたい。

ただ、ゲームとしてみれば爽快で派手な戦闘や各ディズニーワールドの作り込み(特にカリビアンの海戦)は最高峰のレベルなので楽しめることは間違いないだろう。むしら、ゲームとしての出来栄えは良かったが故にストーリーの稚拙さがより浮き彫りに…

期待していた結果とは悪い意味で裏切られてしまったわけだが、まだまだソラの冒険は終わりじゃないみたいなので…

『この空がつなぐ世界で辿り着く場所は一緒だと信じています』

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